シムソンの定理の証明を考えます。さきほどの特殊で自明な場合を除くと,対称性より
D
が弧
CE
(の内点)にある場合のみ考えればOKです。このとき,CE
と
PD
は平行なので
P
は円の外側にあり,AE
と
RD
は平行なので
R
は円の内側にあります。
ついでに以下のシムソンの定理の逆も証明します。
シムソンの定理の逆
上記の設定において
P,Q,R
が同一直線上にあるなら
D
は三角形
ABC
の外接円上にある。
証明1:図形的な方法
方針
直角二つで同一円周上の4点が作られることに注目します。シムソンの定理の条件を言い換えて定理と逆を同時に証明します。
証明
まず,
D が三角形
ABC の外接円上にある
⟺∠BCD+∠BAD=180∘
である。
また,
P,Q,R が同一直線上にある
⟺∠PQD+∠RQD=180∘
である。
この2つが互いに必要十分条件であることを言えばよい。
円周角の定理の逆より
A,D,Q,R は同一円周上にあるので,∠BAD+∠RQD=180∘ である。
同様に
P,D,Q,C は同一円周上にあるので,∠PQD=∠PCD=180∘−∠BCD
である。
以上2つの式より,
∠BCD+∠BAD+∠PQD+∠RQD=360∘
となり証明完了。
証明2:複素数平面による方法
計算を使えば場合分けは不要です。直交座標では同一円周上にあるという条件が扱いにくいので複素数平面で考えます。複素数平面に慣れていないと多少計算に苦労しますが,やるべきことはは一本道です。
証明
三角形 ABC の外接円の半径は 1 としても一般性を失わない。
A(α),B(β),C(γ),D(δ) とおく。
α=α1,β=β1,γ=γ1 に注意する。
D から
BC に下ろした垂線の足
P の複素座標は,
p=21(β+γ+δ−βγδ)
である。(注)
同様に,Q の座標は,
q=21(γ+α+δ−γαδ)
R の座標は,
r=21(α+β+δ−αβδ)
よって,
p−q=21(β−α)(1−γδ)q−r=21(γ−β)(1−αδ)
したがって,
P,Q,R が同一直線上にある
⟺q−rp−q が実数
⟺(p−q)(q−r)=(q−r)(p−q)<bt>
⟺(β−α)(1−γδ)(γ−β)(1−αδ)=(γ−β)(1−αδ)(β−α)(1−γδ) ⋯(∗)
ここで,γ−β=γ1−β1=βγγ−β
などに注意して両辺を適当に割り算すると,
上記の条件 (∗)
⟺α(1−γδ)(1−αδ)=γ(1−αδ)(1−γδ)
⟺(1−γδ)(α−δ)=(1−αδ)(γ−δ)
⟺(α−γ)(1−δδ)=0
⟺∣δ∣=1
となり証明完了。
注の部分は基本的な計算で確認できます。補題として覚えておくとよいでしょう。詳しくは,複素数平面の基本的な公式集をご覧ください。
図形的な証明の方が美しいですが,計算による証明の方が機械的です。どちらも強くなりたいものです。