商の微分公式の証明と例題

更新日時 2022/01/26
逆数の微分・商の微分

f,gf',g'xx の関数とする。

  • 1f\dfrac{1}{f} の微分は ff2-\dfrac{f'}{f^2}
  • gf\dfrac{g}{f} の微分は gffgf2\dfrac{g'f-f'g}{f^2}

いろいろな関数を微分するときに活躍する逆数の微分公式商の微分公式について,例題と証明を整理しました。

目次
  • 逆数の微分公式と例題

  • 逆数の微分公式の証明

  • 商の微分公式と例題

  • 商の微分公式の証明

  • 商の微分公式の覚え方

逆数の微分公式と例題

1f\dfrac{1}{f} の微分は ff2-\dfrac{f'}{f^2} になります。きちんと書くと,
{1f(x)}=f(x){f(x)}2\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}'=-\dfrac{f'(x)}{\{f(x)\}^2} です。これを逆数の微分公式といいます。

例題1

y=1logxy=\dfrac{1}{\log x} を微分せよ。

解答

逆数の微分公式より y=(logx)(logx)2=1x(logx)2y'=-\dfrac{(\log x)'}{(\log x)^2}=-\dfrac{1}{x(\log x)^2}

ただし,(logx)=1x(\log x)=\dfrac{1}{x} であることを使った。

逆数の微分公式の証明

{1f(x)}=f(x){f(x)}2\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}'=-\dfrac{f'(x)}{\{f(x)\}^2} を2通りの方法で証明します。

証明1

1f(x)\dfrac{1}{f(x)} の微分を定義に従って計算する。

{1f(x)}=limh01f(x+h)1f(x)h=limh0f(x)f(x+h)hf(x)f(x+h)=limh01f(x)f(x+h)f(x+h)f(x)h=f(x){f(x)}2\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}'=\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{\frac{1}{f(x+h)}-\frac{1}{f(x)}}{h}\\ =\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x)-f(x+h)}{hf(x)f(x+h)}\\ =\displaystyle\lim_{h\to 0}-\dfrac{1}{f(x)f(x+h)}\cdot\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ =-\dfrac{f'(x)}{\{f(x)\}^2}

証明1が一般的ですが,1x\dfrac{1}{x} の微分が 1x2-\dfrac{1}{x^2} であることと,合成関数の微分公式(→合成関数の微分公式と例題7問)を認めれば以下のような証明もできます。

証明2

y=1f(x)y=\dfrac{1}{f(x)} は,y=1uy=\dfrac{1}{u}u=f(x)u=f(x) の合成関数として表せるので,合成関数の微分公式より {1f(x)}=1f(x)2f(x)\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}'=\dfrac{-1}{f(x)^2}\cdot f'(x) を得る。

商の微分公式と例題

gf\dfrac{g}{f} の微分は gffgf2\dfrac{g'f-f'g}{f^2} になります。きちんと書くと,{g(x)f(x)}=g(x)f(x)f(x)g(x){f(x)}2\left\{\dfrac{g(x)}{f(x)}\right\}'=\dfrac{g'(x)f(x)-f'(x)g(x)}{\{f(x)\}^2}
です。これを商の微分公式といいます。

例題2

y=cosxsinxy=\dfrac{\cos x}{\sin x} を微分せよ。

解答

商の微分公式より

y=(cosx)sinx(sinx)cosxsin2x=sin2xcos2xsin2x=1sin2xy'=\dfrac{(\cos x)'\sin x-(\sin x)'\cos x}{\sin^2x}\\ =\dfrac{-\sin^2x -\cos^2x}{\sin^2x}=-\dfrac{1}{\sin^2x}

商の微分公式の証明

いよいよ商の微分公式の証明です。さきほどの「逆数の微分公式」と積の微分公式を使えば一瞬で証明できます。積の微分について知らない方は積の微分公式とその証明をご覧ください。

商の微分公式の証明

g(x)f(x)\dfrac{g(x)}{f(x)} を,g(x)g(x)1f(x)\dfrac{1}{f(x)} の積と見ることで,積の微分公式が使える:

{g(x)f(x)}=g(x)1f(x)g(x)f(x){f(x)}2=g(x)f(x)f(x)g(x){f(x)}2\left\{\dfrac{g(x)}{f(x)}\right\}'=g'(x)\dfrac{1}{f(x)}-g(x)\dfrac{f'(x)}{\left\{f(x)\right\}^2}\\ =\dfrac{g'(x)f(x)-f'(x)g(x)}{\left\{f(x)\right\}^2}

「積の微分公式と商の微分公式は全く別物」と考えるのではなくて, 商の微分公式は積の微分公式から簡単に導出できると覚えておきましょう。

商の微分公式の覚え方

逆数の微分公式:1f\dfrac{1}{f} の微分は ff2-\dfrac{f'}{f^2}
は頑張って覚えて下さい。マイナス忘れが多いので要注意です。

商の微分公式:gf\dfrac{g}{f} の微分は gffgf2\dfrac{g'f-f'g}{f^2}
については分子が gffgg'f-f'g なのか fggff'g-g'f なのか迷いがちです。私は「分子から微分」と覚えています。テスト中に忘れてしまった場合は,g(x)=1g(x)=1 とすることで確認できます。

また,最悪公式を丸ごと忘れても証明方法をなんとなく覚えておけば導出はできます。ただ,商の微分公式たちは使う機会が非常に多いので,毎回導出するのではなくてぜひとも覚えてください!

逆に,「逆数の微分」と「商の微分」から「積の微分」を導出することもできます。かけ算とわり算は「同じ」

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