複素数平面の基本的な公式集

更新日時 2021/03/07

複素数平面を図形問題へ応用するためには基本的な計算に慣れておく必要があります。以下の公式は当サイトでは断りになしに使っていくので,基本的な計算に困ったり分からない部分があれば確認してみてください。

目次
  • 複素数平面における複素共役の取り扱い

  • 複素数の実数,純虚数条件

  • 複素数平面における平行,垂直条件

  • 垂線の足の座標

複素数平面における複素共役の取り扱い

1:z=z2z\overline{z}=\dfrac{|z|^2}{z}

特に,z=1|z|=1 のとき,z=1z\overline{z}=\dfrac{1}{z}

・この公式を使えば z\overline{z} はいつでも zz になおすことができます。ただし,z\overline{z} のまま計算した方がよい場合もあるのである程度慣れが必要です。

・複素数平面で図形問題を扱うときは円の中心を原点にする場合が多いです。そして,多くの問題では相似変換に関して不変な性質を証明したいので外接円の半径を 11 としてもOKです。そのため z=1|z|=1 という状況が頻出なのです。

2:α+β=α+β\overline{\alpha+\beta}=\overline{\alpha}+{\overline{\beta}}

3:αβ=αβ\overline{\alpha\beta}=\overline{\alpha}{\overline{\beta}}

共役複素数の覚えておくべき性質でも紹介した重要な公式です。引き算とわり算に対しても同様です。共役をとる操作と四則演算は順番が交換できる!

4: α=β=1|\alpha|=|\beta|=1 のとき,αβ=αβαβ\overline{\alpha}-\overline{\beta}=-\dfrac{\alpha-\beta}{\alpha\beta}

これは公式1からすぐに導けます。この公式を覚えるというよりも 「複素数平面では αβ\alpha-\beta で割り切れる式がたくさん出現する」という事実を覚えておきましょう。

複素数の実数,純虚数条件

5:zz が実数⇔ z=zz=\overline{z}

6:zz が純虚数(または z=0z=0)⇔ z=zz=-\overline{z}

非常に単純な事実ですが,複素数平面で計算するときには超頻出の公式です。

複素数平面における平行,垂直条件

複素数の比が実数⇔偏角の差が 00 または π\pi

であることに注意すると平行条件が得られます。

7:A(α),B(β),C(γ),D(δ)A(\alpha),\:B(\beta),\:C(\gamma),\:D(\delta) とおくとき,

ABABCDCD が平行⇔ αβγδ\dfrac{\alpha-\beta}{\gamma-\delta} が実数。

これを公式5,2,3と組み合わせると,平行条件は,

αβγδ=αβγδ\dfrac{\alpha-\beta}{\gamma-\delta}=\dfrac{\overline{\alpha}-\overline{\beta}}{\overline{\gamma}-\overline{\delta}} となります。

複素数の比が純虚数⇔偏角の差が π2\dfrac{\pi}{2} または 32π\dfrac{3}{2}\pi

であることに注意すると垂直条件が得られます。

8:さきほどの設定で

ABABCDCD が垂直⇔ αβγδ\dfrac{\alpha-\beta}{\gamma-\delta} が純虚数。

これを公式6,2,3と組み合わせると,垂直条件は,

αβγδ=αβγδ\dfrac{\alpha-\beta}{\gamma-\delta}=-\dfrac{\overline{\alpha}-\overline{\beta}}{\overline{\gamma}-\overline{\delta}} となります。

垂線の足の座標

上記公式たちの応用例としてよく使う準公式を証明しておきます。

A(α),B(β),C(γ)A(\alpha),\:B(\beta),\:C(\gamma) とおく。 α=β=1|\alpha|=|\beta|=1 のとき,CC から ABAB に下ろした垂線の足の座標は 12(α+β+γαβγ)\dfrac{1}{2}(\alpha+\beta+\gamma-\alpha\beta\overline{\gamma})

証明

まず,複素数平面における直線の方程式より,直線 ABAB の方程式は,(αβ)z(αβ)z+αβαβ=0(\overline{\alpha}-\overline{\beta})z-(\alpha-\beta)\overline{z}+\alpha\overline{\beta}-\overline{\alpha}\beta=0

これに公式1を用いると,

(1α1β)z(αβ)z+αββα=0(\dfrac{1}{\alpha}-\dfrac{1}{\beta})z-(\alpha-\beta)\overline{z}+\dfrac{\alpha}{\beta}-\dfrac{\beta}{\alpha}=0

これを整理すると,z+αβzαβ=0z+\alpha\beta\overline{z}-\alpha-\beta=0

また,垂直条件より,CHCH の方程式は,

(αβ)(γz)=(αβ)(γz)(\alpha-\beta)(\overline{\gamma}-\overline{z})=-(\overline{\alpha}-\overline{\beta})(\gamma-z)

公式4を用いて変形すると,

αβ(γz)=γz\alpha\beta(\overline{\gamma}-\overline{z})=\gamma-z

以上二本の式を連立させて zz について解く(z\overline{z} を消去する)と,z=12(α+β+γαβγ)z=\dfrac{1}{2}(\alpha+\beta+\gamma-\alpha\beta\overline{\gamma}) となる。

複素数平面では共通因数による割り算で計算を楽にするのがポイントです。