ド・モアブルの定理の意味と証明

更新日時 2021/03/07
ド・モアブルの定理

正の整数 nn と任意の実数 θ\theta に対して,

(cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθ(\cos\theta+i\sin\theta)^n=\cos n\theta+i\sin n\theta

ド・モアブルの定理(de Moivre’s theorem)について,意味や証明方法,応用を解説します。

目次
  • ド・モアブルの定理の意味

  • 極形式と練習問題

  • ド・モアブルの定理の証明

  • ド・モアブルの定理の応用

  • 複素指数関数との関係

ド・モアブルの定理の意味

ド・モアブルの定理は,三角関数や虚数が入っていて一見難しく見えますが,単なる恒等式です。

ド・モアブルの定理で n=4,θ=π2n=4,\theta=\dfrac{\pi}{2} とすると,
(cosπ2+isinπ2)4=cos2π+isin2π\left(\cos\dfrac{\pi}{2}+i\sin\dfrac{\pi}{2}\right)^4=\cos 2\pi+i\sin 2\pi
となる。実際,左辺は i4i^4 で右辺は 11 なので等式が成立する。

極形式と練習問題

例題1

z=3+iz=\sqrt{3}+i に対して z6z^6 を計算せよ。

複素数を r(cosθ+isinθ)r(\cos\theta+i\sin\theta) の形で表したものを極形式と言います。→複素数平面における回転と極形式

複素数の累乗は,極形式で表してからド・モアブルの定理を使うと計算できます。

解答

3+i\sqrt{3}+i を極形式で表すと,

z=2(32+12i)=2(cosπ6+isinπ6)z=2\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}+\dfrac{1}{2}i\right)\\ =2\left(\cos\dfrac{\pi}{6}+i\sin\dfrac{\pi}{6}\right)

よって,ド・モアブルの定理より,

z6=26(cosπ6+isinπ6)6=26(cosπ+isinπ)=64z^6=2^6\left(\cos\dfrac{\pi}{6}+i\sin\dfrac{\pi}{6}\right)^6\\ =2^6(\cos\pi+i\sin\pi)\\ =-64

ド・モアブルの定理の証明

ド・モアブルの定理:

(cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθ(\cos\theta+i\sin\theta)^n=\cos n\theta+i\sin n\theta

を証明します。

方針

nn に関する数学的帰納法で証明します。三角関数の加法定理を用います。

証明

n=1n=1 のときは両辺ともに cosθ+isinθ\cos\theta+i\sin\theta となりOK。

(cosθ+isinθ)k=coskθ+isinkθ(\cos\theta+i\sin\theta)^{k}=\cos k\theta+i\sin k\theta

が成立すると仮定すると,

(cosθ+isinθ)k+1=(cosθ+isinθ)k(cosθ+isinθ)=(coskθ+isinkθ)(cosθ+isinθ)=(coskθcosθsinkθsinθ)+i(sinkθcosθ+coskθsinθ)=cos(k+1)θ+isin(k+1)θ(\cos\theta+i\sin\theta)^{k+1}\\ =(\cos\theta+i\sin\theta)^{k}(\cos\theta+i\sin\theta)\\ =(\cos k\theta+i\sin k\theta)(\cos\theta+i\sin\theta)\\ =(\cos k\theta\cos\theta-\sin k\theta\sin\theta)\\ \:\:+i(\sin k\theta\cos\theta+\cos k\theta\sin\theta)\\ =\cos(k+1)\theta+i\sin(k+1)\theta

(ただし,最後の変形で三角関数の加法定理を用いた)
となる。つまり,n=kn=k のときにド・モアブルの定理が成立するなら n=k+1n=k+1 でも成立。

実は,ド・モアブルの定理は nn がマイナスの場合も成立します。

おまけ(n がマイナスの場合の証明)

(cosθ+isinθ)n=1(cosθ+isinθ)n(\cos\theta+i\sin\theta)^n\\ =\dfrac{1}{(\cos\theta+i\sin\theta)^{-n}}

ここで,n-n はプラスなのですでに証明したド・モアブルの定理より上式は

1cos(n)θ+isin(n)θ\dfrac{1}{\cos(-n)\theta+i\sin(-n)\theta}

と等しい。分母分子に cos(n)θisin(n)θ\cos(-n)\theta-i\sin(-n)\theta をかけて有理化すると,分母は 11 になり分子は

cos(n)θisin(n)θ=cosnθ+isinnθ\cos(-n)\theta-i\sin(-n)\theta\\ =\cos n\theta+i\sin n\theta

となる。

ド・モアブルの定理の応用

ド・モアブルの定理を用いれば三角関数の nn 倍角の公式を素早く導くことができます!

例題2

三倍角の公式

sin3θ=4sin3θ+3sinθcos3θ=4cos3θ3cosθ\sin3\theta=-4\sin^3\theta+3\sin\theta\\ \cos3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta

をド・モアブルの定理を使って証明せよ。

解答

ド・モアブルの定理で n=3n=3 とすると,

(cosθ+isinθ)3=cos3θ+isin3θ(\cos\theta+i\sin\theta)^3=\cos 3\theta+i\sin 3\theta

である。左辺を展開すると,

cos3θ+3icos2θsinθ3cosθsin2θisin3θ=cos3θ3cosθ(1cos2θ)+3i(1sin2θ)sinθisin3θ=4cos3θ3cosθ+i(4sin3θ+3sinθ)\cos^3\theta+3i\cos^2\theta\sin\theta-3\cos\theta\sin^2\theta-i\sin^3\theta\\ =\cos^3\theta-3\cos\theta(1-\cos^2\theta)\\ \:+3i(1-\sin^2\theta)\sin\theta-i\sin^3\theta\\ =4\cos^3\theta-3\cos\theta\\ \:+i(-4\sin^3\theta+3\sin\theta)

となる。

  • 実部を比較すると,cos\cos の三倍角の公式を得る。
  • 虚部を比較すると,sin\sin の三倍角の公式を得る。

同様に,nn 乗を展開するだけで機械的に nn 倍角の公式を導くことができます。 →四倍角の公式の証明と考察

また,平方数の逆数和 11+14+19+\dfrac{1}{1}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{9}+\cdotsπ26\dfrac{\pi^2}{6} に収束することの証明にも登場します! →バーゼル問題の初等的な証明

複素指数関数との関係

実は,複素数 iθi\theta の指数関数は eiθ=cosθ+isinθe^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta で定義されます。→オイラーの公式と複素指数関数

つまり、ド・モアブルの定理の左辺は (eiθ)n(e^{i\theta})^n になり,右辺は einθe^{in\theta} になります。つまり,ド・モアブルの定理は指数法則 (ex)n=exn(e^{x})^n=e^{xn} の複素数バージョンとも言えます。

5倍角の公式の導出が京大で出題されたことがあります。

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