区分求積法をわかりやすく【意味・例題・応用】

区分求積法

区分求積法とは,「長方形の面積の和」で横幅を限りなく小さくしたものy=f(x)y=f(x) の下側部分の面積が等しいという式:

limn1nk=1nf(kn)\displaystyle\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)==01f(x)dx\displaystyle\int_0^1 f(x)dx

区分求積法の考え方

区分求積法の見た目は複雑ですが,意味はそこまで難しくはありません。

区分求積法の意味

  • 右図の紫部分の面積は,定積分を使って 01f(x)dx\displaystyle\int_0^1 f(x)dx と表せます。
    区分求積法の考え方

  • 一方,左図の nn 個の長方形を考えます。横の長さはすべて 1n\dfrac{1}{n} で,縦の長さは左から順に f(1n),f(2n),f\left(\dfrac{1}{n}\right),f\left(\dfrac{2}{n}\right),\cdots なので,面積の和は 1n(f(1n)+f(2n)++f(nn))\dfrac{1}{n} \left(f\left(\dfrac{1}{n}\right) + f\left(\dfrac{2}{n}\right) + \cdots + f\left(\dfrac{n}{n}\right) \right) となります。シグマを使って表すと 1nk=1nf(kn)\displaystyle\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right) です。 nn をどんどん増やしていく(つまり limn\displaystyle\lim_{n\to\infty} とする)と,どんどん紫の面積に近づいていきそうですね。

  • これを等式で表したものが区分求積法です:
    limn1nk=1nf(kn)\displaystyle\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)==01f(x)dx\displaystyle\int_0^1 f(x)dx

区分求積法の例題と練習問題

例題1

以下の極限を求めよ。 limn(1n+1+1n+2++1n+n)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{n+1}+\dfrac{1}{n+2}+\cdots+\dfrac{1}{n+n} \right)

方針

和のリミットを見たら区分求積法を疑います。区分求積法を使うために 極限の中身を 1nk=1nf(kn)\displaystyle\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right) という形に変形します。つまり,

  1. 和をシグマで表す
  2. 1n\dfrac{1}{n} を前に出して残りを kn\dfrac{k}{n} で表す
  3. 区分求積法を適用

という流れです。

解答
  1. 和をシグマで表すと, limnk=1n1n+k\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^n \dfrac{1}{n+k} となる。

  2. さらに,1n\dfrac{1}{n} を前に出して残りを kn\dfrac{k}{n} で表すと, limn1nk=1n11+kn\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{1+\frac{k}{n}} となる。

  3. 区分求積法を適用。つまり,kn\dfrac{k}{n} の部分を xx で置き換えて定積分で表す: limn1nk=1n11+kn=0111+xdx=log2\begin{aligned}&\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{1+\frac{k}{n}}\\ &=\displaystyle\int_0^1\dfrac{1}{1+x}dx\\ &=\log 2\end{aligned}

練習問題

以下の極限を求めよ。 limn(1n2+1+2n2+4++nn2+n2)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{n^2+1}+\dfrac{2}{n^2+4}+\cdots+\dfrac{n}{n^2+n^2}\right)

解答
  1. シグマで表して 1n\dfrac{1}{n} を前に出す: limnk=1nkn2+k2=limn1nk=1nkn+k2n\displaystyle\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^n \dfrac{k}{n^2+k^2}=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\dfrac{k}{n+\frac{k^2}{n}}

  2. 残りを kn\dfrac{k}{n} で表すために,分母分子を nn で割る: limn1nk=1nkn+k2n=limn1nk=1nkn1+(kn)2\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\dfrac{k}{n+\frac{k^2}{n}}=\lim_{n \to \infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n \dfrac{\frac{k}{n}}{1+(\frac{k}{n})^2}

  3. 区分求積法を適用: limn1nk=1nkn1+(kn)2=01x1+x2dx\lim_{n \to \infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n \dfrac{\frac{k}{n}}{1+(\frac{k}{n})^2}=\int_0^1 \dfrac{x}{1+x^2} dx あとは定積分を計算するだけ: 01x1+x2dx=[12log(1+x2)]01=12log2\displaystyle\int_0^1 \dfrac{x}{1+x^2} dx=\left[\dfrac{1}{2}\log(1+x^2)\right]_0^1=\dfrac{1}{2} \log2

