行列の指数関数とその性質
行列の指数関数:
正方行列 に対して,
と定義する。
行列の指数関数について
指数法則は成り立たない
相似変換に関する性質
が正則であること
行列の指数関数について
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任意の正方行列 に対して と同じサイズの行列の無限和 は収束することが知られています。そのため,任意の に対して を考えることができます。
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のサイズが のときは通常の指数関数と一致します。
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( から を対角成分とする対角行列)のとき, なので, となります。 似たような話が上三角行列の対角成分についても成り立ちます(後で使う)。
指数法則は成り立たない
実数 に対しては指数法則 が成立しますが,行列 に対しては は一般には成立しません。
ただし, と が交換可能(つまり )な場合は が成立します。
相似変換に関する性質
のとき
ここで, なので上式は,
となる。
が正則であること
美しい公式です。そして,この公式から が分かるので が正則であることも分かります!
さきほどの相似変換に関する性質を使う。 ( は のジョルダン標準形)とすると,
である。両辺の行列式を考えると,
となる。積の行列式は行列式の積なので上式の右辺は と等しい。
ここで, は上三角行列であり対角成分は の固有値 である。よって, も上三角行列で対角成分は である。
よって,
(ただし,最後に「固有値の和=トレース」という性質を用いた→行列のトレースの性質とその証明)
ちなみに, と の間の関係を表す公式にBaker-Campbell-Hausdorffの公式(名前長っ!)というものがあります。