共役無理数に関する二つの定理
を有理数, を平方因子を持たない(同じ素数で2回以上割り切れない) 以上の整数とする。このとき,
と は互いに共役であるという。
共役無理数に関する二つの定理を解説します。
具体例など
具体例など
- と は共役。
- と は共役。
- 型の無理数を二次の無理数と言います。
- のとき, が無理数であることは,背理法で簡単に証明できます( が無理数であることの証明と同様)。
- 「無理数の共役」は「複素数の共役」と非常に似ています。
共役無理数の基本的な性質
共役無理数の基本的な性質
の共役な無理数を と書きます。簡単な計算により以下が分かります。
- 性質1.
- 性質2.
(ただし と の は共通とする)
方程式の解について
方程式の解について
有理数係数多項式=0という方程式に対して が解なら,その共役な無理数 も解である。
「実数係数多項式=0という方程式に対して複素数 が解なら も解である」という定理にかなり似ています。→共役複素数の覚えておくべき性質
証明も複素数の場合と全く同様にできます。上記の性質1と性質2を使います。
有理数係数というのは重要です。実際,係数として無理数を許すと上記の定理は成立しません。
という方程式について, は解だが は解でない。
発展的な話題
発展的な話題
(ただし, は有理数)で数列 を定める。このとき,
難関大の入試でやや頻出です。例えば,ペル方程式の一般解を明示的に書くときに活躍します(→三角数とは,三角数定理,平方数との関係の一番下)。
定理2の二通りの証明を紹介します。
の両辺の共役を取ると,性質1より
ここで,性質2を用いて左辺を計算すると,
となる
美しいですね!
二項定理を用いた証明もあります。
二項定理より,
が偶数のときの項の和が で奇数のときの項の和が である。
一方,
の指数が であることに注意すると, が偶数のときの項の和は と一致し,奇数のときの項の和は と一致することが分かる。
共役無理数と共役複素数は合わせて理解するとよいです。