複比の定義と複比が不変であることの証明
同一直線上の四点 に対して複比を,
と定義する。
複比について,図形問題への応用を意識しつつわかりやすく説明します。
複比について
複比について
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複比とは,文字通り「比の比」です。同一直線上の四点以外にも様々な複比が定義されますが,ここでは同一直線上の四点に関してのみ考えます。また,ここでは線分の長さの符号(線分の向き)は考えません。
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の順番に並んでいる場合が重要です。このとき複比は, 「線分 を基準と見て, がいくらに内分するのか(→ ), がいくらに外分するのか(→ ),の比」とみなせます。
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実は,役割を入れ替えて,「線分 を基準と見て, がいくらに外分するのか(→ ), がいくらに内分するのか(→ ),の比」と見ることもできます。
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以上により,複比は「四点により定義される」というよりも 「二点のペア二つ」により定義されると考えるとよいでしょう。
調和点列との関係
調和点列との関係
複比が となるような四点を調和点列と言います。
複比が というのは,内分比と外分比が等しいということです。このような構図は頻出です。→調和点列の様々な定義と具体例
数学オリンピックの図形問題では,調和点列について知っていると有利になることがあります。ただし「複比」をそのまま使う場面はほとんどない気がします。
複比が不変であることの証明1
複比が不変であることの証明1
複比に関する著しい定理です。
から伸びる四本の半直線がある。別の直線 がこれらの半直線と で交わるとする。このとき,複比 は の取り方によらない。
つまり,図において が成立します。この定理により
「 が調和点列⇔ が調和点列」が分かります。
三角形の面積比に注目して複比の不変性を証明します!
三角形 と三角形 の面積比を二通りで表すことにより,
同様に,三角形 と三角形 の面積比を二通りで表すことにより,
よって,複比は
この値は半直線たちのなす角のみで決まるので の取り方によらない!
複比が不変であることの証明2
複比が不変であることの証明2
三角形の相似を用いても複比の不変性を証明できます。
を通り と平行な直線と の交点をそれぞれ とおく。
すると,
よって,複比は
これが の取り方によらないことを証明すればよい。
を変化させたときに がどう変化するか考える。 は の長さにのみ依存し, の長さに比例するので,定数 を用いて と書ける。
同様に,定数 を用いて とおける。
よって, となり の取り方によらない。
複比の不変性のおもしろい応用例は,デザルグの定理とその三通りの証明 の証明2をどうぞ。
私は証明1の方が好きですが証明2もなかなか美しいです。