等差×等比,2乗×等比の和を求める2通りの方法

この記事では,等差数列×等比数列 の和,およびその発展であるnn×等比数列 の和 について説明します。 等差×等比

等差×等比の和

等差数列×等比数列 の和は,公比倍してから差を取ることで計算できる。

等差×等比の例題

例題1

x1x\neq 1 のもとで Sn=x+2x2+3x3++nxnS_n=x+2x^2+3x^3+\cdots +nx^n を求めよ。 等差×等比

たしかに等差×等比になっています。等比数列の公比xx なので,xx 倍してからもとの式との差をとります!

解答

等比数列側の公比は xx なので,xSnxS_n を考える:

xSn=x2+2x3+3x4++nxn+1 xS_n=x^2+2x^3+3x^4+\cdots +nx^{n+1}

もとの式と引き算すると,

SnxSn=x+x2+x3++xnnxn+1 S_n-xS_n=x+x^2+x^3+\cdots+x^n-nx^{n+1}

右辺を等比数列の和の公式で計算する:

(1x)Sn=x(1xn)1xnxn+1 (1-x)S_n=\dfrac{x(1-x^{n})}{1-x}-nx^{n+1}

両辺を (1x)(1-x) で割れば SnS_n が求まる:

Sn=x(1xn)(1x)2nxn+11x S_n=\dfrac{x(1-x^n)}{(1-x)^2}-\dfrac{nx^{n+1}}{1-x}

このように「等比×等差」型は, SnS_nrSnrS_n の引き算を考えることで等比数列の和に帰着させます。

教科書に載っている定番の解法です。計算量が多く計算ミスしやすいので,答えが出たら必ず n=1n=1 を代入して検算するようにしましょう。

(検算の例:この場合 S1=xS_1=x で,n=1n=1 のとき右辺は xx21x\dfrac{x-x^2}{1-x} となりOK)

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT56では,検算についてもう少し詳しく解説しています。

等差×等比の別解(微分を使う)

等比数列の和の公式を微分することでも計算できます。

例題1(再掲)

x1x\neq 1 のもとで Sn=x+2x2+3x3++nxnS_n=x+2x^2+3x^3+\cdots +nx^n を求めよ。

別解

等比数列の公式 k=1nxk=x(1xn)1x\sum_{k=1}^nx^k=\dfrac{x(1-x^n)}{1-x} の両辺を微分すると, k=1nkxk1=(1x)(1(n+1)xn)+x(1xn)(1x)2=1(n+1)xn+nxn+1(1x)2\begin{aligned} &\sum_{k=1}^nkx^{k-1}\\&=\dfrac{(1-x)(1-(n+1)x^n)+x(1-x^n)}{(1-x)^2}\\ &=\dfrac{1-(n+1)x^n+nx^{n+1}}{(1-x)^2} \end{aligned}

両辺を xx 倍すれば左辺は SnS_n となる。

2つの解法を比較すると,計算量はほぼ同じくらいなので基本的には教科書に載っている「公比倍して引く方法」を用いればよいです。

しかし,無限級数の場合は微分が簡単に計算できるので,微分の方法が非常に楽です。

例題2

k=1krk1\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}kr^{k-1} を求めよ。(ただし,r<1|r| < 1

解答

k=0rk=11r\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}r^k=\dfrac{1}{1-r} の両辺を微分すると k=1krk1=1(1r)2\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}kr^{k-1}=\dfrac{1}{(1-r)^2}

※厳密には,無限級数が絶対収束するので項別微分可能,という事実を用いています。方法2は強力な時短テクニックになりますが記述式の試験の解答では方法1を用いたほうがよいでしょう。

応用:2乗×等比 の和

ここまでは,「等差×等比」つまり「1次式×等比」の和を考えました。次は「2乗×等比」の和を考えます。つまり, Sn=k=1nk2rkS_n=\displaystyle\sum_{k=1}^nk^2r^k を考えます。2つの方法(公比倍して差・微分)のどちらも使えます。

  • 「公比倍して差」の方法:
    同様に (1r)Sn=An(1-r)S_n=A_n を考えますが,AnA_n が「等差×等比」になります。つまり,「公比 倍してずらして差を取る」操作を2回行うことになります。

  • 「微分」の方法:
    等比数列の和の公式を2回微分して,k=1nk(k1)xk2=Bn\displaystyle\sum_{k=1}^nk(k-1)x^{k-2}=B_n を求めることができます。よって,k=1nk2xk2=k=1nkxk2+Bn\displaystyle\sum_{k=1}^nk^2x^{k-2}=\sum_{k=1}^{n}kx^{k-2}+B_n の両辺に x2x^2 をかければ「二乗×等比」の和が求まります(右辺第一項は 「等差×等比」で計算できます)。

