n変数の不等式証明のテクニック
数学オリンピックの不等式証明問題は 変数のものとn変数のものがほとんどです。
n変数の不等式証明
n変数の不等式証明
n変数の場合には3変数の場合に使える様々なテクニックが使えません。
この記事ではn変数の不等式を 「数列の積の和とみなす」ことによって証明するテクニックを紹介します。
数列の積の和とみなすことで,並べ替え不等式,チェビシェフの不等式,アーベルの総和公式などが使えます。
数オリの問題に挑戦
数オリの問題に挑戦
1975年の国際数学オリンピックブルガリア大会の第1問です。数オリの問題の中ではかなり簡単な問題です。
実数 が かつ, を満たすとする。
の任意の置換(並べ替え) に対して以下の不等式が成立することを証明せよ。
とりあえず展開してみると「数列の積の和」が出現します。並べ替え不等式で一発です。
に注意して展開すると示すべき不等式は以下のようになる。
これは並べ替え不等式そのもの。
数オリの問題に挑戦part2
数オリの問題に挑戦part2
1978年国際数学オリンピックルーマニア大会の第5問です。
は全ての項が自然数で全て異なる数列とする。このとき以下の不等式を証明せよ。
左辺を数列の積の和と見ます。右辺は定数なので左辺の最小値を評価してやればよいわけです。 は減少数列なので,左辺は が増加数列のときに値が小さくなります。
を固定して左辺がどのようなときに最小になるか考える。並べ替え不等式より, が増加数列のときだけを考えればよい。(そうでないときは並べ替えによって値をより小さくできる)よって,左辺が最小になるのは のときで,そのときの値は右辺と一致する。
アーベルの総和公式を用いた別解も紹介しておきます。
アーベルの総和公式は「数列の積の和」を評価するのに使えます。 の評価以外は全て等式変形で証明できます。
とおくと, であり,アーベルの総和公式より,
である。
n変数の不等式だからといって必ずしも難問とは限りません。
Tag:国際数学オリンピックの過去問