1の三乗根オメガを用いた計算と因数分解

11 の三乗根 ω\omega (オメガ)に関する話題です。

1の三乗根

1の三乗根,つまり3乗して1になる数を考えてみます。

x3=1x^3=1 を変形すると,x31=0x^3-1=0

因数分解すると,(x1)(x2+x+1)=0(x-1)(x^2+x+1)=0

つまり,x=1x=1 または x2+x+1=0x^2+x+1=0 になります。後者の二次方程式を解くと,x=1±3i2x=\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} になります。

つまり,1の三乗根は 1,1+3i2,13i21,\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2},\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}33 つです。3つのうち2つは虚数です。複素数平面で1の三乗根を図示すると,正三角形になります。

1の三乗根を複素数平面で図示

オメガとは

1の三乗根のうち虚数のものを ω\omega と表すことが多いです。虚数のものは2つありますが,そのうちの一方を ω\omega とおくと,もう一方は ω2\omega^2 になります。

実際,以下が成立します:

  • (1+3i2)2=13i2\left(\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^2=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}
  • (13i2)2=1+3i2\left(\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)^2=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}

つまり,どちらを ω\omega とおいても1の3乗根は 1,ω,ω21,\omega,\omega^2 の3つになります。

オメガに関する基本的な性質

  • ω3=1\omega^3=1
    ω\omega は1の三乗根なので,ω3=1\omega^3=1 は当然成立します。

  • ω2+ω+1=0\omega^2+\omega+1=0
    さきほど見たように ω\omegax2+x+1=0x^2+x+1=0 の解なので ω2+ω+1=0\omega^2+\omega+1=0 が成立します。

  • ω2=ω\omega^2=\overline{\omega}
    簡単な計算でも,複素数平面における考察でもわかります。

ちなみに,二次方程式を解く際に虚数単位 ii が必要になったのと同様に,三次方程式を解く際に ω\omega が必要になります。→カルダノの公式と例題【三次方程式の解の公式】

オメガの多項式を計算する問題

ω\omega の多項式は必ず Aω+BA\omega+B という形まで計算できる。特に試験問題では A=0A=0 となる場合が圧倒的に多い。

まず ω3=1\omega^3=1 を用いて ω\omega の二次式まで計算します。次に ω2=ω1\omega^2=-\omega-1 を用いて一次式にします。

ω100+ω50=(ω3)33ω+(ω3)16ω2=ω+ω2=1\begin{aligned} &\omega^{100}+\omega^{50}\\ &= (\omega^3)^{33}\omega+(\omega^3)^{16}\omega^2\\ &= \omega+\omega^2\\ &= -1 \end{aligned}

この方法でどんな多項式にも対応できます。

オメガを含む式の「有理化」

1Aω+B\dfrac{1}{A \omega + B} を「有理化」してみましょう。

計算

(Aω+B)(Aω+AB)=A2ω2+(A2AB+AB)ω+B(AB)=(A2ω2+ω+1)A2+ABB2=A2+ABB2\begin{aligned} &(A \omega +B)(A \omega + A - B)\\ &= A^2 \omega^2 +(A^2 - AB + AB) \omega + B(A-B)\\ &= (A^2 \omega^2 + \omega + 1) - A^2 + AB - B^2\\ &= -A^2 + AB - B^2 \end{aligned} となるので, 1Aω+B=Aω+AB(Aω+B)(Aω+AB)=AA2AB+B2ωABA2AB+B2\begin{aligned} \dfrac{1}{A \omega + B} &= \dfrac{A \omega + A - B}{(A \omega +B)(A \omega + A - B)}\\ &= - \dfrac{A}{A^2 - AB + B^2} \omega - \dfrac{A - B}{A^2 - AB + B^2} \end{aligned} と表される。

余談:大学数学の内容ですが,これは Q(ω)\mathbb{Q} (\omega) が体になることを意味します。

オメガを用いた因数分解

本記事のメインテーマです。

xx の多項式 f(x)f(x)x2+x+1x^2+x+1 を因数に持つ必要十分条件は f(ω)=f(ω2)=0f(\omega)=f(\omega^2)=0 なのでさきほどの計算方法を用いて簡単に確認できる。

特に,f(x)=xp+xq+xrf(x)=x^p+x^q+x^r のような形のときに効果てきめんです。

例題

f(x)=x5+x4+1f(x)=x^5+x^4+1 を因数分解せよ。

解答

簡単に因数分解できなさそうですが,f(ω)=ω5+ω4+1=ω2+ω+1=0f(\omega)=\omega^5+\omega^4+1=\omega^2+\omega+1=0 であり,同様に f(ω2)=0f(\omega^2)=0 も分かるので f(x)f(x)(xω)(xω2)=x2+x+1(x-\omega)(x-\omega^2)=x^2+x+1 を因数に持ちます。あとは頑張って割り算をするのみ:

x5+x4+1=(x2+x+1)(x3x+1) x^5+x^4+1=(x^2+x+1)(x^3-x+1)

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT28では,オメガを用いずに頑張って因数分解する方法も紹介しています。

次は2003年京大前期の第四問です。

問題

f(x)=(x100+1)100+(x2+1)100+1f(x)=(x^{100}+1)^{100}+(x^2+1)^{100}+1x2+x+1x^2+x+1 で割り切れるか。

解答

同様に f(ω)=f(ω2)=0f(\omega)=f(\omega^2)=0 かどうか確認するだけです。

f(ω)=(ω+1)100+(ω2+1)100+1=(ω2)100+(ω)100+1=ω200+ω100+1=ω2+ω+1=0\begin{aligned} f(\omega) &= (\omega+1)^{100}+(\omega^2+1)^{100}+1\\ &=(-\omega^2)^{100}+(-\omega)^{100}+1\\ &=\omega^{200}+\omega^{100}+1\\ &=\omega^2+\omega+1\\ &=0 \end{aligned}

f(ω2)f(\omega^2) も同様にして 00 となることが分かるので f(x)f(x)x2+x+1x^2+x+1 で割り切れる!

xmx^m の係数が全部 11 であるような多項式が出てきたら ω\omega を意識するようにしましょう。

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