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数学オリンピック対策問題(不等式)

更新日時 2021/03/07
問題

非負実数 a,b,ca,b,c に対して

(a+b2)(b+c2)(c+a2)3ab+bc+ca3\sqrt[3]{\left(\dfrac{a+b}{2}\right)\left(\dfrac{b+c}{2}\right)\left(\dfrac{c+a}{2}\right)}\\ \geq\dfrac{\sqrt{ab}+\sqrt{bc}+\sqrt{ca}}{3}

を証明せよ。

「相加平均たちの相乗平均」と「相乗平均たちの相加平均」を比較した美しい不等式です。

良い練習問題です,数オリ対策にどうぞ。

目次
  • 不等式証明の方針

  • 方針1:bunchingによる証明

  • 方針2:仲介役を挟むエレガントな証明

不等式証明の方針

三変数対称斉次式なので様々な方法が考えられますが,以下では,

  • 方針1:気合いでルートを外してMuirheadとSchurの不等式を用いる方法

  • 方針2:仲介役を挟む方法

をそれぞれ解説します。

方針1は数学オリンピック界隈では「bunching」と呼ばれる有名な手法です。ぜひマスターしておきましょう。

表記簡略化のために bunching 特有の記号を用いるので,Muirhead の不等式を知らない方は Muirheadの不等式と具体例 を参照してください。シグマの下に sym\mathrm{sym} とかついてて見た目はゴツイですが,内容は難しくありません!

方針2は普通は思いつかないような方法なので,観賞用にどうぞ。

方針1:bunchingによる証明

証明

a=A2,b=B2,c=C2a=A^2, b=B^2, c=C^2 とおいて両辺三乗すると根号が外れる:

27(A2+B2)(B2+C2)(C2+A2)8(AB+BC+CA)327(A^2+B^2)(B^2+C^2)(C^2+A^2)\\ \geq 8(AB+BC+CA)^3

示すべき不等式を気合いで展開する:

27symA4B2+6A2B2C24symA3B3+24symA3B2C27\displaystyle\sum_{\mathrm{sym}}A^4B^2+6A^2B^2C^2\\ \geq\displaystyle 4\sum_{\mathrm{sym}}A^3B^3+24\sum_{\mathrm{sym}}A^3B^2C

ここまでは機械的な計算。基本はMuirheadの不等式 「偏っている方が大きい」で評価したいが,偏っていない 6A2B2C26A^2B^2C^2 が大きい側にいて厄介なのでSchurの不等式を用いて救出する:

A3+B3+C3+3ABCsymA2BA^3+B^3+C^3+3ABC\geq \displaystyle\sum_{\mathrm{sym}}A^2B

の両辺を 2ABC2ABC 倍すると,

symA4BC+6A2B2C2sym2A3B2C\displaystyle\sum_{\mathrm{sym}}A^4BC+6A^2B^2C^2\geq \sum_{\mathrm{sym}}2A^3B^2C

よって,示すべき不等式と比較して,残った部分:

27symA4B2 4symA3B3+22symA3B2C+symA4BC27\displaystyle\sum_{\mathrm{sym}}A^4B^2\\ \geq \displaystyle 4\sum_{\mathrm{sym}}A^3B^3+22\sum_{\mathrm{sym}}A^3B^2C+\sum_{\mathrm{sym}}A^4BC

を示せば良い。

これは [4,2,0][4,2,0] が最も偏っているのでMuirheadの不等式からただちに成立する([4,2,0][3,3,0],[3,2,1],[4,1,1][4,2,0]\succeq [3,3,0],[3,2,1],[4,1,1] という3つの不等式を足し合わせる)。

気合いで展開する部分については対称式を素早く正確に展開する3つのコツもどうぞ。

方針2:仲介役を挟むエレガントな証明

左辺と右辺の間に仲介役 (a+b+c)(ab+bc+ca)9\dfrac{(a+b+c)(ab+bc+ca)}{9} をはさみます。

すると,以下のように3つの不等式が成立して万事がうまくいきます。

  • 左側: (a+b)(b+c)(c+a)8(a+b+c)(ab+bc+ca)9\dfrac{(a+b)(b+c)(c+a)}{8}\geq\dfrac{(a+b+c)(ab+bc+ca)}{9}

  • 右側1: a+b+cab+bc+caa+b+c\geq\sqrt{ab}+\sqrt{bc}+\sqrt{ca}

  • 右側2: 3(ab+bc+ca)(ab+bc+ca)23(ab+bc+ca)\geq (\sqrt{ab}+\sqrt{bc}+\sqrt{ca})^2

「左側」の証明

両辺 7272 倍して展開して整理すると,

syma2b6abc\displaystyle\sum_{\mathrm{sym}}a^2b\geq 6abc となり,

[2,1,0][2,1,0][1,1,1][1,1,1] のMuirheadの不等式。

「右側1」の証明

有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caそのもの。

「右側2」の証明

ab=A2,bc=B2,ca=C2ab=A^2, bc=B^2, ca=C^2 とおくと,

3(A2+B2+C2)(A+B+C)23(A^2+B^2+C^2)\geq (A+B+C)^2 を示せば良いが,

これは展開して整理すると,A2+B2+C2AB+BC+CAA^2+B^2+C^2\geq AB+BC+CA

と同値なので成立。

右側の2つの不等式をかけわせて両辺 2727 で割ることによって

(a+b+c)(ab+bc+ca)9(ab+bc+ca3)3\dfrac{(a+b+c)(ab+bc+ca)}{9}\geq \left(\dfrac{\sqrt{ab}+\sqrt{bc}+\sqrt{ca}}{3}\right)^3

が分かり,左側と合わせて目標の不等式を得ます。

bunching 楽しいです!

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