正射影ベクトルの公式の証明と使い方

正射影ベクトルの公式

ベクトル bundefined\overrightarrow{b}aundefined\overrightarrow{a} が定める直線に正射影したベクトルは,aundefinedbundefinedaundefined2aundefined\dfrac{\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}}{|\overrightarrow{a}|^2}\overrightarrow{a}

正射影ベクトルの意味

物に光を当てたときにできる像を射影と言います。点光源を考える(点射影)ことも平行光線(無限遠点に光源があるとみなせる)を考えることもあります。特に,スクリーンに垂直な光線による射影を正射影と言います。

正射影とは

この記事ではベクトルを直線に射影したものを考えます。ベクトル aundefined\overrightarrow{a} が定める直線とは,aundefined\overrightarrow{a} (に対応する有向線分)を含む(向きのついた)直線 ll のことです。 ll はスクリーンの役割を果たします。例えば薄い青ベクトルの正射影は青いベクトル,薄い赤ベクトルの正射影は赤いベクトルです。

正射影ベクトルの公式の証明

正射影ベクトルの公式は,ベクトル aundefined\overrightarrow{a} とベクトル bundefined\overrightarrow{b} が与えられたときに射影したベクトル vundefined\overrightarrow{v} を求める公式です。

正射影ベクトルの公式の証明は難しくありません。公式を覚えることよりも自力で導出できるようになっておきましょう。

証明

aundefined\overrightarrow{a}bundefined\overrightarrow{b} のなす角を θ\theta とおく。 以下では ±\pm という符号が登場するが,0θπ20\leq\theta\leq\dfrac{\pi}{2} のときはプラスの符号,π2<θ\dfrac{\pi}{2} <\theta のときはマイナスの符号で考えるものとする。

正射影ベクトルの公式の証明

求める正射影ベクトルを vundefined\overrightarrow{v} とおく。 vundefined\overrightarrow{v}aundefined\overrightarrow{a} と平行なので,実数 kk を用いて vundefined=kaundefined\overrightarrow{v}=k\overrightarrow{a} と書ける。よって,vundefined=±kaundefined|\overrightarrow{v}|=\pm k|\overrightarrow{a}|

一方内積について考えると,aundefinedbundefined=aundefinedbundefinedcosθ=±aundefinedvundefined\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta=\pm|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{v}|

よって,vundefined=±aundefinedbundefinedaundefined|\overrightarrow{v}|=\pm\dfrac{\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}}{|\overrightarrow{a}|}

以上二つの式より k=±aundefinedbundefinedaundefined2k=\pm\dfrac{\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}}{|\overrightarrow{a}|^2} となり正射影ベクトルの公式を得る。

公式の使い方

「正射影ベクトルは内積と長さを使って簡単に求めることができる」と覚えておきましょう。問題文中で「正射影」という言葉が明示的に使われることはほとんどありませんが,正射影はしばしば登場します。

例題

正射影ベクトルの例題

三角形 OABOAB において OA=3,OB=4,OAundefinedOBundefined=7OA=3,\:OB=4,\:\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OB}=7 とする。また,BB から OAOA に下ろした垂線の足を PP とおく。このとき OPundefined\overrightarrow{OP}OAundefined\overrightarrow{OA} を使って表せ。

解答

正射影ベクトルの公式より,OPundefined=732OAundefined\overrightarrow{OP}=\dfrac{7}{3^2}\overrightarrow{OA}

正射影と内積

  • aundefined\overrightarrow{a} が定ベクトルのとき,正射影ベクトルの大きさは内積 aundefinedbundefined\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b} に比例します。
  • 一次式 4x+5y4x+5y は定ベクトル (4,5)(4,5)(x,y)(x,y) の内積です。 よって,
    一次式 4x+5y4x+5y を大きくしたい
        \iff (x,y)(x,y)(4,5)(4,5) への正射影ベクトルの大きさを大きくしたい
        \iff できるだけ (4,5)(4,5) の方に進みたい
    と見ることができます。この考え方は領域における一次式の最大化,最小化問題に役立ちます。→領域における最大・最小問題(線形計画法)

「正射影」って専門用語っぽくて敬遠しがちですが,考え方は非常に簡単です。