トレミーの不等式の証明と例題
任意の四角形 において, が成立する。等号成立条件は,四角形 が円に内接する四角形であること。
円に内接する四角形の場合,不等式が等号で成立し,トレミーの不等式はトレミーの定理と一致します。つまり,トレミーの不等式はトレミーの定理の一般化です。
「三角不等式の四角形バージョンのようなもの」とも言えます。
このページでは,トレミーの不等式の証明と応用例(国際数学オリンピック1997年Shortlistの問題)を紹介します。
トレミーの不等式の証明
トレミーの不等式の応用例
トレミーの不等式の証明
有名な方法です。
を評価するために,辺 と辺 を含む相似な三角形を強引に作ります。トレミーの不等式を未知としたときに使えそうな幾何不等式は三角不等式だけです。
三角形 と三角形 が相似になるように点 を取ると,
また,2辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので三角形 と三角形 も相似である。
よって, が成立する。
以上2つの等式から, となる。これと,三角不等式 よりトレミーの不等式が示された。
また,等号成立条件は, が一直線上にあることで,これは円周角の定理および円周角の定理の逆から が同一円周上にあるという条件と同値です。
トレミーの不等式の応用例
IMO 1997 Shortlist の問題です。
へこんでいない(凸な)六角形 において, が成立するとき,以下の不等式を証明せよ。
幾何不等式の問題は多くの場合三角不等式かトレミーの不等式が有効です。分数3つの和が 以下という不等式を見てNesbittの不等式が連想できるとよいです。すると, という形の不等式を作れると嬉しそうです。
四角形 にトレミーの不等式を用いる。
より, である。同様に,四角形 , にもトレミーの不等式を用いて以下の不等式を得る。
以上3つの不等式を加える。
この右辺はNesbittの不等式より, 以上であることが分かる。
幾何不等式は図形と不等式の両方の洞察力が必要になるから難しいです。
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