関数の連続性と一様連続性

連続とは
  • limxaf(x)=f(a)\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=f(a)
    が成立するとき,関数 f(x)f(x)x=ax=a で連続という。

  • また,定義域(考えている区間内)の任意の点 aa で関数 ff が連続のとき,ff を連続関数と呼ぶ。

関数の連続性と一様連続性について「大雑把なイメージ」と「εδ\varepsilon - \delta を用いた厳密な定義」を説明します。

関数の連続性のイメージ

いきなり厳密な定義を書くと難しいので,まずはイメージから。

関数が連続であるとは,直感的には 「関数がつながっている,ちぎれていない」という意味です。

  • y=x,y=sinx,y=x2y=x, y=\sin x, y=x^2 は連続関数です。
  • y=xy=|x| は原点で折れ曲がっているので微分不可能ですが,連続関数です。
  • y=1x(x>0)y=\dfrac{1}{x} (x > 0) は連続関数です。
  • y=tanx(π2<x<π2)y=\tan x\:(-\dfrac{\pi}{2} < x <\dfrac{\pi}{2}) も連続関数です。

なお,いたるところで不連続というヤバい関数もあります。→ディリクレ関数の定義と有名な3つの性質

ここまで理解できれば高校範囲では十分です。以下は大学内容です。

連続と一様連続の定義

連続性をより厳密に定義します。そのためには,イプシロンデルタ論法を使います。ε-δ\varepsilon \text{-} \delta の参考には以下をどうぞ:

連続の厳密な定義

以下,f(x)f(x) は区間 II 上で定義された実数値関数とします。

連続性の定義

関数 f(x)f(x)x=a(I)x=a\:(\in I) で連続とは,任意の正の実数 ε\varepsilon に対して,ある正の実数 δ\delta が存在して,任意の xIx\in I に対して xa<δ|x-a| <\delta なら f(x)f(a)<ε|f(x)-f(a)| <\varepsilon が成立することを表す。

特に,すべての aIa \in If(x)f(x) が連続であるとき,関数 f(x)f(x) が区間 II で連続という。

→ イプシロンデルタ論法とイプシロンエヌ論法

x=ax=a でつながっている。つまり「xxaa十分近づくと f(x)f(x)f(a)f(a) に近づく」ことを表しています。

一様連続

連続関数はつながっている関数なので扱いやすい嬉しい関数ですが,さらに 「一様連続関数」と呼ばれるもっと嬉しい関数のクラスがあります。連続であり,さらに 「十分」の程度が aa に依らないでおさえられるとき,一様連続と言います。

一様連続の方が強い条件です。

一様連続性の定義

関数 f(x)f(x) が区間 II で一様連続とは,任意の正の実数 ε\varepsilon に対して,ある正の実数 δ\delta が存在して,

任意の実数 x1,x2Ix_1,x_2\in I に対して,x1x2<δ|x_1-x_2| <\delta なら f(x1)f(x2)<ε|f(x_1)-f(x_2)| <\varepsilon が成立することを表す。

非常に似ているので混乱しやすいです,じっくり考えてみてください。

  • 「連続」の場合には場所 aa応じて δ\delta を持ってくる
  • 「一様連続」の場合には場所によらない共通δ\delta を持ってくる

こうしてみると,一様連続のほうが強い定義であることがわかります。

つまり「一様連続関数は連続関数」ですが「連続関数が一様連続関数とは限らない」です。

関数の一様連続性のイメージ

連続だが一様連続でない例

連続と一様連続の違いは「連続だが一様連続でない例」を見ると理解できます。

例として y=x2y=x^2 を考えます。これは連続です。一方,xx が十分大きい時に猛烈に変化する(「十分」の程度がどこまでも厳しくなる)ので一様連続ではありません。

pic

(場所によらない共通の δ\delta を用意できないです)

これをきちんと証明してみましょう。

一様連続でないことの証明の考え方

f(x)=x2f(x) = x^2 とする。

一様連続とは「ε>0\varepsilon > 0 を任意にとるとき,ある δ\delta があって x1x2<δf(x1)f(x2)<ε|x_1 - x_2| < \delta \Longrightarrow |f(x_1) - f(x_2)| < \varepsilon であること」であった。

これの否定は「ある ε>0\varepsilon > 0 に対して,どのように δ\delta をとっても x1x2<δf(x1)f(x2)<ε|x_1 - x_2| < \delta \Longrightarrow |f(x_1) - f(x_2)| < \varepsilon とできない」こととなる。

x1=a,x2=a+12δx_1 = a , x_2 = a+\dfrac{1}{2}\delta とおいて考えてみると x12x22=aδ+14δ2 |{x_1}^2 - {x_2}^2| = a\delta + \dfrac{1}{4}\delta^2 である。

今,ε\varepsilonδ\delta を1つ固定しておくと a>εδ24δa > \dfrac{\varepsilon - \frac{\delta^2}{4}}{\delta} のとき,aδ+δ24>εa\delta + \dfrac{\delta^2}{4} > \varepsilon となる。

上記の考え方をもとに,きちんと証明を書くと以下のようになります。

一様連続でないことの証明

f(x)=x2f(x) = x^2 とする。

ε\varepsilon を1つ決めたとき,δ\delta をどのようにとっても,x1>εδ24δx_1 > \dfrac{\varepsilon - \frac{\delta^2}{4}}{\delta}x2=x1+δ2x_2 = x_1 + \dfrac{\delta}{2} ととれば,x1x2<δ|x_1 - x_2| < \delta であるが,f(x1)f(x2)>ε|f(x_1) - f(x_2)| > \varepsilon であるため,ff は一様連続ではない。

他の例

「一様連続」に関して他の例も見てみましょう。

他の例
  • y=x,y=sinxy=x, y=\sin x は一様連続関数です。
  • y=xy=|x| は原点で折れ曲がっているので微分不可能ですが,一様連続関数です。
  • y=1x(x>0)y=\dfrac{1}{x} (x > 0)x=0x=0 の近くで「十分」の程度がどこまでも厳しくなるので一様連続関数ではありません。

ε-δ\varepsilon \text{-} \delta を用いた定義に従ってこれらの関数たちが連続,あるいは一様連続であることを証明してみてください。よい練習問題です。

有界閉区間上の連続関数

y=x2y = x^2 は実数全体で考えると,xx が大きくなるにつれ,変化量が際限なく大きくなるため,一様連続ではなかったのでした。

一方 y=x2y = x^21x1-1 \leqq x \leqq 1 に絞ると,変化量はたかが知れているので一様連続になります。

実は,より一般に以下の定理が成立します。

定理(有界閉区間上の連続関数は一様連続)

区間 I:axbI : a \leqq x \leqq b 上で定義された連続関数は II 上で一様連続。

なぜ一様連続を考えるのか

「連続関数では一般に成り立たず,一様連続関数だと成り立つ」ような嬉しい定理がいくつもあるので,一様連続という概念が重要になります。

より勉強したい人へ

連続関数の定義には区間が登場しました。この「区間」は「距離空間」というアイデアで拡張できます。

詳しくは 距離空間~位相空間論に向けた開集合・閉集合の一般化 を読んでみてください。

「連続」は局所的な概念,「一様連続」は大域的な概念です。