期待値と分散に関する公式一覧

期待値と分散に関して覚えておくべき公式を整理しました。

期待値,分散の定義

まずは期待値・分散の定義および表記を確認します。

X=xiX=x_i となる確率が pip_i であるような確率変数 XX を考えます。例えば,サイコロの場合 n=6,xi=i,pi=16(i=1,,6)n=6, x_i=i,p_i=\dfrac{1}{6} \:(i=1,\cdots ,6) です。

期待値の定義

以下の式で定義される E[X]E[X] を期待値と言う:

E[X]=i=1npixiE[X]=\displaystyle\sum_{i=1}^np_ix_i

期待値(平均)は μX\mu_Xμ\mu と書くこともあります。

分散の定義

以下の式で定義される V[X]V[X] を分散と言う:

V[X]=E[(XμX)2]=i=1npi(xiμx)2V[X]=E[(X-\mu_X)^2]=\displaystyle\sum_{i=1}^np_i(x_i-\mu_x)^2

分散は Var[X]\mathrm{Var}[X]σ2\sigma^2 と書くこともあります。確率変数の散らばり具合を表します。

分散についての基本的なことは分散の意味と2通りの求め方・計算例を参照して下さい。

確率変数のとりうる値が連続的な場合はシグマが積分になるだけでそれ以外は離散の場合と同様です。

期待値に関する公式

期待値に関して覚えておくべき公式です。

1:E[aX]=aE[X]E[aX]=aE[X]

2:E[X+a]=E[X]+aE[X+a]=E[X]+a

3:E[X+Y]=E[X]+E[Y]E[X+Y]=E[X]+E[Y]

4:XXYY が無相関なら,E[XY]=E[X]E[Y]E[XY]=E[X]E[Y]

分散に関する公式

次は分散に関して覚えておくべき公式です。

5:V[aX]=a2V[X]V[aX]=a^2V[X]

6:V[X+a]=V[X]V[X+a]=V[X]

7:XXYY が無相関なら,V[X+Y]=V[X]+V[Y]V[X+Y]=V[X]+V[Y]

8:V[X]=E[X2]E[X]2V[X]=E[X^2]-E[X]^2

  • 公式5について,期待値の場合は定数倍は外に出ましたが,分散は定義に (xiμX)2(x_i-\mu_X)^2 という二乗の式が含まれているので外にだすときに二乗がかかります。
  • 公式6について,分散は散らばり具合を表すので,全体を平行移動しても変わりません。
  • 公式7について,期待値の場合と異なり,和の分散を分散の和に分解できるのは XXYY が無相関なときのみです。なお,独立なら無相関なので,XXYY が独立なときも当然分解できます。独立と無相関の意味と違いについて
  • 公式8は分散を簡単に計算するための公式です。

共分散に関する公式

ついでに共分散に関する公式です。共分散は,二組の対応するデータの間の関係を表す数値です。

Cov(X,Y)=E[(XμX)(YμY)]\mathrm{Cov}(X,Y)=E[(X-\mu_X)(Y-\mu_Y)] で定義されます。

9: Cov(X,Y)=E[XY]E[X]E[Y]\mathrm{Cov}(X,Y)=E[XY]-E[X]E[Y]

10: V[X+Y]=V[X]+V[Y]+2Cov(X,Y)V[X+Y]=V[X]+V[Y]+2\mathrm{Cov}(X,Y)

  • 公式9は共分散を計算するときに役立ちます(定義に従って計算するよりも楽)。→共分散の意味と簡単な求め方

  • 公式9を使うと,公式4はXXYY が無相関なときに共分散 Cov(X,Y)\mathrm{Cov}(X,Y)00 となる」と言い換えることができます。

  • 公式10は (x+y)2=x2+y2+2xy(x+y)^2=x^2+y^2+2xy という恒等式に対応していることを意識すれば覚えやすいです。

  • 公式10は公式7の一般化です。 XXYY が無相関であるとき,共分散は 00 なので二つの公式は一致します。

投資理論などでは期待値を高く,分散を小さくすることを目指す場合が多いです。

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