Klamkinの不等式

Klamkinの不等式

x,y,zx,\:y,\:z と非負整数 nn ,三角形の内角 A,B,CA,\:B,\:C に対して以下の不等式が成立する。 x2+y2+z22(1)n+1(yzcosnA+zxcosnB+xycosnC)x^2+y^2+z^2\geq 2(-1)^{n+1} (yz\cos nA+zx\cos nB+xy\cos nC) 等号成立条件は,sinnA,sinnB,sinnC\sin nA,\:\sin nB,\:\sin nC がいずれも 00 でないもとで, xsinnA=ysinnB=zsinnC\dfrac{x}{\sin nA}=\dfrac{y}{\sin nB}=\dfrac{z}{\sin nC} である。

証明が簡単なわりに重要な結果を含んでいる素晴らしい不等式です。

Klamkinの不等式の例

  • n=0n=0 のとき,(x+y+z)20(x+y+z)^2\geq 0 と同値です。

  • n=1n=1 のとき,x2+y2+z22(yzcosA+zxcosB+xycosC)x^2+y^2+z^2\geq 2(yz\cos A+zx\cos B+xy\cos C) これはエルデスモーデルの不等式の証明の途中で必要になる不等式です!

  • x=y=z,n=2x=y=z,\:n=2 のとき, cos2A+cos2B+cos2C32\cos 2A+\cos 2B+\cos 2C\geq -\dfrac{3}{2} これは,ライプニッツの不等式の証明3の途中で必要となる不等式です!

  • 以上のような対称な不等式なら他の方法でも証明できそうですが,x,y,zx,\:y,\:z に異なる値を入れることで非対称な不等式をも作り出せます。

Klamkinの不等式の証明

平方完成と加法定理を使うことで比較的簡単に証明できます。

証明

全て左辺に移項して xx について平方完成すると,

{x+(1)n(ycosnC+zcosnB)}2+y2sin2nC+z2sin2nB+2(1)nyzcosnA2yzcosnCcosnB0 \{x+(-1)^n(y\cos nC+z\cos nB)\}^2 +y^2\sin^2nC+z^2\sin^2nB\\ +2(-1)^nyz\cos nA-2yz\cos nC\cos nB\geq 0

となる。あとは二行目と三行目の和が非負であることを示せばよい。

  • nn が奇数のとき, cosnA=cos(nB+nC)=cosnBcosnC+sinnBsinnC\begin{aligned} \cos nA &=-\cos(nB+nC)\\ &=-\cos nB\cos nC+\sin nB\sin nC \end{aligned} となる。

  • nn が偶数のとき,
    cosnA=cos(nB+nC)=cosnBcosnCsinnBsinnC\begin{aligned} \cos nA &=\cos(nB+nC)\\ &=\cos nB\cos nC-\sin nB\sin nC \end{aligned}

に注意すると,上式の下二行はいずれの場合も (ysinnCzsinnB)2(y\sin nC-z\sin nB)^2 となるのでOK。

等号成立条件は, ysinnC=zsinnBy\sin nC=z\sin nB かつ x+(1)n(ycosnC+zcosnB)=0x+(-1)^n(y\cos nC+z\cos nB)=0

ここで,sinnB0\sin nB\neq 0 のときは二つ目は以下と同値である。

xsinnB=(1)n+1(ysinnBcosnC+zsinnBcosnB) x\sin nB=(-1)^{n+1} (y\sin nB\cos nC+z\sin nB\cos nB)

これに一つめの条件と加法定理を使うと,

xsinnB=(1)n+1ysin(nB+nC)=ysinnA x\sin nB=(-1)^{n+1}y\sin (nB+nC)=y\sin nA を得る。

なお,sinnA,sinnB,sinnC\sin nA,\:\sin nB,\:\sin nC のいずれかが 00 のときは等号成立条件が少し複雑になりますが,そのような特殊な場合の等号成立条件も考えたい場合は上記の赤い式まで戻ればよいです。

参考文献

M. S. Klamkin, Asymmetric Triangle Inequalities [1971]

既知の結果を含む,より一般的な定理を見つけるとわくわくします。

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