東大数学(図形問題)のポイントと例題

  • 難関大の図形問題は「どの道具を使って解答するか」から考える必要があることも。
  • 昔の東大入試では簡単な問題も出題されている。

東大の問題とその解説を通じて「図形問題における道具選び」について考えます。

問題

東大1961前期第4問(文理共通問題)です。

問題

東大1961第4問

三角形 ABCABC の各辺 BC,CA,ABBC,CA,AB 上にそれぞれ L,M,NL,M,N を,BLLC=CMMA=ANNB=12\dfrac{BL}{LC}=\dfrac{CM}{MA}=\dfrac{AN}{NB}=\dfrac{1}{2} となるように取る。 ALALCNCN の交点を PPALALBMBM の交点を QQBMBMCNCN の交点を RR とするとき三角形 PQRPQR と三角形 ABCABC の面積比を求めよ。

50年以上も前の問題です!今の東大受験者ならほぼ確実に解けるであろう基本的な問題です。

図形的な考察による解法

まずはメネラウスの定理(→メネラウスの定理の覚え方と拡張)を用いた解法です。

AP:PQ:QLAP:PQ:QL を求めるのが第一の目標です。そうすれば対称性より他の線分比も分かり,面積比が計算できます。

解答1

メネラウスの定理より,

ANNBBCCLLPPA=1\dfrac{AN}{NB}\dfrac{BC}{CL}\dfrac{LP}{PA}=1

よって,3LP=4PA3LP=4PA

メネラウスの定理による解法

再びメネラウスの定理より

AMMCCBBLLQQA=1\dfrac{AM}{MC}\dfrac{CB}{BL}\dfrac{LQ}{QA}=1

よって,6LQ=QA6LQ=QA

この二つの式から AP:PQ:QL=3:3:1AP:PQ:QL=3:3:1 が分かる。(→補足)

対称性から CR:RP:PN=3:3:1CR:RP:PN=3:3:1 なども分かる。

辺の比が分かったので,三角形と面積比の関係を駆使して ABCABC の面積から PQRPQR の面積を作り出す。

23ABC=ALC\frac{2}{3}|ABC|=|ALC|

37ALC=PQC\frac{3}{7}|ALC|=|PQC|

12PQC=PQR\frac{1}{2}|PQC|=|PQR|

以上3つの式を辺々かけ合わせると ABC=7PQR|ABC|=7|PQR| を得る。

補足: AP:PQ:QL=1:a:bAP:PQ:QL=1:a:b とおくと,二つの式から 3(a+b)=43(a+b)=46b=1+a6b=1+a となり,これを解くと a=1,b=13a=1,b=\frac{1}{3} を得る。

注:「辺の比が分かれば面積比が分かる」という考え方は重要です。→三角形の面積比にまつわる公式たち

ベクトルによる解法

次はベクトルを使って機械的な計算で求める方法です。

解答1と同じく AP:PQ:QLAP:PQ:QL を求めに行きます。

解答2

AB=bundefinedAB=\overrightarrow{b}AC=cundefinedAC=\overrightarrow{c} とおき,この二本のベクトルで全てを表していく。

東大1961第4問

まず,ANundefined=13bundefined\overrightarrow{AN}=\dfrac{1}{3}\overrightarrow{b} であり,

PPNCNC 上にあるので(NP:PC=s:1sNP:PC=s:1-s とすると),

APundefined=(1s)bundefined3+scundefined\overrightarrow{AP}=(1-s)\dfrac{\overrightarrow{b}}{3}+s\overrightarrow{c} と書ける。

これと,A,P,LA,P,L が一直線上にあることから 1s3:s=2:1\dfrac{1-s}{3}:s=2:1

これを解くと s=17s=\dfrac{1}{7} となり,NP:PC=1:6NP:PC=1:6 を得る。

同じことを QQ について行う(QQBMBM 上にあり,A,Q,LA,Q,L が一直線上にあることを利用)と BQ:QM=3:4BQ:QM=3:4 を得る。

この二つの情報と対称性より AP:PQ:QL=3:3:1AP:PQ:QL=3:3:1 を得る。

以下解答1と同様。

直交座標で計算

直交座標を設定しても機械的な計算で解答できますが,この問題の場合計算がわりと複雑になってしまいます。根性がある人はやってみてください。

各道具の特徴

(数学オリンピックはもちろんのこと)東大,京大をはじめ,難関大の図形問題はどの道具(図形的な考察orベクトルor座標)を使うのかが不明で自由度が高い問題も出題されます。

したがって,各道具の特徴を知り,問題に合わせて適切に選択する能力も必要になります。

各道具の特徴

図形的な考察:角度の情報に強い,ひらめきが必要な場合が多い,美しい&速い解法が多い

ベクトル:辺の比,平行,中点などの条件に強い,機械的な計算で突破できる,円に弱い,角度の条件に弱い

直交座標:直角に強い,機械的な計算で突破できる,気合いと根性が必要

直交座標は泥臭いので嫌われることが多いですが,私は好きです。

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