ガウス記号の定義と3つの性質

ガウス記号

実数 xx に対して「xx の整数部分」を x\lfloor x\rfloor または [x][x] と書くことが多い。

ただし「xx の整数部分」とは nx<n+1n\leqq x <n+1 を満たす整数 nn のこと。

例えば,2.12.1 の整数部分は 22 なので 2.1=2\lfloor 2.1\rfloor=2

ガウス記号,フロアー関数,床関数,整数部分,など様々な呼び方があります。

ガウス記号の定義

きちんとした定義

nx<n+1n\leqq x <n+1 を満たす整数 nn のことを x\lfloor x\rfloor と書きます。

  • 例えば,x=2.1x=2.1 のとき,22.1<32\leqq 2.1<3 なので n=2n=2,つまり 2.1=2\lfloor 2.1\rfloor=2 です。
  • x=4.3x=-4.3 のとき,54.3<4-5\leqq -4.3<-4 なので 4.3=5\lfloor -4.3\rfloor=-5 です。
  • x\lfloor x\rfloorxx を超えない最大の整数,と言うこともできます。
ガウス記号の大雑把な意味
  • x\lfloor x\rfloorxx の整数部分である。

  • xx の切り捨てが x\lfloor x\rfloor である。

ただし,xx がマイナスの場合は注意が必要です。4.3-4.3 の整数部分は 4-4 と言いたくなりますが,さきほど見たように 4.3=5\lfloor -4.3\rfloor=-5 です。 迷ったら「きちんとした定義」を使いましょう。

「切り捨て,整数部分」などの言葉が出てきたらガウス記号を連想しましょう。ただし,実際に問題を解くときはほとんどの場合「きちんとした定義」の不等式を使うことになります。

ガウス記号に対して苦手意識を持っている人は多いですが,ガウス記号にまつわる問題は丁寧な場合分け&簡単な不等式処理で解けることが多いです。

ガウス記号の表記

  • x\lfloor x\rfloor ではなく [x][x] と書くこともあります。むしろ高校数学・大学入試では [x][x] を用いることが多いです。

  • この記事では,x\lfloor x\rfloor[x][x] の両方をガウス記号と呼んでいますが,一般的に「ガウス記号」と呼ばれるのは [x][x] のみのようです。

  • ガウス記号(切り捨て)は x\lfloor x\rfloor ですが,逆に切り上げを x\lceil x\rceil と書くことがあります。天井関数などと呼びます。切り上げと切り捨てをセットにすると覚えやすいので,[x][x] よりも x\lfloor x\rfloor と書く方がわかりやすいです。

ガウス記号とグラフ

ガウス記号のグラフ

ガウス記号に慣れるために y=xy=\lfloor x\rfloor のグラフを描いてみます。

  • 0x<10\leqq x <1 のとき y=0y=0
  • 1x<21\leqq x <2 のとき y=1y=1
  • 1x<0-1\leqq x <0 のとき y=1y=-1

などに注意すると,y=xy=\lfloor x\rfloor のグラフは図のようになります。

同様に,y=x+2x+3xy=\lfloor x\rfloor+\lfloor 2x\rfloor+3x などのもっと複雑な関数のグラフも,場合分けがめんどうになりますが,丁寧に場合分けすれば描くことができます。

ガウス記号の3つの性質

ガウス記号には様々な性質がありますが,特に以下の3つは覚えておくとよいでしょう。

x,yx,y は任意の実数,NN は任意の整数。

  • 性質1:x+N=x+N\lfloor x+N\rfloor=\lfloor x\rfloor+N

  • 性質2:x+yx+y\lfloor x+y\rfloor\geqq\lfloor x\rfloor+\lfloor y\rfloor

  • 性質3:2x=x+x+12\lfloor 2x\rfloor=\lfloor x\rfloor+\left\lfloor x+\dfrac{1}{2}\right\rfloor

性質1は「x+Nx+N の整数部分は xx の整数部分に NN を足したもの」という意味であり,明らかです。y=xy=\lfloor x\rfloor のグラフからも分かります。

性質2も「二つの数を足してから切り下げたもの」は「二つの数を切り下げてから足したもの」以上であるというのは明らかです。性質2のエレガントな応用例として,連続するn個の整数の積と二項係数があります。

性質3は後できちんと証明します。

ガウス記号の性質3の証明

2x=x+x+12\lfloor 2x\rfloor=\lfloor x\rfloor+\left\lfloor x+\dfrac{1}{2}\right\rfloor を証明します。ガウス記号の問題は丁寧に場合分けするのみです。

証明

・まず,0x<10\leqq x <1 の場合に証明する。

0x<120\leqq x <\dfrac{1}{2} のとき,左辺も右辺も 00 となるのでOK。

12x<1\dfrac{1}{2}\leqq x <1 のとき,左辺も右辺も 11 となるのでOK。

・次に,一般の xx に対して証明する。xx の整数部分を NN,小数部分を α\alpha とおくと x=N+αx=N+\alpha であり,ガウス記号の性質1より,

2(α+N)=2α+2N=2α+2N\lfloor 2(\alpha+N)\rfloor=\lfloor 2\alpha+2N\rfloor=\lfloor 2\alpha\rfloor+2N

(α+N)+(α+N)+12=α+α+12+2N\lfloor (\alpha+N)\rfloor+\left\lfloor (\alpha+N)+\dfrac{1}{2}\right\rfloor=\lfloor \alpha\rfloor+\left\lfloor \alpha+\dfrac{1}{2}\right\rfloor+2N

ところが,さきほど示したことより 2α=α+α+12\lfloor 2\alpha\rfloor=\lfloor \alpha\rfloor+\left\lfloor \alpha+\dfrac{1}{2}\right\rfloor なので両者は一致する。

ちなみに,性質3は以下のように一般化できます:

性質3’: nx=k=0n1x+kn\lfloor nx\rfloor=\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}\left\lfloor x+\dfrac{k}{n}\right\rfloor

nn は任意の整数)

これを,エルミートの恒等式(Hermite’s identity)と言います。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT134では,ガウス記号に関する問題と2通りの解答を紹介しています。

読者の方にはいつもお世話になっておりますm(_ _)m