有名不等式 e^π > π^e の証明

更新日時 2022/10/19
問題

eπ>πee^{\pi} > \pi^e を証明せよ。

この記事では有名な不等式 eπ>πee^{\pi} > \pi^e の証明を紹介します。

目次
  • 証明1:微分による証明

  • 証明2:マクローリン型不等式を応用する証明

  • ゲルフォントの定数

証明1:微分による証明

もし,左辺を ee だけ,右辺を π\pi だけの式に変形できたら簡単に議論ができそうですね。

ここで各辺を 1eπ\dfrac{1}{e\pi} 乗すると,証明すべき式は e1e>π1π e^{\frac{1}{e}} > \pi^{\frac{1}{\pi}} であることがわかりますね。

さらに対数を取ることで logee>logππ \dfrac{\log e}{e} > \dfrac{\log \pi}{\pi} を示せばよいことがわかります。

この不等式を示すには,関数 logxx\dfrac{\log x}{x} の増減を調べればよさそうです。

証明

示すべき不等式の両辺の対数を取って変形することで logee>logππ \dfrac{\log e}{e} > \dfrac{\log \pi}{\pi} を示せばよいことがわかる。

f(x)=logxxf(x) = \dfrac{\log x}{x} とおく。

f(x)=x(logx)(x)logxx2=1logxx2\begin{aligned} f' (x) &= \dfrac{x (\log x)' - (x)' \log x}{x^2}\\ &= \dfrac{1- \log x}{x^2} \end{aligned}

よって増減表は

x0ef(x)+0f(x)max \begin{array}{|c|cccc|} \hline x & 0 & \cdots & e & \cdots\\ \hline f'(x) && + & 0 & - \\ \hline f (x) && \nearrow& \max &\searrow\\ \hline \end{array} となる。

ゆえに f(e)>f(π)f(e) > f(\pi) となる。

こうして logee>logππ \dfrac{\log e}{e} > \dfrac{\log \pi}{\pi} が示され,eπ>πee^{\pi} > \pi^e が従う。

対数を取らずに議論をしたら……?

対数を取らずに x1xx^{\frac{1}{x}} で議論をすることもできます。

しかし,こうした関数を微分をする場合,対数微分法 を用いることになります。

この場合,logxx\dfrac{\log x}{x} の考察と等価であることがわかります。

証明2:マクローリン型不等式を応用する証明

マクローリン展開にまつわる指数関数の不等式exx+1 e^x \geqq x+1 というものがありました。

x=πx=\pi を代入すると eπe^{\pi} が左辺に登場しますが,π+1\pi + 1πe\pi^e にするのは少々難しそうです。そこで代入する数を工夫してみます。

証明

正の実数 xx に対して ex>x+1e^{x} > x+1 が成立する。

(証明)

x>0x > 0 に対して f(x)=exx1f(x) = e^{x} - x -1 とすると f(x)=ex10f'(x) = e^x - 1 \geqq 0 であるため,ff は単調に増加する。

ゆえに f(x)>f(0)=0f(x) > f(0) = 0 となる。

こうして ex>x+1e^x > x+1 である。(終)

この不等式に x=πe1x=\dfrac{\pi}{e} - 1 を代入すると eπe1>πe e^{\frac{\pi}{e} - 1} > \dfrac{\pi}{e} を得る。これを変形して eπ>πe e^{\pi} > \pi^e を得る。

ゲルフォントの定数

左辺 eπe^{\pi}ゲルフォントの定数 といわれます。

実際に値を求めると eπ=23.14069263277926e^{\pi} = 23.14069263277926\cdots となります。

eππ=19.99909997918947e^{\pi} - \pi = 19.99909997918947 \cdots と計算されます。これは無理数で表されるほとんど整数の例の1つです。

超越数であること

ゲルフォントの定数は 超越数 です。これは ゲルフォント=シュナイダーの定理 で証明されます。

ゲルフォント=シュナイダーの定理

α\alpha0,10,1 とは異なる代数的数,β\beta を有理数ではない代数的数とする。このとき αβ\alpha^{\beta} は超越数である。

ゲルフォントの定数は, eπ=(eiπ)1i=(eiπ)i=(1)i e^{\pi} = (e^{i\pi})^{\frac{1}{i}} = (e^{i\pi})^{-i} = (-1)^{-i} となります。定理において α=1,β=i\alpha = -1 , \beta = -i とおくことで,eπe^{\pi} が超越数であることが示されます。

東大入試との関連

1999年東大理系第6問にこのような問題があります。

問題

0πexsin2xdx>8\displaystyle\int_0^{\pi}e^x\sin^2xdx > 8 を示せ。ただし,π=3.14\pi=3.14\cdotse=2.71e=2.71\cdots である。

この積分を計算すると 25(eπ1)\dfrac{2}{5} (e^{\pi}-1) になります。よってこの問いは「eπ>21e^{\pi} > 21 を示せ」と読みかえられます。

詳しい証明は 一次近似の意味とよく使う近似公式一覧 に書いています。

他にもスマートな証明があったら教えてください。