不等式の基礎知識と展望

不等式とは 不等号 >,<,,> , < , \geqq , \leqq を含む式 のことです。数と数の大小関係を表します。

この記事では,中学レベルから難関大入試レベルまで幅広く不等式の基礎知識を解説します。

不等式の変形

不等式は,「解く」「証明する」の2つがテーマになります。まずは不等式を「解く」ことについて解説します。

不等式の解き方は,方程式の解き方と似ていますが,一部注意するべき点があります。確認していきましょう。

両辺に足す・引く(移項)

方程式と同じように両辺に数を足し引きできます。たとえば 4>24 > 2 の両辺に 33 を足しても 7>57 > 5 となり不等式が成立します。

また,両辺に同じ数を足し引きできるので「移項」ができます。

例えば x63xx \leqq 6-3x3x-3x を移項するとは,両辺に 3x3x を足していることと同じです。

両辺に掛ける・割る

掛け算・割り算をするときは,方程式と異なり注意が必要です。

  • 3>13 > 1 という不等式は正しいです。右辺と左辺それぞれに 22 を掛けてみましょう。6622 が得られ,6>26 > 2 という正しい不等式が得られます。

  • 一方,3>13>1 に対して,右辺と左辺それぞれに 1-1 を掛けてみましょう。すると 3-31-1 になります。3>1-3 > -1 という正しくない不等式が得られました。正しくは,3<1-3 < -1 です。このように,不等号の向きが変わります。

  • つまり,不等式の両辺に負の数を掛けると,不等号が入れ替わります。これは割り算でも同じです。ミスしやすいポイントなので注意しましょう。

一次不等式と二次不等式

一次方程式や二次方程式の == を不等号に変えたものを,それぞれ一次不等式・二次不等式といいます。すなわち,不等式中に登場する最高次が一次のものを一次不等式,二次のものを二次不等式といいます。

x3x+4x \leqq 3x + 4 は一次不等式です。

x2<43xx^2 < 4 - 3x は二次不等式です。

高次の不等式

同様に,最高次の次数が nn である不等式を nn 次不等式といいます。

例えば,x3+4x20x^3 + 4x -2 \geqq 0 は三次不等式です。

一次不等式の解き方

例題

次の不等式を解け

  1. 3xx63x \leqq x - 6
  2. x6>2x1x -6 > 2x -1

一次不等式は一次方程式と同じように解きます。

  1. 左辺に変数(xx),右辺に定数を集める。
  2. 変数の係数で両辺を割る。
解答
  1. 移項をすると 2x62x \leqq -6 となる。両辺を xx の係数 22 で割ると x3x \leqq -3 となる。

  2. 移項をすると x>5-x > 5 となる。両辺を 1-1 で割ると,不等号が入れ替わることに注意し x<5x < -5 を得る。

是非一次不等式の解き方と検算方法もチェックしてください。

二次不等式の解き方とその応用

二次不等式は二次方程式の解の公式を使って解くことができます。詳しくは 二次不等式の解き方(2通りの考え方)と例題 を読んでください。

二次不等式の形にして解ける不等式はたくさかあります。分数不等式のおすすめの解き方と例題 でもあるように分数不等式 x8x2x+2 \dfrac{x-8}{x-2} \geqq x+2 は両辺を払うことで二次不等式の形にできます。

絶対値を含む不等式でも二次不等式が現れたりします。例えば x+1>2x |x+1| > 2x を解くとき,両辺を二乗することで二次不等式の形にできます。絶対値の意味と性質・記号の外し方・絶対値を含む式の計算方法 でチェックしてみてください。

絶対不等式

次は不等式を「証明する」話です。絶対不等式とは考えている範囲内で常に成立する不等式のことです。

例えば,x2+2x+10x^2 + 2x +1 \geqq 0 は全ての実数で成立するので,絶対不等式です。

入試で重要な絶対不等式は次の3つです。

この他にイェンゼンの不等式(凸不等式)も有用です。

数学オリンピックを見据えると,他にヘルダーの不等式シュールの不等式なども勉強したいところです。

不等式の応用

最後に,不等式の知識を応用する話題です。

最大値・最小値の計算

不等式を用いることで関数の最大値や最小値を計算できます。例えば

相加相乗平均の不等式を用いて関数の最小値を求める

では x+1x2x + \dfrac{1}{x^2} の最小値を相加相乗平均ので計算しています。もちろん微分と増減表により計算することもできますが,それよりずっと簡潔に解けます。

はさみうちの原理

数Ⅲでははさみうちの原理という応用に出会います。

ライプニッツ級数 113+15=π41 - \dfrac{1}{3} + \dfrac{1}{5} - \cdots = \dfrac{\pi}{4} の証明は,不等式評価した上ではさみうちの原理で証明されます。

不等式評価が効いてくる入試数学コンテストの問題をいくつか紹介します。

入試数学コンテスト第1回第5問解答解説

入試数学コンテスト第6回第4問解答解説

是非挑戦してみてください。

おわりに

高校数学の美しい物語には不等式の記事をまとめたページがあります。是非活用してください。

腕力で不等式評価しはさみうちをする極限の問題は解いていて楽しいです。