対数和不等式の証明と応用
を正の数とするとき,
情報理論などで活躍する不等式です。この記事では のことを と書きます。
対数和不等式の証明
対数和不等式の証明
にイェンゼンの不等式を用いるだけです!
は入試でも頻出の重要な関数です。凸であることは覚えておきましょう。→xlogxの極限,グラフ,積分など
とおくと, の微分は ,二階微分は なので は で凸関数である。
ここで, とおくと対数和不等式の左辺は
となる。これにイェンゼンの不等式を用いると,
となり目標の式を得る。
等号成立条件は(イェンゼンの不等式の等号成立条件より) です。
ちなみに, の中に がある場合にも( , とみなすことで)対数和不等式を拡張できます。
KLダイバージェンスの非負性
KLダイバージェンスの非負性
対数和不等式の応用例です。
, が非負のとき,
はカルバック–ライブラー情報量,Kullback–Leibler divergenceなどと呼ばれる重要な量です。二つの確率分布 の間の距離のようなもの(厳密には距離ではありません)です。
対数和不等式で とすればよい。 を使うと右辺は になる。
ちなみに の等号成立条件は全ての について であること,つまり二つの確率分布が等しいことです。
ギブスの不等式は入試でもまれに登場します。→有名不等式logx≦x-1の証明と入試問題
エントロピー最大の分布
エントロピー最大の分布
, が非負のとき,
等号成立条件は ,つまり が一様分布のときです。
はエントロピーと呼ばれる重要な量です。
ギブスの不等式を変形すると,
ここで, とすると右辺は となる。
今日のネタは情報理論に強い知人のN氏によるものです,感謝!