対称式に関するマクローリンの不等式

マクローリン(Maclaurin)の不等式

nn 変数 kk 次の基本対称式を nCk{}_n\mathrm{C}_k で割ったものを dkd_k とする。このとき,

d1d212d313dn1n d_1\geq d_2^{\frac{1}{2}}\geq d_3^{\frac{1}{3}}\geq\cdots\geq d_n^{\frac{1}{n}}

なお,マクローリン展開をもとにした不等式(→マクローリン型不等式(指数関数))とは全く別物なので,ご注意ください。

具体例(n=3n=3 の場合)

d1=a+b+c3d_1=\dfrac{a+b+c}{3}d2=ab+bc+ca3d_2=\dfrac{ab+bc+ca}{3}d3=abcd_3=abc なので,マクローリンの不等式は,(非負の a,b,ca,b,c に対して) a+b+c3ab+bc+ca3abc3 \dfrac{a+b+c}{3}\geq \sqrt{\dfrac{ab+bc+ca}{3}}\geq \sqrt[3]{abc} となります。

相加相乗の拡張

マクローリンの不等式の両端だけ持ってきたもの:

d1dn1nd_1\geq d_n^{\frac{1}{n}} は,まさに(nn 変数の)相加相乗平均の不等式です。

つまり,マクローリンの不等式は相加相乗平均の不等式の拡張とみなせます。

ニュートン→マクローリンの証明

ニュートンの不等式dk2dk1dk+1(k=1,2,,n1)d_k^2\geq d_{k-1}d_{k+1}\:(k=1,2,\cdots,n-1) を認めたうえでマクローリンの不等式を導きます。(注: d0=1d_0=1 です)

証明

k=1,2,,n1k=1,2,\cdots,n-1 に対して,

dkk+1dk+1k d_k^{k+1}\geq d_{k+1}^k

を示すのが目標。ニュートンの不等式を kk 本並べてみると,

d12d2d22d1d3d32d2d4dk2dk1dk+1 d_1^2\geq d_2\\ d_2^2\geq d_1d_3\\ d_3^2\geq d_2d_4\\ \vdots\\ d_k^2\geq d_{k-1}d_{k+1}

d1d_1 から dk1d_{k-1} が消えるのを狙い)上から tt 個目の式を両辺 tt 乗(t=1,,kt=1,\cdots,k )してから全ての式をかけ合わせると, dk2kdkk1dk+1kd_k^{2k}\geq d_k^{k-1}d_{k+1}^k つまり,dkk+1dk+1kd_k^{k+1}\geq d_{k+1}^k を得る。

数オリの問題でマクローリンの不等式を知っていると有利になるものをご存知の方はご一報ください。