有名不等式logx≦x-1の証明と入試問題

有名不等式

任意の正の実数 xx に対して

log⁡x≦x−1\log x\leqq x-1

対数を1次関数で近似したいときに使える有名不等式です。入試でも頻出です。

logx≦x-1の証明

両辺の差を微分するだけで証明できます。簡単です。

証明

f(x)=x−1−log⁡xf(x)=x-1-\log x とおく。 f′(x)=1−1x=x−1xf'(x)=1-\dfrac{1}{x}=\dfrac{x-1}{x} より f(x)f(x) は x≦1x\leqq 1 で減少,x≧1x\geqq 1 で増加関数なので x=1x=1 で最小値を取る。

これと f(1)=0f(1)=0 より目標の不等式は示された。

この不等式に関して

対数の不等式

  • y=log⁡xy=\log x の x=1x=1 における接線が y=x−1y=x-1 であることに注意して図を描くと,直感的には明らかな不等式です。
  • 対数関数を上から簡単な関数(1次関数)で押さえたいことがしばしばあります。そのようなときに役立つ不等式です。入試でももちろんですが,大学に入ってからも活躍する不等式です。
  • x=eyx=e^y と置換すると log⁡x≦x−1\log x\leqq x-1 は ey≧1+ye^y\geqq 1+y となり指数関数の有名不等式と一致します。→マクローリン型不等式(指数関数)
    つまり,実質 ex≧1+xe^x\geqq 1+x と同じ式なのですが,使用頻度が高いので対数バージョンでも覚えておくとよいです。
  • 入試で出題されるときはたいてい誘導がついています。

有名な入試問題

1997年の京都府立医大などで出題された問題です。実は応用上も重要な意味を持つ問題です。

問題

正の実数 p1,p2,…,pn,q1,q2,…,qnp_1,p_2,\dots,p_n,q_1,q_2,\dots,q_n

が ∑k=1npk=∑k=1nqk=1\displaystyle\sum_{k=1}^np_k=\sum_{k=1}^nq_k=1 を満たすときに以下の不等式を証明せよ: ∑k=1npklog⁡qk≦∑k=1npklog⁡pk\displaystyle\sum_{k=1}^np_k\log q_k\leqq \sum_{k=1}^np_k\log p_k

対数を上からおさえる不等式を持っているので,小さい側に対数を寄せ集めます。

解答

log⁡qk−log⁡pk=log⁡qkpk\log q_k-\log p_k=\log\dfrac{q_k}{p_k} なので示すべき不等式は以下と同値: ∑k=1npklog⁡qkpk≦0\displaystyle\sum_{k=1}^np_k\log \dfrac{q_k}{p_k}\leqq 0 これをめざす。ここで,log⁡x≦x−1\log x\leqq x-1 に x=qkpkx=\dfrac{q_k}{p_k} を代入すると, log⁡qkpk≦qkpk−1\log \dfrac{q_k}{p_k}\leqq \dfrac{q_k}{p_k}-1 なので,両辺 pkp_k 倍して k=1k=1 から nn まで足し合わせると, ∑k=1npklog⁡qkpk≦∑k=1n(qk−pk)=∑k=1nqk−∑k=1npk=0\begin{aligned}&\displaystyle\sum_{k=1}^np_k\log \dfrac{q_k}{p_k} \\&\displaystyle\leqq \sum_{k=1}^n(q_k-p_k)\\ &=\displaystyle\sum_{k=1}^nq_k-\sum_{k=1}^np_k=0\end{aligned}

上記の入試問題の背景

余談ですが,上記の入試問題の背景には「確率分布の間の距離」があります。以下は理解する必要はありませんが, 多くの入試問題の背景には高度な数学が潜んでいると意識しておくとよいでしょう。

確率分布の距離

正の実数 p1,p2,…,pnp_1,p_2,\dots,p_n が足して1を満たすとき確率分布とみなせます。そして 確率分布 PP と QQ の距離(っぽいもの)を

∑k=1npklog⁡pkqk\displaystyle\sum_{k=1}^np_k\log\dfrac{p_k}{q_k} で定義することが多いです。

(「確率分布同士の距離」がなぜこのように定義されるのか,そして定義して何が嬉しいのかは大学で学んでください)

「距離」が負になると直感に反してよろしくないので非負であって欲しいです。そして,実際に確率分布間の距離が非負であることが,さきほどの解答によって保証されます!

つまり,上記の入試問題は「確率分布間の距離は非負であることを示せ」と言い換えることができます。 対数和不等式の証明と応用もどうぞ。

三角関数も指数対数関数も,多項式で抑えてしまえば楽になることが多いです。