1のn乗根の性質と複素数平面
乗して になる複素数,つまり の 乗根について,2つの性質を紹介します。
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1の 乗根は複素数平面の単位円周上に等間隔で並ぶ。
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1の 乗根は全部で 個あるが,それらの和は0である。
1の三乗根,四乗根
1のn乗根の導出
1のn乗根の和
1の三乗根,四乗根
まずは,具体的に の場合を考えてみます。
の三乗根を計算して,2つの性質を確認せよ。
の解が の三乗根。
- これを複素数平面上に図示すると,単位円周上に等間隔で並ぶ。
- つの三乗根の和は,
の四乗根を計算して,2つの性質を確認せよ。
の解が の四乗根。
- これを複素数平面上に図示すると,単位円周上に等間隔で並ぶ。
- つの三乗根の和は,
1のn乗根の導出
まずは,1つめの性質についてです。1の 乗根は複素数平面の単位円周上に等間隔で並ぶことを証明します。
いくつか考え方はありますが,前提知識として「複素数の積と回転が対応していること」の理解が必要になります。
→複素数平面における回転と極形式
→ド・モアブルの定理の意味と証明
・ の 乗根は 個以下であること
の 乗根は の解である。 次方程式の解は重複度込みで 個(代数学の基本定理)なので の 乗根は全部で 個以下である。
・実際に 乗根を構成してやる
たちが の 乗根であることはド・モアブルの定理を用いることで以下のように確認できる:
は単位円周上に等間隔で並ぶので,目標の性質が証明された。
なお, ( の 乗根の の場合のもの)を と書くことが多いです。
また,このように を定めると, の 乗根たちは と書けることも分かります。
1のn乗根の和
次は2つめの性質です。1の 乗根の和が であることを証明します。解と係数の関係を使うだけです!
の 乗根たちは方程式 の解である。
よって,解と係数の関係よりそれらの和は である。
図形的に説明することもできます。
の 乗根たちは複素数平面上で正 角形の頂点たちとなる。
その正 角形の重心は対称性より原点にある。
よって, の 乗根たちの和は である。
高木貞治の初等整数論講義には「1のp乗根,特に17乗根」という章があります。