アーベルの総和公式とその意味
ただし,
アーベルの変形公式,アーベルの変形法,Abel transformationなどとも呼ばれます。
アーベルの総和公式の具体例
アーベルの総和公式の具体例
アーベルの総和公式 はパッと見ただけではイメージがつかみにくいです。そこで,まずは が小さい場合を具体的に書き下してみます。
- 左辺は
- 右辺は
- 左辺は
- 右辺は
- 左辺は
- 右辺は
右辺の項同士がうまく打ち消し合って確かに恒等式となっていることが分かります。
2通りの証明
2通りの証明
具体例が確認できたところで,次はアーベルの総和公式の証明です。2通り紹介します。
に注意すると,アーベルの総和公式の左辺は,
※この方法は数列 の各項が正の場合にのみ通用します。
簡単のため の場合について説明します。一般の場合も同様です。
図において, は小さい長方形の横幅を, は下から 個分の長方形の縦幅の和を表しています。
アーベルの総和公式
において,
- 左辺は水色の部分の面積
- 右辺第一項は大きい長方形全体の面積
- 右辺第二項は黄色の面積
を表すので確かに成立しています。
部分積分との関係
部分積分との関係
実は,アーベルの総和公式は「部分積分を離散化したもの」とみなせます。
以下は大雑把な議論で数学的に厳密ではありませんが,部分積分との対応を考えるとアーベルの総和公式をイメージしやすいです。
部分積分の公式:
(ただし, は の微分)
に対して「離散化」する。すなわち,積分はシグマに,微分は差分にする:
(離散化するときの積分区間が少し不自然だが)これはアーベルの総和公式になっている:
部分積分は, が積分しにくいときに の積分に帰着させる公式でした。
同様に,アーベルの総和公式は 数列の積 の和が計算しにくいときに の和と の差分で評価する式とみなせます。
アーベルの不等式
アーベルの不等式
アーベルの総和公式には多数の応用があります。例えば,n変数の不等式証明のテクニック や,karamataの不等式 の証明などがあります。以下では応用例の1つとしてアーベルの不等式を紹介します。
および に対して
が成立するとき,
アーベルの総和公式
において, を に置き換えたものがアーベルの不等式の最左辺,最右辺になっている。
最初見た時はひるむような式ですが,イメージが分かればたいしたことありません。