陰関数と陽関数の意味と違いについて
の値を決めたら の値が1つに決まるとき, は の関数であるという。その中でも,
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陽関数とは, という「いつもの形」で表された関数のこと。
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陰関数とは, という形で表された関数のこと。
陰関数と陽関数の例
陰関数と陽関数の例
まずは具体例から。
という陽関数は という陰関数表示を持つ。
中心が原点で半径1の円を陽関数で表すと, という2つの関数が必要になる。この2つの関数はいずれも という陰関数表示を持つ。
という陰関数表示について,これを陽関数の形で表すのはとても大変(あまりにも複雑な形になるので現実的でない)。
F(x,y)=0 がいつも関数を表すとは限らない
F(x,y)=0 がいつも関数を表すとは限らない
がいつも何かしらの関数を表すとは限りません。
以下のようにいろいろな場合があります。
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1つの関係式 が複数の関数を表すこともあります(例2など)。
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1つの関係式 が点を表すこともあります(次元が2落ちる)。
は のみを表す。
- が二次元の領域を表すこともあります(次元が落ちない)。
という陰関数は第一象限と第三象限(境界を一部含む)を表す。
ただし, はステップ関数というもので, のとき , のとき を返します。
陰関数のメリット:表現力
陰関数のメリット:表現力
- 例1からも分かるように,陽関数 は移項して という形にすれば陰関数の形で書くことができます。つまり,陽関数として書ける→陰関数としても書けると言えます。
- 例3から分かるように,陰関数を陽関数の形で具体的に書き表すのは必ずしも可能とは限りません(というより不可能なことが多い)。
以上より,陰関数の方が陽関数よりも表現力が高いと言えます。陰関数の形でしか表せない関数の中にも重要なものはたくさんあるので,陰関数を考える意味があるのです。
また,例2で見たように円は陽関数で表すこともできますが,陰関数表示の方が美しく,図形の意味が伝わりやすいです。
陽関数のメリット:積分
陽関数のメリット:積分
の形で書ければその微分や積分は比較的簡単に計算できます。一方,陰関数表示された関数で囲まれた部分の面積を直接求めるのは難しいです。
円周: で囲まれた部分の面積を求めたい。
陰関数表示のままでは計算できないが,陽関数 という形で書いてしまえば積分できる。
※ただの円なので,本当は積分なんていらないですが,積分計算したいときには陽関数に直したい,というイメージは伝わると思います。
※なお,微分に関しては陰関数表示のままでもOKです。「陰関数の微分公式」を使えば微分係数の計算は難しくありません。
結論:陽関数の形がよいのか,陰関数の形がよいのかは扱う対象や状況によって変わる。