最大値・最小値の定理
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有界閉区間 上の連続関数 は,最大値・最小値を取る。
最大値・最小値の定理は ロルの定理 の証明など,微分積分の様々なところに顔を出します。
この記事では,最大値・最小値の定理の証明を味わっていきます。
証明のステップ
証明のステップ
最大値を取ることさえ示せば, を考えることで最小値を取ることも従います。そこで,最大値だけ示します。
次のような3つのステップで,最大値を取ることの証明をします。
- が 上で有界であることを示す。
- が の上限に収束するような数列 を取る。
- その上限が最大値であることを示す。
準備
準備
証明の前に,証明で使う定理・命題を紹介します。
数列の極限と閉集合の関係
極限 となる数列 を取る。
任意の に対して であるとき, である。
一見当たり前ですが,実は非自明です。
命題のミソは,数列が閉区間に含まれることです。実際 の部分が開区間 になると,命題は成立しません。
として とおく。
, より,各 に対して となる。
一方 である。
それでは証明です。イプシロンエヌ論法 のよい練習問題です。
と仮定する。 を考える( の場合も同様)。
このとき となる。 とおくと,ある自然数 があって ならば となる。
不等式を変形すると となるため となる。よって となって条件 に反する。
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理
実数列 が有界であるとき, は収束する部分列を持つ。
証明は以下の記事を見てください。
→ ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理
ステップ1
ステップ1
ステップ1で の有界性を示します。有界ではないと仮定すると, はいくらでも大きな値を取ります。その事実を数列に落とし込みましょう。
が有界でないと仮定する。
このとき任意の自然数 に対して となる が存在する。
こうして得られた数列 に対して,ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理 を適用することで,収束する部分列 を取ることができる。このときの収束値を とすると,各 は閉集合 に含まれるため, となる。
の連続性より である。しかしこれは が で不連続であることを意味し,条件に反する。よって は有界である。
閉区間の仮定を外した反例
は で連続ですが,有界になりません。
ステップ2
ステップ2
ステップ2の証明に移ります。有界とは何か~上界・上限と下界・下限 で紹介した上限を使います。
「 が 上の関数 の上限である」とは, が の上限であることを表す。つまり,以下の2つを満たすことと同値:
- 任意の に対して
- を任意に取ったとき,ある があって となる。
の上限を とおく。
上限の性質1から である。
上限の性質2から を取ったとき, となる を取ることができる。
こうして不等式 を得る。はさみうちの原理から となる。
ステップ3
ステップ3
ここで再びボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を用いましょう。
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理から は収束する部分列を持つ。これを とおき,収束値を とおく。
は の部分列であるため である。 の連続性から である。よって となる。
より である。
よって の元 で は最大値 を取る。
展望
展望
まったく同じ論理によって次の定理が示されます。
を の有界閉集合として を 上の実数値連続関数とする。
このとき は最大値・最小値を取る。
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理の記事で コンパクト集合 を紹介しました。最大値・最小値の定理に登場する閉区間 や 有界閉集合 はコンパクト集合の例です。
実は,次のような一般化があります。
コンパクト集合から への連続関数は最大値・最小値を取る。
詳しくは集合・位相の教科書を参照してみてください。
若干長い証明でしたが,各ステップはシンプルで美しいものでしたね。