区分求積法の他の問題

区分求積法の応用

区分求積法を応用する上で,意識しておくべきポイントが3つあります。

端っこの数個は無視できる

例題2

limn{1n+3+1n+4++1n+(n4)}\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left\{\dfrac{1}{n+3}+\dfrac{1}{n+4}+\cdots+\dfrac{1}{n+(n-4)}\right\} を計算せよ。

シグマの範囲が k=1n\displaystyle\sum_{k=1}^n なら区分求積法の形になりますが,端っこが 33 から n4n-4 まででズレています。実は,有限個のズレは nn\to\infty とすると 00 になるので無視できます。

解答

limnk=3n41n+k=limnk=1n1n+k\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=3}^{n-4}\dfrac{1}{n+k}=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{n+k} である。なぜなら,k=1,2,n3,n2,n1,nk=1,2,n-3,n-2,n-1,n の項は nn\to\infty ですべて 00 に収束するから。

右辺は例題1で計算したように, limn1nk=1n11+kn=0111+xdx=log2\begin{aligned}&\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{1+\frac{k}{n}}\\ &=\displaystyle\int_0^1\dfrac{1}{1+x}dx\\ &=\log 2\end{aligned}

積分区間は k/n が動く範囲

ここまでは積分区間が [0,1][0,1] の区分求積法を考えましたが,異なる範囲になる場合もあります。

例題3

limn(1n+1+1n+2++1n+3n)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{n+1}+\dfrac{1}{n+2}+\cdots+\dfrac{1}{n+3n} \right) を計算せよ。

解答

シグマを使って表すと,limnk=13n1n+k=limn1nk=13n11+kn\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{3n}\dfrac{1}{n+k}=\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^{3n}\dfrac{1}{1+\frac{k}{n}} となり,シグマの範囲が 11 から 3n3n になる。区分求積法を使う際,長方形の横の区切りは 1n\dfrac{1}{n} から 3nn=3\dfrac{3n}{n}=3 までなので,積分区間は [0,3][0,3] になる。よって,求める値は 0311+xdx\displaystyle\int_{0}^3\dfrac{1}{1+x}dx となる。これを計算すると log4\log 4

このように,積分区間は kn\dfrac{k}{n} が動く範囲で決まります。より一般に k=An+C2Bn+C1\displaystyle\sum_{k=An+C_2}^{Bn+C_1} という形(A,B,C1,C2A,B,C_1,C_2nn によらない定数)のとき,kn\dfrac{k}{n} が動く範囲はおよそ AA から BB までなので,積分区間は AB\displaystyle\int_A^B になります。

N個飛ばしは 1/N 倍

例題4

limn(1n+3+1n+6++1n+3n)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{n+3}+\dfrac{1}{n+6}+\cdots+\dfrac{1}{n+3n} \right)

を計算せよ。

例題3: limn(1n+1+1n+2++1n+3n)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{n+1}+\dfrac{1}{n+2}+\cdots+\dfrac{1}{n+3n} \right) と似ていますが,例題4では和は3つおきに取っています。実は,和を NN 個おきに取ると,和を全部取ったときの 1N\dfrac{1}{N} 倍になります。直感的には,NN が大きいとき近くの長方形同士の面積はほとんど等しいことからわかります。

解答

例題3の答えの 13\dfrac{1}{3} 倍なので,13log4\dfrac{1}{3}\log 4

区分求積法の証明

ff が区間 0x10 \leqq x \leqq 1 上で連続な場合に, limn1nk=1nf(kn)=01f(x)dx\displaystyle\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)=\int_0^1 f(x)dx が成立します。これを証明したいですが,大変なので,少し弱いバージョンとして ff が連続微分可能(つまり,ff' が存在して連続)な場合について証明します。

以下の証明は一見複雑ですが,方針は単純です。「各区間に限定して左辺と右辺のズレを考える」「微分が連続ならズレはそんなに大きくならない」「最後にズレを足し上げる」というイメージです。

証明

まず k1nxkn\dfrac{k-1}{n} \leqq x \leqq \dfrac{k}{n} のとき,平均値の定理より

f(kn)f(x)=(knx)f(θk,n,x)f\left(\dfrac{k}{n}\right)-f(x)=\left(\dfrac{k}{n}-x\right)f'(\theta_{k,n,x})

