ネイピア数eが無理数であることの証明

ネイピア数 ee は無理数である

このページでは,有名なフーリエの方法を紹介します。オイラーの方法についても概略を述べます。

eが無理数であることの証明(フーリエ)

使う道具は,マクローリン展開,背理法,等比数列による評価です。マクローリン展開を使うので厳密には高校範囲ではありませんが,最も有名な証明方法です。

方針

マクローリン展開を用いて ee を表します。p!p! をかけることで途中の項まで分母を払って整数を作り出します。残った項を等比数列でおさえることで矛盾を導きます。

証明

e=qpe=\dfrac{q}{p} (p,qp,q は互いに素な自然数)と表せると仮定して矛盾を導く。

指数関数のマクローリン展開において x=1x=1 を代入すると,

qp=e=1+1+12!+13!+14!+ \dfrac{q}{p}=e=1+1+\dfrac{1}{2!}+\dfrac{1}{3!}+\dfrac{1}{4!}+\cdots

両辺に p!p! をかけることで右辺の第 p+1p+1 項までの分母を払う:

(p1)!q=N+1(p+1)+1(p+1)(p+2)+1(p+1)(p+2)(p+3)+\begin{aligned} (p-1)! q = N + & \dfrac{1}{(p+1)}+\dfrac{1}{(p+1)(p+2)}\\ &+\dfrac{1}{(p+1)(p+2)(p+3)} + \cdots \end{aligned}

ただし,NN は自然数。

ここで,右辺の各項を上からおさえる:

1(p+1)(p+2)<1(p+1)21(p+1)(p+2)(p+3)<1(p+1)3    \begin{aligned} \dfrac{1}{(p+1)(p+2)} &< \dfrac{1}{(p+1)^2}\\ \dfrac{1}{(p+1)(p+2)(p+3)} &< \dfrac{1}{(p+1)^3}\\ &\;\;\vdots \end{aligned}

よって,

(p1)!qN<1(p+1)+1(p+1)2+1(p+1)3+<1p+111p+1=1p1\begin{aligned} &(p-1)!q-N \\ &<\dfrac{1}{(p+1)}+\dfrac{1}{(p+1)^2}+\dfrac{1}{(p+1)^3}+\cdots\\ &<\dfrac{\frac{1}{p+1}}{1-\frac{1}{p+1}}\\ &=\dfrac{1}{p} \leq 1 \end{aligned}

これは左辺が自然数であることに矛盾する。

eが無理数であることの証明(オイラー)

実は ee が無理数であることは1737年にオイラーによって初めて証明されました(論文に掲載されたのは1744年)。

オイラーの証明は 無限連分数展開 を用いるものです。

方針
  1. 有理数なら正則連分数展開は有限回で終わる
  2. ee は正則連分数展開が無限回続く

1:正則な連分数展開とは分子が全て1となる連分数展開です。ユークリッドの互除法に基いて展開できます。

2.7=2710=2+710=2+1107=2+11+37=2+11+173=2+11+12+13=[2;1,2,3]\begin{aligned} 2.7&=\dfrac{27}{10}\\ &=2+\dfrac{7}{10}\\ &=2+\dfrac{1}{\frac{10}{7}}\\ &=2+\dfrac{1}{1+\frac{3}{7}}\\ &=2+\dfrac{1}{1+\frac{1}{\frac{7}{3}}}\\ &=2+\dfrac{1}{1+\frac{1}{2+\frac{1}{3}}}=[2;1,2,3] \end{aligned}

2: ee の連分数展開は,

[2;1,2,1,1,4,1,1,6,1,1,8,1,][2;1,2,1,1,4,1,1,6,1,1,8,1,\cdots]

と規則的に無限に続くようです。証明は難しいためここでは省きます。興味のある人は調べてみてください。

実は円周率 π\pi が無理数であることを示すほうがもっと難しいです。

Tag:マクローリン展開の応用例まとめ