対数平均に関する不等式の証明

更新日時 2021/10/05
対数平均の不等式

x,y>0x,y>0 かつ xyx\neq y のとき,

xy<xylogxlogy<x+y2\sqrt{xy}<\dfrac{x-y}{\log x-\log y}<\dfrac{x+y}{2}

対数平均の不等式の意味と,2通りの証明(素直な方法,おもしろい方法)を紹介します。

目次
  • 対数平均の不等式について

  • 変数を減らす素直な証明

  • おもしろい不等式を使う証明

  • 他の証明方法

対数平均の不等式について

異なる正の実数 x,yx,y に対して,xylogxlogy\dfrac{x-y}{\log x-\log y} のことを対数平均と言います。

対数平均に関連して,異なる正の実数 x,yx,y に対して,xy<xylogxlogy<x+y2\sqrt{xy}<\dfrac{x-y}{\log x-\log y}<\dfrac{x+y}{2}という不等式が成立します。ここで,

  • xy\sqrt{xy}xxyy の相乗平均
  • x+y2\dfrac{x+y}{2}xxyy の相加平均(普通の平均)

なので,この不等式は 相乗平均 \leq 対数平均 \leq 相加平均 であることを表しています(ただし,x=yx=y のとき xxyy の対数平均は xx と考え,等号が成立する)。

ちなみに,調和平均 11x+1y\dfrac{1}{\frac{1}{x}+\frac{1}{y}} は相乗平均以下なので,調和平均 \leq 相乗平均 \leq 対数平均 \leq 相加平均 が成立します。→調和平均にまつわる重要な公式まとめ

変数を減らす素直な証明

対数平均の不等式を証明します。以下では,x>yx>y の場合について証明します。x<yx<y の場合も同様です。

方針

2変数だと大変なので,各辺を yy で割って「xy\dfrac{x}{y} の1変数の不等式」とみなします。このように,同次式は変数を1つ減らせます。1変数の不等式にしたらあとは微分するだけです。

右側の不等式の証明

各辺を y>0y>0 で割ると,示すべき不等式は xy<xy1log(xy)<12(xy+1)\sqrt{\dfrac{x}{y}}<\dfrac{\frac{x}{y}-1}{\log(\frac{x}{y})}<\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{x}{y}+1\right) つまり,11 より大きい任意の実数 tt に対して, t<t1logt<12(t+1)\sqrt{t}<\dfrac{t-1}{\log t}<\dfrac{1}{2}(t+1) を示せばよい。

まず,右側の不等式を証明する。分母を払った両辺の差を,f(t)=(t+1)logt2(t1)f(t)=(t+1)\log t-2(t-1) とおく。微分すると,
f(t)=logt+1+1t2=log1t+1t1f'(t)=\log t+1+\dfrac{1}{t}-2\\ =-\log\dfrac{1}{t}+\dfrac{1}{t}-1
となる。よって,t>1t>1f(t)>0f'(t)>0 である(→注)ので,f(1)=0f(1)=0 と合わせて右側の不等式が示された。

注:有名不等式 logxx1\log x\leq x-1x=1tx=\dfrac{1}{t} とおくとわかります。→有名不等式logx≦x-1の証明と入試問題

この有名不等式を知らなくても,f(t)f'(t) をもう1回微分すればすぐにわかります。

左側も右側とほぼ同じように証明できます。

左側の不等式の証明

赤字の左側の不等式の分母を払った両辺の差を g(t)=t1tlogtg(t)=t-1-\sqrt{t}\log t とおく。微分すると,
g(t)=11tlogt2t=1t(t1logt)g'(t)=1-\dfrac{1}{\sqrt{t}}-\dfrac{\log t}{2\sqrt{t}}\\ =\dfrac{1}{\sqrt{t}}(\sqrt{t}-1-\log\sqrt{t})
となる。よって,t>1t>1f(t)>0f'(t)>0 である(右側と同じく logxx1\log x\leq x-1 という不等式からわかる!)ので,f(1)=0f(1)=0 と合わせて左側の不等式が示された。

おもしろい不等式を使う証明

もう1つ証明を紹介します。The Logarithmic Mean(外部PDF)に記載されていた方法です。

方針

A>0A>0 のとき,eAeAeA+eA<A<eAeA2\dfrac{e^A-e^{-A}}{e^A+e^{-A}}< A<\dfrac{e^A-e^{-A}}{2}

という不等式を使います(この不等式については後述します)。

証明

x=eX,y=eYx=e^X,y=e^Y とおくと,示すべき不等式は, eX+Y2<eXeYXY<eX+eY2e^{\frac{X+Y}{2}}<\dfrac{e^X-e^Y}{X-Y}<\dfrac{e^X+e^Y}{2}

XY>0X-Y>0 の場合を考えていることに注意)

  • 左側の不等式は, XY2<eXY2eYX22\dfrac{X-Y}{2}<\dfrac{e^{\frac{X-Y}{2}}-e^{\frac{Y-X}{2}}}{2}と変形できる。
  • 右側の不等式は, eXY2eYX2eXY2+eYX2<XY2\dfrac{e^{\frac{X-Y}{2}}-e^{\frac{Y-X}{2}}}{e^{\frac{X-Y}{2}}+e^{\frac{Y-X}{2}}}<\dfrac{X-Y}{2}と変形できる。

いずれも,方針に記載した赤字の不等式A=XY2A=\dfrac{X-Y}{2} と置くとわかる。

補足:赤字の不等式について

  • 赤字の不等式は双曲線関数を使うと, tanhA<A<sinhA\tanh A< A < \sinh A と表せます(→双曲線関数(sinh,cosh,tanh)の意味・性質・楽しい話題まとめ)。これは(適切な範囲で成立する) sinA<A<tanA\sin A<A<\tan A という不等式と似ていておもしろいです。

  • 証明は結局微分しますが,双曲線関数の微分を知っていると一瞬です。具体的には,(tanhA)=1cosh2A(\tanh A)'=\dfrac{1}{\cosh^2 A}(sinhA)=coshA(\sinh A)'=\cosh AA0A\neq 0 において coshA>1\cosh A>1 であることから不等式が証明できます。

他の証明方法

対数平均の不等式の証明を Twitter で募集したところ,面積を使う方法や平均値の定理を使う方法などいろいろな証明を教えていただきました!

上記ツイートの引用リツイートからいろいろな証明が見れますので,ぜひ御覧ください。

Twitter のおかげでいろいろな証明を知ることができました。証明を教えていただいたみなさまありがとうございます!