調和点列の様々な定義と具体例

調和点列

同一直線上に四点 A,P,B,QA,\:P,\:B,\:Q がこの順にあるとき,

1:AP:PB=AQ:QBAP:PB=AQ:QB (線分 ABAB を同じ比で内分する点 PP と外分する点 QQ)

ならば四点 A,P,B,QA,\:P,\:B,\:Q を調和点列と言う。

調和点列の考え方は知っていると数オリでしばしば役立ちます。調和点列を使いこなすための基本的な知識を整理しました。

調和点列の同値な定義

調和点列には同値な言い換えがたくさんあります。以下の条件は全て A,P,B,QA,\:P,\:B,\:Q が調和点列であるための必要十分条件です。

2: AP×BQBP×AQ=1\dfrac{AP\times BQ}{BP\times AQ}=1 (複比が 11

3: PA:PB=QA:QBPA:PB=QA:QB (線分 PQPQ を同じ比で内分する点 BB と外分する点 AA )

これらが条件1と同値であることは自明ですが,場面に応じて都合がよいものを使いましょう。

4: 2AB=1AP+1AQ\dfrac{2}{AB}=\dfrac{1}{AP}+\dfrac{1}{AQ}

5: PQPQ の中点を MM とすると AM×AB=AP×AQAM\times AB=AP\times AQ

4は AP,AB,AQAP,\:AB,\:AQ が調和数列(逆数が等差数列)であることを表しています。調和点列と呼ばれるゆえんです。

5は調和点列であることの証明にときどき使えます。

4と5を証明しておきます。

AP=p,AB=b,AQ=qAP=p,\:AB=b,\:AQ=q とおくと,調和点列である条件は,2より,p(qb)=q(bp)p(q-b)=q(b-p) であり,これを変形すると 2b=1p+1q\dfrac{2}{b}=\dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q} となることから4が証明されます。

また,(p+q2)b=pq\left(\dfrac{p+q}{2}\right)b=pq とも変形できることから5が導かれます。

6: ABAB を直径とする円に関する反転で PPQQ にうつり QQPP にうつる。

調和点列は反転と非常に相性がよいです(反転を知らない人はスルーしてください)。

調和点列の具体例1(三角形と直線)

調和点列の具体例

三角形と直線を組み合わせた図のような構図には調和点列が潜んでいます。

主張1:A,P,B,QA,\:P,\:B,\:Q は調和点列

主張2:QQ と赤い三点も調和点列

証明

チェバの定理とメネラウスの定理を組み合わせると簡単に証明できる。

チェバの定理より,

CXXAAPPBBYYC=1\dfrac{CX}{XA}\dfrac{AP}{PB}\dfrac{BY}{YC}=1

メネラウスの定理より,

CXXAAQQBBYYC=1\dfrac{CX}{XA}\dfrac{AQ}{QB}\dfrac{BY}{YC}=1

以上二式を辺々割り算すると,AP×BQBP×AQ=1\dfrac{AP\times BQ}{BP\times AQ}=1 となり主張1を得る。

また,この結果と複比の不変定理→複比の定義と複比が不変であることの証明より主張2が証明される。

調和点列の具体例2(極線)

調和点列と極線

AA を通り円 CC と二点 P,QP,Q で交わるような直線と AA に関する CC の極線が BB で交わっている。このとき,A,P,B,QA,\:P,\:B,\:Q は調和点列。

証明は,極線の方程式の証明と応用を参照して下さい。

調和点列の具体例3

三角形 ABCABC の辺 BCBC 上に四点 X,P,Y,QX,\:P,\:Y,\:Q を以下のように取るとこれらは調和点列。

XXAA から下ろした垂線の足

YYA\angle A の二等分線との交点

PP :内接円との接点

QQAA と反対側にある傍接円との接点

簡単な計算で証明できます。よい練習問題にどうぞ。

調和点列は意外といろいろなところに潜んでいます。