ルモアーヌ点(類似重心)とその性質

ルモアーヌ点

三角形 ABCABC において,類似中線(中線を角の二等分線に関して折り返した直線)は 33 本あるが,それらは 11 点で交わる。

この点をルモアーヌ点(類似重心,Symmedian Point,Lemoine Point)と言う。

なお,

ルモアーヌ点の存在証明

より一般に,以下の定理が成立します。

定理

等角共役点について

三角形 ABCABC と点 PP がある。

角の頂点を通る直線 ll と角の二等分線に関して対称な直線 mmll の等角共役線というが,AP,BP,CPAP,\:BP,\:CP の等角共役線は一点 QQ で交わる。

上の定理において PP を重心とすれば,ルモアーヌ点の存在が分かります(ルモアーヌ点は重心の等角共役点です)。上の定理の証明は等角共役点とその証明を参照してください。

ルモアーヌ点の性質1

本命は後述する性質2です。まずは準備です。

性質1

三角形 ABCABC のルモアーヌ点を LL とする。このとき,

ALB:BLC:CLA=c2:a2:b2|ALB|:|BLC|:|CLA|=c^2:a^2:b^2

ただし,ALB|ALB| は三角形 ALBALB の面積,cc は辺 ABAB の長さ(他も同様)です。

証明はよい練習問題です。ここでは計算でやってみます。

証明

ルモアーヌ点の性質

ALB:ALC=c2:b2|ALB|:|ALC|=c^2:b^2 を示す。 BCBC の中点を MMBAM=CAL=θ\angle BAM=\angle CAL=\theta とおく。

ALB:ALC=csin(Aθ):bsinθ=csinAcosθsinθccosA:b|ALB|:|ALC|\\ =c\sin(A-\theta):b\sin\theta\\ =c\sin A\dfrac{\cos\theta}{\sin\theta}-c\cos A:b

ここで,三角形 AMBAMB に余弦定理および正弦定理を用いると,

cosθsinθ=c2+AM2a242cAM÷asinB2AM=c2+AM2a24acsinB\dfrac{\cos\theta}{\sin\theta}=\dfrac{c^2+AM^2-\frac{a^2}{4}}{2c AM}\div\dfrac{a\sin B}{2AM}\\ =\dfrac{c^2+AM^2-\frac{a^2}{4}}{ac\sin B}

これを上式に代入して整理すると,

ALB:ALC=c2b:b|ALB|:|ALC|=\dfrac{c^2}{b}:b を得る。

ただし,途中で AM2=a2+2b2+2c24AM^2=\dfrac{-a^2+2b^2+2c^2}{4} (中線定理を使えば簡単に導出できる→三角形の五心と頂点までの距離),sinBsinA=ba\dfrac{\sin B}{\sin A}=\dfrac{b}{a}cosA=b2+c2a22bc\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc} を用いる。

ルモアーヌ点の性質2

性質2

三角形 ABCABC 内の点 PP から BC,CA,ABBC,CA,AB に下ろした垂線の長さを dA,dB,dCd_A,d_B,d_C とする。

ルモアーヌ点は dA2+dB2+dC2d_A^2+d_B^2+d_C^2 を最小にするような点 PP である。

証明

ABCABC を3つに分割して考えることにより,

2ABC=adA+bdB+cdC2|ABC|=ad_A+bd_B+cd_C である。よって,シュワルツの不等式より,

(dA2+dB2+dC2)(a2+b2+c2)4ABC2(d_A^2+d_B^2+d_C^2)(a^2+b^2+c^2)\geq 4|ABC|^2

よって(シュワルツの等号成立条件から),dA:dB:dC=a:b:cd_A:d_B:d_C=a:b:c のときに dA2+dB2+dC2d_A^2+d_B^2+d_C^2 は最小となる。実際,ルモアーヌ点は(性質1より)この条件を満たしている!

ルモワーヌという表記も見かけます。

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