ディリクレ関数の定義と有名な3つの性質
実数全体で定義され,有理数のときに ,無理数のときに を取る関数をディリクレ関数と言う。
ディリクレ関数について,以下の話題を解説します。
- いたる所不連続
- と極限で表せる
- リーマン積分不可能,ルベーグ積分可能(高校範囲外)
連続性
cosと極限で表せる
リーマン積分とルベーグ積分
ディリクレ関数の積分
連続性
ディリクレ関数はいたるところ不連続である。
これは以下の2つの事実から分かります。
- 有理数 を一つ固定すると, にいくらでも近い無理数を取ってこれる
- 無理数 を一つ固定すると, にいくらでも近い有理数を取ってこれる
ディリクレ関数は「任意の点で関数のグラフがつながっていない」という不思議な関数です。グラフを強引に書こうとすると図のようになります(点同士が重なり合って線みたいに見える)。
cosと極限で表せる
ディリクレ関数 は以下のように表せる:
かなりかっこいい式です!
中括弧の中は と のみに依存することに注意して,
とおく。
・ が有理数のとき
が十分大きければ は整数,つまり
よって, が十分大きいとき
つまり,
・ が無理数のとき
任意の に対して は整数でない,つまり
よって,任意の に対して
つまり,
リーマン積分とルベーグ積分
積分には二種類:リーマン積分とルベーグ積分があります。高校数学で扱う普通の関数については,両者は一致します。
厳密な説明は長くなるのでできませんが,大雑把にはリーマン積分は「縦に細かく切って足し合わせる」,ルベーグ積分は「横に細かく切って足し合わせる」というイメージです。
ディリクレ関数は「リーマン積分はできないけどルベーグ積分はできる」関数としてとても有名です。このような関数が存在することは,ルベーグ積分の必要性の一つの根拠になっています。
ディリクレ関数の積分
ディリクレ関数 の区間 上での積分を考えてみます。大雑把な説明です。
縦にいくら細かく切っても,長方形の縦の長さを にしてよいか にしてよいのかが決まらない(上リーマン和と下リーマン和の極限が一致しない)。
よって,ディリクレ関数は 上でリーマン積分不可能。
区間において,
を与える たち(無理数の集合)が占める区間の「大きさ」(ルベーグ測度)は である(注)。
を与える たち(有理数の集合)が占める区間の「大きさ」は である。
よって,ルベーグ積分の値は である。
(注)直感的には 区間内の実数のほとんどが無理数であることから。 厳密には測度の完全加法性より可算集合のルベーグ測度が であることから(有理数は可算無限集合)。→集合の濃度と可算無限・非可算無限
このようなヤバい関数が楽しい!という人もいますし,ヤバい関数は実際出てこないから都合のいい関数だけ考える,という人もいます。