数学オリンピック対策問題(不等式)
非負実数 に対して
を証明せよ。
「相加平均たちの相乗平均」と「相乗平均たちの相加平均」を比較した美しい不等式です。
良い練習問題です,数オリ対策にどうぞ。
不等式証明の方針
不等式証明の方針
三変数対称斉次式なので様々な方法が考えられますが,以下では,
-
方針1:気合いでルートを外してMuirheadとSchurの不等式を用いる方法
-
方針2:仲介役を挟む方法
をそれぞれ解説します。
方針1は数学オリンピック界隈では「bunching」と呼ばれる有名な手法です。ぜひマスターしておきましょう。
表記簡略化のために bunching 特有の記号を用いるので,Muirhead の不等式を知らない方は Muirheadの不等式と具体例 を参照してください。シグマの下に とかついてて見た目はゴツイですが,内容は難しくありません!
方針2は普通は思いつかないような方法なので,観賞用にどうぞ。
方針1:bunchingによる証明
方針1:bunchingによる証明
とおいて両辺三乗すると根号が外れる:
示すべき不等式を気合いで展開する:
ここまでは機械的な計算。基本はMuirheadの不等式 「偏っている方が大きい」で評価したいが,偏っていない が大きい側にいて厄介なのでSchurの不等式を用いて救出する。
の両辺を 倍すると,
となる。よって,示すべき不等式と比較して,残った部分:
を示せば良い。
これは が最も偏っているのでMuirheadの不等式からただちに成立する( という3つの不等式を足し合わせる)。
気合いで展開する部分については対称式を素早く正確に展開する3つのコツもどうぞ。
方針2:仲介役を挟むエレガントな証明
方針2:仲介役を挟むエレガントな証明
左辺と右辺の間に仲介役 をはさみます。
すると,以下のように3つの不等式が成立して万事がうまくいきます。
-
左側:
-
右側1:
-
右側2:
両辺 倍して展開して整理すると, となり, と のMuirheadの不等式。
とおくと, を示せば良いが,これは展開して整理すると, と同値なので成立する。
右側の2つの不等式をかけわせて両辺 で割ることによって
が分かり,左側と合わせて目標の不等式を得ます。
bunching 楽しいです!