区分求積法の意味・例題・公式の証明

更新日時 2021/02/24
区分求積法

0x10\leq x\leq 1 において連続な関数 y=f(x)y=f(x) に対して,

limn1nk=1nf(kn)=01f(x)dx\displaystyle\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)=\int_0^1 f(x)dx

区分求積法は,リミットとシグマが混ざった式を計算するための手法の1つです。見た目は複雑ですが,意味はそこまで難しくはありません。

目次
  • 区分求積法の意味と使い方

  • 例題

  • 等式の証明

  • リーマン積分との関係

区分求積法の意味と使い方

区分求積法の考え方

  • 区分求積法の式は複雑ですが,以下の「イメージ」をつかんでおけば,簡単に式を覚えられます。

  • limn1nk=1nf(kn)=01f(x)dx\displaystyle\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)=\int_0^1 f(x)dx
    という式の左辺を書き下してみます:
    limn1n(f(1n)+f(2n)++f(nn))\displaystyle\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n} \left(f\left(\dfrac{1}{n}\right) + f\left(\dfrac{2}{n}\right) + \cdots + f\left(\dfrac{n}{n}\right) \right)

  • これは,上図のような短冊形を合わせた図形の面積を表しているとみなせます。そして,分割の個数 nn を大きくしていくと,この図形の面積は,01f(x)dx\displaystyle\int_0^1 f(x)dx に近づいていきそうです。そして,実際に左辺の極限値が右辺の積分値に等しいというのが,区分求積法の等式です。

  • 区分求積法を使う手順はまずリミットとシグマを見たら区分求積法を疑うそしてうまく f(x)f(x) を見つけるです。

例題

例題

以下の極限を求めよ。 limnk=1nkn2+k2\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^n \dfrac{k}{n^2+k^2}

リミットとシグマを見たら区分求積法を疑います。区分求積法を使うために 極限の中身を 1nk=1nf(kn)\displaystyle\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right) という形に変形します。つまり,強引に 1n\dfrac{1}{n}kn\dfrac{k}{n} を作ります。

解答

limnk=1nkn2+k2=limnk=1nkn21+(kn)2=limn1nk=1nkn1+(kn)2 \begin{aligned} & \lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^n \dfrac{k}{n^2+k^2} \\ & =\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^n \dfrac{\frac{k}{n^2}}{1+(\frac{k}{n})^2} \\ &=\lim_{n \to \infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n \dfrac{\frac{k}{n}}{1+(\frac{k}{n})^2} \end{aligned}

ここで f(x)=x1+x2f(x)=\dfrac{x}{1+x^2} として区分求積法を使うと,上式は,

01x1+x2dx=[12log(1+x2)]01=12log2 \begin{aligned} & \int_0^1 \dfrac{x}{1+x^2} dx \\ & =\left[\dfrac{1}{2}\log(1+x^2) \right]_0^1 \\ & =\dfrac{1}{2} \log2 \end{aligned}

となる。

区分求積法のより難しい例題は,区分求積法の難問~京大2003後期~で紹介しています。

→高校数学の計算問題&検算テクニック集では,比較的易しい例題と区分求積法を使わない別解も紹介しています。

等式の証明

ff が区間 0x10 \leq x \leq 1 上で連続微分可能(つまり,ff' が存在して連続)な場合について,区分求積法の等式

limn1nk=1nf(kn)=01f(x)dx\displaystyle\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)=\int_0^1 f(x)dx

を証明します。

以下の証明は一見複雑ですが,方針は単純です。「各区間に限定して左辺と右辺のズレを考える」「微分が連続ならズレはそんなに大きくならない」「最後にズレを足し上げる」というイメージです。

証明

まず k1nxkn\dfrac{k-1}{n} \leq x \leq \dfrac{k}{n} のとき,平均値の定理より

f(kn)f(x)=(knx)f(θk,n,x)f\left(\dfrac{k}{n}\right)-f(x)=\left(\dfrac{k}{n}-x\right)f'(\theta_{k,n,x})

