リーマン積分
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この記事では,積分の厳密な定式化の1つであるリーマン積分について解説します。
定積分について考える
定積分について考える
高校数学における定積分
定積分 について考えます。高校数学では, が連続の場合のみ考えました。そして,定積分は の原始関数 を用いて, と定義されました。その結果,定積分の値は ()と 軸に挟まれた部分の面積と一致するのでした。→なぜ定積分で面積が求まるのか
リーマン積分のイメージ
リーマン積分では,原始関数ではなく,()と 軸に挟まれた部分の「面積」を と定義します。
より正確には,この「面積」は「リーマン和の極限」で定義されます。以下では,「リーマン和」「リーマン積分」について順々に解説していきます。
リーマン積分の定義
リーマン積分の定義
分割とリーマン和
リーマン和とは,大雑把に言うと,区間を分割して短冊の面積の和を取ったものです。
「短冊の和」は区分求積法でも扱いました(→区分求積法をわかりやすく【意味・例題・応用】)が,リーマン和で考える短冊は横幅が一定とは限りません。
厳密に式で表しましょう。以下,考える関数 は で有界 と仮定します。次に,区間の分割 を考えます: また,各短冊内の代表点として を任意に取ります。
この分割と代表点 によるリーマン和を と定義します。単なる短冊の面積の和です。
リーマン積分の定義
分割 や代表点 の取り方によって は様々な値を取ります。ところが, が十分細かいときには は一定値に近づくことがあります。この一定値を と定義します。
「十分細かい」は「分割幅の最大値 が十分小さい」と考えます。
が, や によらず一定値 に収束するとき, は 上でリーマン積分可能と言う。この値 を と書きリーマン積分と呼ぶ。
赤文字の条件をさらにきちんと書くと,以下のようになります:
任意の に対して,ある が存在して, なる任意の と任意の に対して
リーマン積分可能の言い換え
リーマン積分可能の言い換え
すべての を考えるのは大変なので,最大の と最小の だけを考えましょう。
の における上限と下限をそれぞれ とおきます(→sup(上限)とinf(下限)の意味)。さらに
とおきます。このとき です。分割 によらず と収束するならば,はさみうちの原理によって です。つまりさきほどの赤文字の条件は以下のように言い換えられます:
によらず
(ここでは,紫ならば赤しか説明していないですが,実は赤と紫は同値です)
リーマン可積分な例
リーマン可積分な例
「単調」または「連続」ならリーマン積分可能です。
上で有界な関数(無限に発散しない) が以下の1,2のいずれかを満たせば は 上でリーマン可積分である。
- 単調増加/減少する関数
- 連続関数
単調増加のときのみ示す。
単調増加であるため , である。
であるため である。これは分割に寄らない。
特に は有界であるため,上記は有限値に収束する。よってリーマン可積分である。
有界区間 で有界な連続関数 は一様連続である。→ 関数の連続性と一様連続性
よって, を任意に取ったとき, があって である。
を となる分割 を考える。一様連続性から 各 に対して である。
のとき, である。また の方法に寄らずに に収束する。
である。特に は有界であるため,上記は有限値に収束する。よってリーマン可積分である。
一般論
「連続ならリーマン可積分」を示しましたが,もう少し強い定理を紹介します。
区間 上の有界関数 について, がリーマン可積分である必要十分条件は, の不連続点のルベーグ測度が であること。
特に不連続点が可算個の有界関数はリーマン可積分です。
※ルベーグ測度については,こちらの記事 を参照してください。
リーマン可積分ではない例
リーマン可積分ではない例
ディリクレ関数 は でリーマン可積分ではない。
の分割 に対して とおく。
どのように区間 を小さく取っても は有理数,無理数両方を含む。(→有理数と無理数の稠密性)
よって , である。ゆえに である。
よって, となり,リーマン可積分ではない。
おまけ:単関数
おまけ:単関数
単関数とは
リーマン積分を定義するときに登場した「短冊の和」をもう少しきちんと式で表したのが単関数です。
ルベーグ積分を理解するためにも単関数の理解が必要です。というわけで,最後に単関数について述べます。
区間 に対して,特性関数 を と定義します。
特性関数の和の形で表される関数を単関数といいます。つまり, という形の関数です(ただし )。
式だけだとイメージしにくいですね。グラフは次のようになります。
単関数とリーマン積分
リーマン積分は,以下の流れで定義しました:
- 単関数の積分値を定義する
- 一般の関数を単関数で近似する
もう少し詳しく言うと,
-
単関数 の積分を と定義(シンプルに長方形の面積の和)
-
のリーマン積分を以下で定義: ただし,分割 と代表点 に対して とした。
この流れ(単関数による近似)はルベーグ積分の定義でも出てくるので覚えておきましょう。
この記事では有界な関数を考えましたが,有界ではない関数については広義リーマン積分があります。