例題2(東京女子医2020など)

k=1nk22k\displaystyle \sum_{k=1}^n \dfrac{k^2}{2^k} の値を求めよ。

方法1

Sn=1221+2222++n22n (1)12Sn=1222++(n1)22n+n22n+1 (2)\begin{alignedat}{3} S_n &= & \dfrac{1^2}{2^1} + & \dfrac{2^2}{2^2} + \cdots + \dfrac{n^2}{2^n} &\quad&\cdots \ (1)\\ \dfrac{1}{2} S_n &= && \dfrac{1^2}{2^2} + \cdots + \dfrac{(n-1)^2}{2^{n}} + \cdot \dfrac{n^2}{2^{n+1}} &&\cdots \ (2) \end{alignedat}

(1)(2)(1)-(2) をする:

12Sn=122+322++2n12nn22n+1 (3) \dfrac{1}{2} S_n = \dfrac{1^2}{2} + \dfrac{3}{2^2} +\cdots + \dfrac{2n-1}{2^n} - \dfrac{n^2}{2^{n+1}} \quad \cdots \ (3)

辺々をさらに 12\dfrac{1}{2} 倍して 14Sn=122+323++2n12n+1n22n+2 (4) \dfrac{1}{4} S_n = \dfrac{1}{2^2} + \dfrac{3}{2^3} +\cdots + \dfrac{2n-1}{2^{n+1}} - \dfrac{n^2}{2^{n+2}} \quad \cdots \ (4) となるため,(3)(4)(3)-(4) をすると 14Sn=122+(222++22n)n22n+12n12n+1+n22n+2=12+121(12)n1112n22n+12n12n+1+n22n+2=12+112n1n22n+12n12n+1+n22n+2=3212n(n24+n+32)\begin{aligned} \dfrac{1}{4} S_n &= \dfrac{1^2}{2} + \left( \dfrac{2}{2^2} + \cdots + \dfrac{2}{2^n} \right)\\ &\quad - \dfrac{n^2}{2^{n+1}} - \dfrac{2n-1}{2^{n+1}} + \dfrac{n^2}{2^{n+2}}\\ &= \dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{2} \dfrac{1- \left( \dfrac{1}{2} \right)^{n-1}}{1-\dfrac{1}{2}} \\ &\quad - \dfrac{n^2}{2^{n+1}} - \dfrac{2n-1}{2^{n+1}} + \dfrac{n^2}{2^{n+2}}\\ &= \dfrac{1}{2} + 1 - \dfrac{1}{2^{n-1}} \\ &\quad - \dfrac{n^2}{2^{n+1}} - \dfrac{2n-1}{2^{n+1}} + \dfrac{n^2}{2^{n+2}}\\ &= \dfrac{3}{2} - \dfrac{1}{2^n} \left( \dfrac{n^2}{4} + n + \dfrac{3}{2} \right) \end{aligned} と計算される。

よって Sn=6n2+4n+62n S_n = 6 - \dfrac{n^2+4n+6}{2^n}

方法2

f(x)=k=0n+2xk f(x) = \sum_{k=0}^{n+2} x^k とおく。

f(x)=k=0n+1(k+1)xkf(x)=k=0n(k+1)(k+2)xk=k=0n(k2+3k+2)xk\begin{aligned} f'(x) &= \sum_{k=0}^{n+1} (k+1) x^k\\ f''(x) &= \sum_{k=0}^n (k+1)(k+2) x^k\\ &= \sum_{k=0}^{n} (k^2 + 3k + 2) x^k \end{aligned} より k=0nk2xk=f(x)k=0n(3k+2)xk=f(x)k=0n3(k+1)xk+k=0nxk=f(x)(f(x)3(n+2)xn+1)+1xn+11x=f(x)3f(x)+3(n+2)xn+1+1xn+11x\begin{aligned} \sum_{k=0}^n k^2 x^k &= f''(x) - \sum_{k=0}^{n} (3k+2) x^k\\ &= f''(x) - \sum_{k=0}^{n} 3(k+1) x^k + \sum_{k=0}^{n} x^k\\ &= f''(x) - \left( f'(x) - 3(n+2) x^{n+1} \right) + \dfrac{1-x^{n+1}}{1-x} \\ &= f''(x) - 3f'(x) + 3(n+2) x^{n+1} + \dfrac{1-x^{n+1}}{1-x} \end{aligned}

