商の微分公式をわかりやすく【例題・証明・覚え方】

商の微分公式

{f(x)g(x)}=f(x)g(x)f(x)g(x){g(x)}2\left\{\dfrac{f(x)}{g(x)}\right\}'=\dfrac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}

商の微分公式について,問題・覚え方・証明をわかりやすく説明します。

商の微分公式を使う問題

例題1

y=3xx+2y=\dfrac{3x}{x+2} を微分せよ。

分母と分子がそれぞれ微分できれば全体も微分できます!

解答

商の微分公式より,

y=(3x)(x+2)(3x)(x+2)(x+2)2=3(x+2)3x(x+2)2=6(x+2)2\begin{aligned}y'&=\dfrac{(3x)'(x+2)-(3x)(x+2)'}{(x+2)^2}\\ &=\dfrac{3(x+2)-3x}{(x+2)^2}\\ &=\dfrac{6}{(x+2)^2}\end{aligned}

練習問題

y=cosxsinxy=\dfrac{\cos x}{\sin x} を微分せよ。

解答

商の微分公式より

y=(cosx)sinx(sinx)cosxsin2x=sin2xcos2xsin2x=1sin2x\begin{aligned} y' &= \dfrac{(\cos x)'\sin x-(\sin x)'\cos x}{\sin^2x}\\ &= \dfrac{-\sin^2x -\cos^2x}{\sin^2x}=-\dfrac{1}{\sin^2x} \end{aligned}

商の微分公式の覚え方

{f(x)g(x)}=f(x)g(x)f(x)g(x){g(x)}2\left\{\dfrac{f(x)}{g(x)}\right\}'=\dfrac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2} は少し覚えにくいです。以下の3つを意識しておきましょう。

  • 「下2乗 ぶんの 微分そのままマイナスそのまま微分」と覚えるとよいです。ただし,分子で先にどちらを微分するか忘れやすいので「上の微分(分母の微分)が先」であることはしっかり覚えておきましょう。 商の微分公式

  • 関数 f(x)f(x) のかわりに ff などと書くと短くなります: (fg)=fgfgg2\left(\dfrac{f}{g}\right)'=\dfrac{f'g-fg'}{g^2}

  • 後述の「逆数の微分公式」を覚えておけば符号を間違えにくいです。

商の微分公式の証明

微分の定義に従って計算します。ただし,途中で少し工夫が必要です。

証明

{f(x)g(x)}\left\{\dfrac{f(x)}{g(x)}\right\}' は,微分の定義より, limh0f(x+h)g(x+h)f(x)g(x)h\lim_{h\to 0}\dfrac{\frac{f(x+h)}{g(x+h)}-\frac{f(x)}{g(x)}}{h} と等しい。分母と分子に g(x)g(x+h)g(x)g(x+h) をかけると。 limh0f(x+h)g(x)f(x)g(x+h)h×1g(x)g(x+h)\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x+h)}{h}\times\dfrac{1}{g(x)g(x+h)} となる。2つめの分数は h0h\to 01{g(x)}2\dfrac{1}{\{g(x)\}^2} に収束する。

1つめの分数は,以下のように変形できる。 {f(x+h)f(x)}g(x)f(x){g(x+h)g(x)}h\dfrac{\{f(x+h)-f(x)\}g(x)-f(x)\{g(x+h)-g(x)\}}{h}

ただし,分子に f(x)g(x)f(x)g(x) を足して引いた。この分数は,h0h\to 0 のとき f(x)g(x)f(x)g(x){f'(x)}g(x)-f(x){g'(x)} に収束する(微分の定義)。

よって,2つの分数をあわせて結局 {f(x)g(x)}=f(x)g(x)f(x)g(x){g(x)}2\left\{\dfrac{f(x)}{g(x)}\right\}'=\dfrac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}

逆数の微分公式

商の微分公式の中でも,特に分子が 11 の場合が頻出です: {1f(x)}=f(x){f(x)}2\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}'=-\dfrac{f'(x)}{\{f(x)\}^2} です。これを逆数の微分公式といいます。

例題

例題2

y=1logxy=\dfrac{1}{\log x} を微分せよ。

解答

逆数の微分公式より y=(logx)(logx)2=1x(logx)2y'=-\dfrac{(\log x)'}{(\log x)^2}=-\dfrac{1}{x(\log x)^2}

ただし,(logx)=1x(\log x)' = \dfrac{1}{x} であることを使った。

証明

商の微分公式で分子を1にすれば証明できますが,ここでは {1f(x)}=f(x){f(x)}2\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}'=-\dfrac{f'(x)}{\{f(x)\}^2} を直接証明します。

証明1

1f(x)\dfrac{1}{f(x)} の微分を定義に従って計算する。

{1f(x)}=limh01f(x+h)1f(x)h=limh0f(x)f(x+h)hf(x)f(x+h)=limh01f(x)f(x+h)f(x+h)f(x)h=f(x){f(x)}2\begin{aligned} \left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}' &= \lim_{h\to 0}\dfrac{\frac{1}{f(x+h)}-\frac{1}{f(x)}}{h}\\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{f(x)-f(x+h)}{hf(x)f(x+h)}\\ &= \lim_{h\to 0}-\dfrac{1}{f(x)f(x+h)}\cdot\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ &=-\dfrac{f'(x)}{\{f(x)\}^2} \end{aligned}

1x\dfrac{1}{x} の微分が 1x2-\dfrac{1}{x^2} であることと,合成関数の微分公式(→合成関数の微分公式と例題7問)を認めれば以下のような証明もできます。

証明2

y=1f(x)y=\dfrac{1}{f(x)} は,y=1uy=\dfrac{1}{u}u=f(x)u=f(x) の合成関数として表せるので,合成関数の微分公式より {1f(x)}=1f(x)2f(x)\left\{\dfrac{1}{f(x)}\right\}'=\dfrac{-1}{f(x)^2}\cdot f'(x) を得る。

商の微分公式の別証明

「逆数の微分公式」と「積の微分公式」を使えば「商の微分公式」を一瞬で証明できます。積の微分について知らない方は積の微分公式とその証明をご覧ください。

商の微分公式の証明

g(x)f(x)\dfrac{g(x)}{f(x)} を,g(x)g(x)1f(x)\dfrac{1}{f(x)} の積と見ることで,積の微分公式が使える:

{g(x)f(x)}=g(x)1f(x)g(x)f(x){f(x)}2=g(x)f(x)f(x)g(x){f(x)}2\begin{aligned} \left\{\dfrac{g(x)}{f(x)}\right\}' &= g'(x)\dfrac{1}{f(x)}-g(x)\dfrac{f'(x)}{\left\{f(x)\right\}^2}\\ &= \dfrac{g'(x)f(x)-f'(x)g(x)}{\left\{f(x)\right\}^2} \end{aligned}

「積の微分公式と商の微分公式は全く別物」と考えるのではなくて, 商の微分公式は積の微分公式から簡単に導出できると覚えておきましょう。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT150では,商の微分を使う練習問題と,2通りの解法および検算テクニックを紹介しています。

逆に,「逆数の微分」と「商の微分」から「積の微分」を導出することもできます。かけ算とわり算は「同じ」

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