ニュートンの不等式の具体例

ニュートン(Newton)の不等式

nn 変数の kk 次の基本対称式を S(n,k)S(n,k) とおき,d(n,k)=S(n,k)nCkd(n,k)=\dfrac{S(n,k)}{{}_n\mathrm{C}_{k}} とおく。

このとき,d(n,k)2d(n,k1)  d(n,k+1)d(n,k)^2\geq d(n,k-1)\; d(n,k+1) である。

等号成立条件は全ての変数の値が等しいことです。

一般的な不等式で分かりにくいので具体例を見ていくことで理解を深めます。

2変数の場合のニュートンの不等式

まずは n=2n=2 の場合について考えます。

基本対称式を書き出すと,

S(2,0)=1,S(2,1)=a+b,S(2,2)=ab S(2,0)=1,S(2,1)=a+b,S(2,2)=ab

よって, d(2,0)=1,d(2,1)=a+b2,d(2,2)=ab d(2,0)=1,d(2,1)=\dfrac{a+b}{2},d(2,2)=ab

ニュートンの不等式は k=1k=1 の場合にのみ意味を持ちます。すなわち (a+b2)2ab\left(\dfrac{a+b}{2}\right)^2\geq ab となり相加相乗平均の不等式と一致します。

3変数の場合のニュートンの不等式

次に n=3n=3 の場合について考えます。

さきほどと同様に d(3,k)d(3,k) を書き出すと, d(3,0)=1d(3,0)=1d(3,1)=a+b+c3d(3,1)=\dfrac{a+b+c}{3}d(3,2)=ab+bc+ca3d(3,2)=\dfrac{ab+bc+ca}{3}d(3,3)=abcd(3,3)=abc である。

ニュートンの不等式は k=1,2k=1,2 の場合に意味を持つ。

  • k=1k=1 の場合 (a+b+c3)2ab+bc+ca3\left(\dfrac{a+b+c}{3}\right)^2\geq \dfrac{ab+bc+ca}{3} これは展開して整理すると,a2+b2+c2ab+bc+caa^2+b^2+c^2\geq ab+bc+ca となります。 →有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caのいろいろな証明

  • k=2k=2 の場合 (ab+bc+ca3)213abc(a+b+c)\left(\dfrac{ab+bc+ca}{3}\right)^2\geq \dfrac{1}{3}abc(a+b+c) これは展開して整理すると,a2b2+b2c2+c2a2a2bc+ab2c+abc2a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2\geq a^2bc+ab^2c+abc^2 となり,Muirheadの不等式と一致します。([2,2,0][2,1,1][2,2,0]\succeq[2,1,1]

ニュートンの不等式の証明

上記の具体例で確認したように,Newtonの不等式は多くの有名不等式と関係しています。

そして4変数以上の場合にはより複雑になり,一般的な証明はわりと難しくなります。

・並べ替え不等式を用いたニュートンの不等式の証明を(英語のサイトですが)発見しました。ニュートンの不等式の証明

・Muirheadの不等式を用いることで証明できそうな気がする(n4n\leq 4 の場合は証明できた)のですが一般の場合はかなり複雑でまだ証明できていません。

追記:重み付き相加相乗平均の不等式を使えばできるらしいです。

ニュートンの不等式の簡潔な証明を発見した方はご一報ください。