一方で,等比級数の和の公式より f(x)=1xn+31x f(x) = \dfrac{1-x^{n+3}}{1-x} である。

微分すると f(x)=(1xn+3)(1x)(1x)2(1xn+3)(1x)(1x)2=1(n+3)xn+2+(n+2)xn+3(1x)2\begin{aligned} f'(x) &= \dfrac{(1-x^{n+3})' (1-x)}{(1-x)^2}\\ &\quad - \dfrac{(1-x^{n+3}) (1-x)'}{(1-x)^2}\\ &= \dfrac{1-(n+3) x^{n+2} +(n+2) x^{n+3}}{(1-x)^2} \end{aligned} となる。 x=12x = \dfrac{1}{2} を代入すると f(12)=44(n+3)2n+2+4(n+2)2n+3=4n+42n+1\begin{aligned} f' \left( \dfrac{1}{2} \right) &= 4 - \dfrac{4(n+3)}{2^{n+2}} + \dfrac{4(n+2)}{2^{n+3}}\\ &= 4 - \dfrac{n+4}{2^{n+1}} \end{aligned}

さらに微分をする。(まとめてやると大変なので各項ごとに計算をする) (1(1x)2)=2(1x)3(xn+2(1x)2)=(n+2)xn+1(1x)2+2xn+2(1x)(1x)4=(n+2)xn+1nxn+2(1x)3(xn+3(1x)2)=(n+3)xn+2(n+1)xn+3(1x)3\begin{aligned} &\left( \dfrac{1}{(1-x)^2} \right)' = \dfrac{2}{(1-x)^3}\\ &\left( \dfrac{x^{n+2}}{(1-x)^2} \right)'\\ &= \dfrac{(n+2)x^{n+1} (1-x)^2 + 2 x^{n+2} (1-x)}{(1-x)^4} \\ &= \dfrac{(n+2)x^{n+1} - n x^{n+2}}{(1-x)^3}\\ &\left( \dfrac{x^{n+3}}{(1-x)^2} \right)'\\ &= \dfrac{(n+3)x^{n+2} - (n+1) x^{n+3}}{(1-x)^3} \end{aligned}

以上をまとめて f(x)=2(1x)3(n+2)(n+3)xn+1(1x)3+2(n+1)(n+3)xn+2(1x)3(n+1)(n+2)xn+3(1x)3\begin{aligned} f''(x) &= \dfrac{2}{(1-x)^3} - \dfrac{(n+2)(n+3)x^{n+1}}{(1-x)^3} \\ &\quad +\dfrac{2(n+1)(n+3)x^{n+2}}{(1-x)^3} - \dfrac{(n+1)(n+2)x^{n+3}}{(1-x)^3} \end{aligned} を得る。

x=12x = \dfrac{1}{2} を代入すると f(12)=168(n+2)(n+3)2n+1+16(n+1)(n+3)2n+28(n+1)(n+2)2n+3=16n2+7n+142n\begin{aligned} f'' \left( \dfrac{1}{2} \right) &= 16 - \dfrac{8(n+2)(n+3)}{2^{n+1}} \\ &\quad + \dfrac{16(n+1)(n+3)}{2^{n+2}} - \dfrac{8(n+1)(n+2)}{2^{n+3}}\\ &= 16 - \dfrac{n^2 + 7n + 14}{2^n} \end{aligned} を得る。

以上をまとめると k=1nk22k=16n2+7n+142n3(4n+42n+1)+3(n+2)2n+1+212n=6n2+4n+62n\begin{aligned} \sum_{k=1}^n \dfrac{k^2}{2^k} &= 16 - \dfrac{n^2 + 7n + 14}{2^n}\\ &\quad - 3 \left( 4 - \dfrac{n+4}{2^{n+1}} \right)\\ &\quad + \dfrac{3(n+2)}{2^{n+1}} + 2 - \dfrac{1}{2^n}\\ &= 6 - \dfrac{n^2+4n+6}{2^n} \end{aligned}

p乗×等比

より一般に,以下が言えます。

任意の自然数 pp に対して, Sn=k=1nkprkS_n=\displaystyle\sum_{k=1}^nk^pr^k は2通りの方法で計算できる。

1つめの方法では「公比倍してずらして差を取る」操作を pp 回行います。2つめの方法では微分を pp 回行います。

ただし,p3p\geqq 3 の場合は計算量が非常に多くなってしまい実際に計算する機会はほぼありません。

等比数列より等比級数の方難しそうですが実は計算は楽です。

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