ポリアの壺にまつわる確率とその証明

ポリアの壺

壺(つぼ)に赤玉が aa 個,白球が bb 個入っている。その中から玉を1つ無作為に取り出し,選んだ玉を壺に戻した上で選んだ玉と同じ色の玉を1つ壺に加える。

この試行を nn 回繰り返す。nn 回目に赤玉が選ばれる確率は pn=aa+bp_n=\dfrac{a}{a+b}

確率の有名問題です。ポリアの壺に関連する問題は,京大など難関大でときどき出題されています。

pnp_nnn に依存しないというのがおもしろいです。

ポリアの壺の意味

ポリアの壺では,1回ごとに玉が1つずつ増えていきます。例えば a=1,b=1a=1,\:b=1 で1回目に赤玉を選ぶと,2回目の試行の際には壺に赤玉が2個,白玉が1個あることになります。

玉を選ぶタイプの問題の多くは,

1:「選んだ玉は元に戻さない」

2:「選んだ玉を元に戻す」

のいずれかの条件の元で考えますが,

3:「選んだ玉を戻してさらに同じ色を追加する」という奇妙な条件を課した確率モデルをポリアの壺と言います。

1では「過去に選んだ色は選びにくくなる」

2では「過去何を選んだか,未来の試行には関係ない」

3では「過去で選んだ色はよりいっそう選びやすくなる」

このように並べてみると,ポリアの壺という確率モデルを考えるのも有用な気がしてきます。

ポリアの壺の確率の証明

冒頭の主張: pn=aa+bp_n=\dfrac{a}{a+b} を証明します。

方針

「漸化式を立てる→帰納法」という方針です。k+1k+1 のときを考えるときに「kk 回+ 11 回」と考えてもうまくいきません。11 回+ kk 回」と考えるとうまくいきます。これは n=1,2,3n=1, 2, 3 くらいまで実験すれば気づきやすいでしょう。

証明

n=1n=1 のときは自明。

n=kn=k のときに pk=aa+bp_k=\dfrac{a}{a+b} と仮定する。

以下 k+1k+1 回目に赤玉が出る確率 pk+1p_{k+1} を求める。

・1回目に赤玉が出る場合

その確率は aa+b\dfrac{a}{a+b} である。a+1a+1 個の赤玉と bb 個の白玉となり残り kk 回の試行をするので,k+1k+1 回目に赤玉が出る確率は aa+b×a+1a+1+b\dfrac{a}{a+b}\times \dfrac{a+1}{a+1+b}

・1回目に白玉が出る場合

その確率は ba+b\dfrac{b}{a+b} である。 aa 個の赤玉と b+1b+1 個の白玉となり残り kk 回の試行をするので,k+1k+1 回目に赤玉が出る確率は ba+b×aa+1+b\dfrac{b}{a+b}\times \dfrac{a}{a+1+b}

よって,以上2つを足し合わせると,

pk+1=aa+bp_{k+1}=\dfrac{a}{a+b} が分かり,帰納法により証明完了。

ポリアの壺の一般化

  • ポリアの壺の一般化1:
    上記では毎回加える玉が1個でしたが,選んだ玉と同じ色の玉を 一気に mm加えることにします。つまり,nn 回試行すると nmnm 個玉が増殖します。

  • ポリアの壺の一般化2:
    上記では赤玉と白玉の2種類でしたが,玉の色が cc 種類の場合を考えます。最初壺には色 ii の玉が aia_i 個入っているとします (i=1,2,c)(i=1, 2,\cdots c)

これら2つの一般化を行ったときでも,さきほどと同様な美しい性質が証明できます:

ポリアの壺の一般化バージョン

nn 回目の試行で色 ii が選ばれる確率は

pn(i)=aii=1caip_n(i)=\dfrac{a_i}{\displaystyle\sum_{i=1}^ca_i}

nn にも mm にも依存しないです!

c=2,a1=a,a2=bc=2,\:a_1=a,\:a_2=b とすると冒頭で述べた確率 aa+b\dfrac{a}{a+b} と一致します。

証明はさきほどとほとんど同様で,漸化式+帰納法でできます,練習問題にどうぞ!

ポリアは数学者の名前です。壺(つぼ)と聞くとドラゴンクエストを思い出します。

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