f
が単純な関数でなくて「抽象的な演算」の場合を考えます。いろいろな分野に線形性を背景とする公式が成立しています。
例2:和の記号シグマ
k=1∑n(axk+byk)=ak=1∑nxk+bk=1∑nyk
f
をシグマ,と見ると数Bの数列の公式です。
例3:微分
dtd(aX(t)+bY(t))=adtdX(t)+bdtdY(t)
f
を
dtd
(微分演算子と言います),と見ると数2の微分の公式です。
例4:積分
∫pq{aX(t)+bY(t)}dt=a∫pqX(t)dt+b∫pqY(t)dt
f
を
∫pqdt
(積分演算子と言います),と見ると数2の積分の公式です。
例5:ベクトルの内積
p⋅(ax+by)=a(p⋅x)+b(p⋅y)
f
を
p
と内積を取る演算,と見ると数Bのベクトルの公式です。
例6:一次変換(行列とベクトルの積)
A(ax+by)=aAx+bAy
f
を行列
A
を左からかける演算と見ると数Cの一次変換の公式です。
例7:極限
t→αlim(aX(t)+bY(t))=at→αlimX(t)+bt→αlimY(t)
f
を極限操作と思うと数3の極限の公式です。
例8:期待値
E(aX+bY)=aE(X)+bE(Y)
f
を期待値を取る演算だと思うと数Cの確率の公式です。
→和の期待値は期待値の和【期待値の線形性】
例9:行列のトレース
tr(aX+bY)=atr(X)+btr(Y)
ただし,X
と
Y
は行列で,tr(X)
は
X
の対角成分の和を表します。
いずれも教科書に載っているごく初歩的な公式ですが,実は裏側でつながっているというのがおもしろいです。