円に外接する四角形の重要な2つの性質

更新日時 2022/01/15
円に外接する四角形

円に外接する四角形とは,「ある円が存在して4辺ともその円に接する」ような四角形のことです。「内接円が存在する四角形」とも言えます。

円に外接する四角形の例

円に外接する四角形についての2つの定理を紹介します。入試でもときどき出題されます。

円に外接する四角形とは

  • 三角形には必ず内接円が存在しますが,四角形は内接円が存在するとは限りません。

  • 例えば,(正方形でない)長方形は「円に外接する四角形」ではありません。円に外接する四角形の例

  • 一方,ひし型は「円に外接する四角形」です。

円に外接する四角形と対辺の長さの和

定理1

円に外接する四角形 ABCDABCD について, AB+CD=AD+BCAB+CD=AD+BC

円に外接する四角形の最も重要な性質です。定理1自体も重要ですが,導出方法も重要なので覚えておきましょう。

定理1の証明

図のように 44 つの接点を P,Q,R,SP,Q,R,S とおく。

円に外接する四角形の性質

  • AA から円に引いた二本の接線の長さは等しい(→補足)ので,AP=ASAP=AS
  • 同様に BP=BQ,CR=CQ,DR=DSBP=BQ, CR=CQ, DR=DS

以上 44 つの式を足し合わせると,

AP+BP+CR+DR=BQ+CQ+AS+DSAP+BP+CR+DR=BQ+CQ+AS+DS

よって,

AB+CD=BC+ADAB+CD=BC+AD

実は定理1の逆も成立します。つまり凸四角形 ABCDABCDAB+CD=AD+BCAB+CD=AD+BC を満たせば,その四角形はある円に外接します。

補足(前提知識)

接線の長さが等しいことは前提知識として使いました。わからない方は以下をご参照ください。

前提知識

円外の点 AA から引いた2本の接線の接点を P,QP,Q とするとき AP=AQAP=AQ

接線の長さ

証明

円の中心を OO とする。

  • 円の半径より OP=OQOP=OQ
  • 接線より APO=AQO=90\angle APO=\angle AQO=90^{\circ}
  • AOAO は共通の辺

よって,直角三角形で斜辺と他の1辺が等しいので三角形 APOAPOAQOAQO は合同。よって AP=AQAP=AQ

円に外接する四角形の面積

定理2

円に外接する四角形 ABCDABCD について,面積は abcdsinθ1+θ22\sqrt{abcd}\sin\dfrac{\theta_1+\theta_2}{2}

円に外接する四角形

こちらは観賞用の公式です。おもしろいですが,知っていて役立つことはほとんどないでしょう。

証明にはブラーマグプタの公式の一般形であるブレートシュナイダーの公式を使います。

定理2の証明

まず,ブレートシュナイダーの公式に現れる (sa)(s-a) を計算する:

sa=a+b+c+d2=2c2=cs-a=\dfrac{-a+b+c+d}{2}\\ =\dfrac{2c}{2}\\ =c

ただし,変形の途中で定理1を用いた。

同様に,sb=d,sc=a,sd=bs-b=d, s-c=a, s-d=b より,

(sa)(sb)(sc)(sd)=abcd(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)=abcd

よってブレートシュナイダーの公式より,面積 SS は,

S=abcdabcdcos2θ1+θ22=abcdsinθ1+θ22S=\sqrt{abcd-abcd\cos^2\dfrac{\theta_1+\theta_2}{2}}\\ =\sqrt{abcd}\sin\dfrac{\theta_1+\theta_2}{2}

円に外接し内接もする四角形

円に内接かつ外接する四角形

面積公式(定理2)は使えないのは,ブレートシュナイダーの公式が使えない理由と同じく θ1+θ2\theta_1+\theta_2 の値を求めるのが難しいからです。

θ1+θ2\theta_1+\theta_2 が簡単に求まる場合には威力を発揮します。

例えば,円に外接する四角形がさらに別の円に内接する場合,円に内接する四角形の性質より θ1+θ2=180\theta_1+\theta_2=180^{\circ} なので S=abcdS=\sqrt{abcd} となります。

これは覚えるに値する非常に美しい公式ですね!

円に内接して別の円に外接する四角形を描くのに大変苦労しました。