となるような(k,n,xk,n,x によって決まる)数 θk,n,x\theta_{k,n,x}xxkn\dfrac{k}{n} の間に存在する。

ff'0x10 \leqq x \leqq 1 上の連続関数だから,最大値の原理よりその絶対値 f|f'|は 最大値 CC もつ。すると k1nxkn\dfrac{k-1}{n} \leqq x \leqq \dfrac{k}{n} のとき,

f(x)f(kn)=(xkn)f(θk,n,x)(knx)C \begin{aligned} & \left| f(x) -f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right| \\ & =\left| \left(x- \dfrac{k}{n}\right)f'(\theta_{k,n,x}) \right| \\ & \leqq \left(\dfrac{k}{n}-x\right)C \end{aligned}

が成り立つ。よって

(k1)/nk/n(f(x)f(kn))dx(k1)/nk/nf(x)f(kn)dx(k1)/nk/n((knx)C)dx=C[12(knx)2](k1)/nk/n=C2n2 \begin{aligned} & \left| \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left(f(x) - f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right)dx \right| \\ & \leqq \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left|f(x) - f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right|dx \\ & \leqq \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left(\left(\dfrac{k}{n}-x\right)C \right)dx \\ & =C\left[-\dfrac{1}{2} \left(\dfrac{k}{n}-x\right)^2\right]_{(k-1)/n}^{k/n} \\ & =\dfrac{C}{2n^2} \end{aligned}

となる。最後に

01f(x)dx1nk=1nf(kn)=k=1n(k1)/nk/nf(x)dxk=1n(k1)/nk/nf(kn)dxk=1n(k1)/nk/nf(x)f(kn)dxk=1nC2n2=C2n0(n) \begin{aligned} & \left|\int_0^1 f(x)dx - \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right| \\ & = \left| \sum_{k=1}^n \int_{(k-1)/n}^{k/n}f(x)dx - \sum_{k=1}^n \int_{(k-1)/n}^{k/n}f\left(\dfrac{k}{n}\right)dx \right| \\ & \leqq\sum_{k=1}^n \int_{(k-1)/n}^{k/n} \left|f(x) - f\left(\dfrac{k}{n}\right) \right|dx \\ & \leqq \sum_{k=1}^n\dfrac{C}{2n^2}=\dfrac{C}{2n} \to 0 \hspace{15pt}(n \to \infty) \end{aligned}

となるから,

limn1nk=1nf(kn)=01f(x)dx\lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\dfrac{k}{n}\right)=\int_0^1 f(x)dx

である。

ちなみに,より一般に積分区間を一般化した以下が成立します。考え方や証明は区間が [0,1][0,1] の場合と同様です。

区分求積法(区間が一般の場合)

axba \leqq x \leqq b において連続な関数 y=f(x)y=f(x) に対して,
limnbank=1nf(a+(ba)kn)=abf(x)dx\lim_{n \to \infty}\dfrac{b-a}{n}\sum_{k=1}^n f\left(a+(b-a)\dfrac{k}{n}\right) =\int_a^b f(x)dx

リーマン積分との関係

この等式をもう少し観察してみます。等式の左辺は 「短冊形を合わせた図形の面積」の極限を表しており,右辺は微分して f(x)f(x) になるような関数 FF(=原始関数)による 「F(b)F(a)F(b)-F(a) という値」を表しています。

高校数学では,多くの場合この右辺(原始関数による値)を定積分 abf(x)dx\displaystyle\int_a^b f(x)dx の定義とします。一方で大学以降の数学では,ざっくりいうと左辺(面積)を積分 abf(x)dx\displaystyle\int_a^b f(x)dx だと定義することが多く,この定義(厳密にはもう少し複雑)による積分をリーマン積分と言います。

つまり,この区分求積法の等式は,原始関数とリーマン積分(面積)を結び付ける重要な定理とみなすこともできます。 →なぜ定積分で面積が求まるのか

より詳しく知りたい方は微分積分学の基本定理というキーワードで調べてみてください。

一見複雑な極限をうまく処理して区分求積法に持ち込むことには,パズル的な面白さがあります。

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