ルート2が無理数であることの4通りの証明

2\sqrt{2} は無理数である。

より一般に,平方数でない正の整数 nn に対して n\sqrt{n} は無理数である。

ルート2が無理数であることを4通りの方法で証明します。

有名な証明

まずは有名な証明方法です。教科書で背理法を習うときに具体例として紹介されることが多い方法です。

証明

2\sqrt{2} が有理数であると仮定する。

このとき,互いに素な正の整数 p,qp,q を用いて 2=qp\sqrt{2}=\dfrac{q}{p} とおける。

両辺二乗して分母を払うと,2p2=q22p^2=q^2

左辺は 22 の倍数なので q2q^222 の倍数。よって qq22 の倍数。

すると,q2q^244 の倍数になるので,p2p^222 の倍数。よって pp22 の倍数。

これは ppqq が互いに素であることに矛盾。

素因数分解を用いた証明

さきほどの証明とかなり似ていますが素因数分解を用います。

証明

2\sqrt{2} が有理数     2=ab\iff \sqrt{2}=\dfrac{a}{b} を満たす整数 a,ba,b が存在する

なので,

a2=2b2a^2=2b^2 を満たす整数 a,ba,b が存在しないことを証明すればよい。

a,ba,b を素因数分解したときの 22 の指数(22 で何回割り切れるか)を考えることで,

左辺は 22 で偶数回,右辺は 22 で奇数回割り切れることになる。つまりそのような整数 a,ba,b は存在しない。

厳密には最後の部分で素因数分解の一意性を使っています。→素因数分解の一意性とその証明について

二次方程式を用いた証明

「方程式 ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0 の有理数解を qp\dfrac{q}{p} (既約分数)とおくと,ppaa の約数で qqcc の約数である」

という重要な定理を認めれば一発で証明できます。

この定理は入試でもよく使います。証明は方程式の有理数解を参照して下さい。

証明

x22=0x^2-2=0 という二次方程式を考える。

  • 2\sqrt{2} はこの二次方程式の解である。
  • この方程式に有理数解があるとしたら,それは上記の定理より ±1,±2\pm 1,\pm 2 のいずれかだがどれも解でない。

以上により 2\sqrt{2} は無理数。

正則連分数展開を用いた証明

「有理数     \iff 正則連分数展開が有限回で終了する」という定理を使います。

この定理については連分数展開とその計算方法を参照して下さい。

証明

2\sqrt{2} の正則連分数展開は 2=[1;2,2,2,2,]\sqrt{2}=[1;2,2,2,2,\cdots] と無限に続く(注)ので上記の定理より 2\sqrt{2} は無理数である。

注:

  • 2\sqrt{2} の整数部分は 11,小数部分は 21=12+1\sqrt{2}-1=\dfrac{1}{\sqrt{2}+1} より
    2=1+12+1\sqrt{2}=1+\dfrac{1}{\sqrt{2}+1}

  • 2+1\sqrt{2}+1 の整数部分は 22,小数部分は 12+1\dfrac{1}{\sqrt{2}+1} より
    2=1+12+12+1\sqrt{2}=1+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{\sqrt{2}+1}}

以下この操作が無限に続く。

「ルート2が無理数である」というシンプルな主張ですが,いろいろな証明方法がありました!

ネタを提供してくださったI氏に感謝!

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