弧度法の意味と度数法に対するメリット

弧度法とは

• 弧度法とは「半径が $1$ で弧の長さが $L$ である扇形の中心角を $L$ ラジアンとする」ような角度の表し方です。

• 例えば「半径も弧の長さも1である扇形の中心角」が1ラジアンです。

• また，半径が1の半円の周の長さは $L=\pi$ なので，半回転分＝$\pi$ ラジアン になります。

• 高校数学以降では弧度法を使うことが多いです。

度数法とは

• 弧度法に対して，おなじみの $30^{\circ},60^{\circ},...$ という角度の表し方を「度数法」と言います。
• 度数法では，半回転分＝$180^{\circ}$ となります。「1回転分＝360°」です。

半回転分は，度数法では $180^{\circ}$，弧度法では $\pi$ ラジアンでした。つまり，$180^{\circ}=\pi$ ラジアンです。これを使うと，「度」と「ラジアン」を互いに変換できます。

「度」を「ラジアン」に変換する方法：

度に $\dfrac{\pi}{180}$ をかけるとラジアンに直せます。

「ラジアン」を「度」に変換する方法：

ラジアンに $\dfrac{180}{\pi}$ をかけると度に直せます。

弧度法の覚え方

度数法と弧度法の対応の覚え方は，やはり上述されているように，「$180^{\circ}=\pi$ ラジアン」が最も素直で覚えやすいと思います。

何問か度数法を弧度法に変換する例題を解くことで，覚えやすくなると思います。

例えば，半径が $2$ で中心角が $\dfrac{\pi}{4}$ ラジアンである扇形の弧の長さは，$2\times\dfrac{\pi}{4}=\dfrac{\pi}{2}$ と計算できます。

弧度法において弧の長さが $r\theta$ になることを2通りの方法で説明します。

例えば，半径が $2$ で中心角が $\dfrac{\pi}{4}$ ラジアンである扇形の面積は，$\dfrac{1}{2}\times 2^2\times\dfrac{\pi}{4}=\dfrac{\pi}{2}$ と計算できます。

弧度法において扇形の面積が $\dfrac{1}{2}r^2\theta$ になることを証明します。

ここからが本題です。度数法ではなくわざわざ弧度法を使うのはなぜか考えてみます。

• 弧の長さ，面積がシンプル： 上記の「弧の長さと面積の公式」を見ると度数法よりも弧度法の方がややシンプルです。これは弧度法の利点です。しかし，この程度では「度数法よりも弧度法の方が優れている」という強い理由にはならないと思います。

• 三角関数の極限，微分などの操作がシンプル： 弧度法の本当の嬉しさを理解できるのは，数学3で三角関数の極限を習ってからです。以下では，この嬉しさについて理解するために，度数法の場合と弧度法の場合を比較してみます，弧度法の存在意義を実感して下さい！

弧度法の利点を端的に言うと 公式1の美しさです。

1の証明は，sinx/xについて覚えておくべき2つのことの中盤にあります。1を使うことで2が証明できます。

さらに2を使ってサインの高階導関数が求まり，3が導出できます。公式3は高校数学の範囲外ですが知っておくとよいです。 →マクローリン展開

上記の3つの公式について，度数法の世界で考えると以下のようになります。

証明自体は弧度法の場合と全く同様にできますが，結果は非常に汚くなります（特に公式3）。弧度法の場合の方が断然美しいですね。

つまり，度数法よりも弧度法が本質的に優れているという訳ではありませんが，度数法を使うと比例定数 $\dfrac{\pi}{180}$ がいろいろなところに出現してとてもめんどうなので弧度法を使うのがよい，と言えます。

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