共役無理数に関する二つの定理

共役無理数

a,ba,b を有理数,kk を平方因子を持たない(同じ素数で2回以上割り切れない)22 以上の整数とする。このとき,

a+bka+b\sqrt{k}abka-b\sqrt{k} は互いに共役であるという。

共役無理数に関する二つの定理を解説します。

具体例など

  • 3+23+\sqrt{2}323-\sqrt{2} は共役。
  • 7\sqrt{7}7-\sqrt{7} は共役。
  • a+bka+b\sqrt{k} 型の無理数を二次の無理数と言います。
  • b0b\neq 0 のとき,a+bka+b\sqrt{k} が無理数であることは,背理法で簡単に証明できます(2\sqrt{2} が無理数であることの証明と同様)。
  • 「無理数の共役」は「複素数の共役」と非常に似ています。

共役無理数の基本的な性質

r=a+bkr=a+b\sqrt{k} の共役な無理数を r=abk\overline{r}=a-b\sqrt{k} と書きます。簡単な計算により以下が分かります。

  • 性質1. r1+r2=r1+r2\overline{r_1+r_2}=\overline{r_1}+\overline{r_2}
  • 性質2. r1r2=r1r2\overline{r_1\cdot r_2}=\overline{r_1}\cdot\overline{r_2}

(ただし r1r_1r2r_2kk は共通とする)

方程式の解について

定理1

有理数係数多項式=0という方程式に対して a+bka+b\sqrt{k} が解なら,その共役な無理数 abka-b\sqrt{k} も解である。

「実数係数多項式=0という方程式に対して複素数 zz が解なら z\overline{z} も解である」という定理にかなり似ています。→共役複素数の覚えておくべき性質

証明も複素数の場合と全く同様にできます。上記の性質1と性質2を使います。

有理数係数というのは重要です。実際,係数として無理数を許すと上記の定理は成立しません。

2x=2\sqrt{2}x=2 という方程式について,2\sqrt{2} は解だが 2-\sqrt{2} は解でない。

発展的な話題

定理2

(a+bk)n=an+bnk(a+b\sqrt{k})^n=a_n+b_n\sqrt{k} (ただし,an,bna_n,b_n は有理数)で数列 an,bna_n,b_n を定める。このとき,(abk)n=anbnk(a-b\sqrt{k})^n=a_n-b_n\sqrt{k}

難関大の入試でやや頻出です。例えば,ペル方程式の一般解を明示的に書くときに活躍します(→三角数とは,三角数定理,平方数との関係の一番下)。

定理2の二通りの証明を紹介します。

証明1

(a+bk)n=an+bnk(a+b\sqrt{k})^n=a_n+b_n\sqrt{k}

の両辺の共役を取ると,性質1より

(a+bk)n=anbnk\overline{(a+b\sqrt{k})^n}=a_n-b_n\sqrt{k}

ここで,性質2を用いて左辺を計算すると,

(a+bk)n=(a+bk)n=(abk)n\overline{(a+b\sqrt{k})^n}=\left(\overline{a+b\sqrt{k}}\right)^n=(a-b\sqrt{k})^n となる

美しいですね!

二項定理を用いた証明もあります。

証明2

二項定理より,(a+bk)n=t=0nnCtant(bk)t(a+b\sqrt{k})^n=\displaystyle\sum_{t=0}^n{}_n\mathrm{C}_ta^{n-t}(b\sqrt{k})^{t}

tt が偶数のときの項の和が ana_n で奇数のときの項の和が bnkb_n\sqrt{k} である。

一方,

(abk)n=t=0nnCtant(bk)t(a-b\sqrt{k})^n=\displaystyle\sum_{t=0}^n{}_n\mathrm{C}_ta^{n-t}(-b\sqrt{k})^{t}

(1)(-1) の指数が tt であることに注意すると,tt が偶数のときの項の和は ana_n と一致し,奇数のときの項の和は bnk-b_n\sqrt{k} と一致することが分かる。

共役無理数と共役複素数は合わせて理解するとよいです。