となるような(k,n,xk,n,x によって決まる)数 θk,n,x\theta_{k,n,x}xxkn\dfrac{k}{n} の間に存在する。

ff'0x10 \leq x \leq 1 上の連続関数だから,最大値の原理よりその絶対値 f|f'|は 最大値 CC もつ。すると k1nxkn\dfrac{k-1}{n} \leq x \leq \dfrac{k}{n} のとき,

f(x)f(kn)=(xkn)f(θk,n,x)(knx)C \begin{aligned} & \left| f(x) -f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right| \\ & =\left| \left(x- \dfrac{k}{n}\right)f'(\theta_{k,n,x}) \right| \\ & \leq \left(\dfrac{k}{n}-x\right)C \end{aligned}

が成り立つ。よって

(k1)/nk/n(f(x)f(kn))dx(k1)/nk/nf(x)f(kn)dx(k1)/nk/n((knx)C)dx=C[12(knx)2](k1)/nk/n=C2n2 \begin{aligned} & \left| \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left(f(x) - f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right)dx \right| \\ & \leq \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left|f(x) - f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right|dx \\ & \leq \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left(\left(\dfrac{k}{n}-x\right)C \right)dx \\ & =C\left[-\dfrac{1}{2} \left(\dfrac{k}{n}-x\right)^2\right]_{(k-1)/n}^{k/n} \\ & =\dfrac{C}{2n^2} \end{aligned}

となる。最後に

01f(x)dx1nk=1nf(kn)=k=1n(k1)/nk/nf(x)dxk=1n(k1)/nk/nf(kn)dxk=1n(k1)/nk/nf(x)f(kn)dxk=1nC2n2=C2n0(n) \begin{aligned} & \left|\int_0^1 f(x)dx - \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right| \\ & = \left| \sum_{k=1}^n \int_{(k-1)/n}^{k/n}f(x)dx - \sum_{k=1}^n \int_{(k-1)/n}^{k/n}f\left(\dfrac{k}{n}\right)dx \right| \\ & \leq\sum_{k=1}^n \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left|f(x) - f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right|dx \\ & \leq \sum_{k=1}^n\dfrac{C}{2n^2}=\dfrac{C}{2n} \to 0 \hspace{15pt}(n \to \infty) \end{aligned}

となるから,はさみうちの原理より

limn1nk=1nf(kn)=01f(x)dx\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)=\int_0^1 f(x)dx

である。

一方,ff の微分可能性に仮定をつけない場合は少し複雑になるため,専門書を参照してください。

ちなみに,より一般に積分区間を一般化した以下が成立します。考え方や証明は区間が [0,1][0,1] の場合と同様です。

区分求積法(区間が一般の場合)

axba \leq x \leq b において連続な関数 y=f(x)y=f(x) に対して,
limnbank=1nf(a+(ba)kn)=abf(x)dx\lim_{n \to \infty}\dfrac{b-a}{n}\sum_{k=1}^n f\left(a+(b-a)\dfrac{k}{n}\right) =\int_a^b f(x)dx

リーマン積分との関係

この等式をもう少し観察してみます。等式の左辺は 「短冊形を合わせた図形の面積」の極限を表しており,右辺は微分して f(x)f(x) になるような関数 FF(=原始関数)による 「F(b)F(a)F(b)-F(a) という値」を表しています。

高校数学では,多くの場合この右辺(原始関数による値)を定積分 abf(x)dx\displaystyle\int_a^b f(x)dx の定義とします。一方で大学以降の数学では,ざっくりいうと左辺(面積)を積分 abf(x)dx\displaystyle\int_a^b f(x)dx だと定義することが多く,この定義(厳密にはもう少し複雑)による積分をリーマン積分と言います。

つまり,この区分求積法の等式は,原始関数とリーマン積分(面積)を結び付ける重要な定理とみなすこともできます。 →なぜ定積分で面積が求まるのか

より詳しく知りたい方は微分積分学の基本定理というキーワードで調べてみてください。

一見複雑な極限をうまく処理して区分求積法に持ち込むことには,パズル的な面白さがあります。

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