入試数学コンテスト第6回第4問解答解説

第4問 [複素数]

第4問

O\mathrm{O} を複素数平面の原点とし,z2=2|z-2| = \sqrt{2} を満たす複素数平面上の図形を CC とする。CC 上に点 Pn(zn)\mathrm{P}_n (z_n) を以下のように定める。

  • z1=1+iz_1 = 1+i
  • OPnPn+1=90\angle \mathrm{O} \mathrm{P}_n \mathrm{P}_{n+1} = 90^{\circ} を満たす。

(1) z2z_2 を求めよ。

(2) n2n \geqq 2 とする。直線 OPn\mathrm{OP}_nCC の交点のうち Pn\mathrm{P}_n ではない点を Qn\mathrm{Q}_n とおく。線分の長さの積 OPnOQn\mathrm{OP}_n \cdot \mathrm{OQ}_n を求めよ。

(3) zn+1z_{n+1}znz_{n} を用いて表せ。なお,解答する際は znz_nzz と入力をすること。

(4) znz_{n} の実部と虚部をそれぞれ xnx_{n}yny_{n} とする。このとき limnxn\displaystyle \lim_{n \to \infty} x_nlimnyn\displaystyle \lim_{n \to \infty} y_n を求めよ。

第4問は複素数の問題でした。

OPnPn+1=90\angle \mathrm{O} \mathrm{P}_n \mathrm{P}_{n+1} = 90^{\circ} という条件から argzn+1znzn=π2\arg \dfrac{z_{n+1} - z_n}{z_{n}} = \dfrac{\pi}{2} がわかります。偏角が π2\dfrac{\pi}{2} である複素数は純虚数ですね。ここで実数 knk_{n} を用いて zn+1znzn=kni\dfrac{z_{n+1} - z_n}{z_n} = k_n i と表すことができると気付きましょう。

第4問 (1)

OPnPn+1=90\angle \mathrm{O} \mathrm{P}_n \mathrm{P}_{n+1} = 90^{\circ} より argz2z1z1=π2\arg \dfrac{z_2 - z_1}{z_1} = \dfrac{\pi}{2} である。よって実数 kk を用いて z2z1z1=ki \dfrac{z_2 - z_1}{z_1} = ki と表される。変形して z2=(1+ik)z1=(1+ik)(1+i)=1k+(k+1)i\begin{aligned} z_2 &= (1+ik) z_1\\ &= (1+ik)(1+i)\\ &=1-k+(k+1)i \end{aligned} を得る。これを z2=2|z-2| = \sqrt{2} に代入すると (k+1)+(k+1)i=2|-(k+1) +(k+1)i| = \sqrt{2} となる。 (k+1)+(k+1)i=k+11+i=2k+1|-(k+1)+(k+1)i| = |k+1|\cdot|-1+i| = \sqrt{2} |k+1| である。

ゆえに k+1=±1k+1 = \pm 1 である。k+1=1k+1=1 のときは k=0k=0z2=z1z_2=z_1 であるため不適である。したがって k=2k=-2 である。

こうして z2=3iz_2 = 3-i が得られる。

角の条件を数式的に捉えることは,複素数の問題を解く上でオーソドックスな手法です。一方でこの条件をそのまま幾何的に捉えてみることもできます。

第4問 (1) 別解

CC の中心を C\mathrm{C} とおく。C(2)\mathrm{C} (2) である。 arg2(1+i)1+i=arg1i1+i=arg2i2=arg(i)\begin{aligned} \arg \dfrac{2 - (1+i)}{1+i}& = \arg \dfrac{1-i}{1+i}\\ &= \arg \dfrac{-2i}{2}\\ &= \arg (-i) \end{aligned} より OP1C=90\angle \mathrm{OP_1C} = 90^{\circ} である。条件より OP1P2=90\mathrm{OP_1P_2} = 90^{\circ} であった。こうして P1\mathrm{P_1}C\mathrm{C}P2\mathrm{P_2} は同一直線状にあることがわかる。

P1\mathrm{P_1}P2\mathrm{P_2} は円周上の点である一方で C\mathrm{C} は円の中心である。よって 2z1=z222 - z_1 = z_2 - 2 である。こうして z2=4z1=3iz_2 = 4 - z_1 = 3-i である。

次の問題は幾何的に考えることで簡単に解くことができます。

第4問 (2)

CC の中心を C\mathrm{C} とおく。C(2)\mathrm{C} (2) である。 arg2(1+i)1+i=arg1i1+i=arg2i2=arg(i)\begin{aligned} \arg \dfrac{2 - (1+i)}{1+i}& = \arg \dfrac{1-i}{1+i}\\ &= \arg \dfrac{-2i}{2}\\ &= \arg (-i) \end{aligned} より OP1C=90\angle \mathrm{OP_1C} = 90^{\circ} である。すなわち P1C\mathrm{P_1C}OP1\mathrm{OP_1} は直交する。C\mathrm{C} は円の中心であったため,OP1\mathrm{OP_1} は円 CC の接線であることが従う。

方べきの定理 より OPnOQn=OP1OP1=1+i2=2\begin{aligned} \mathrm{OP}_n \cdot \mathrm{OQ}_n &= \mathrm{OP}_1 \cdot \mathrm{OP}_1\\ &= |1+i|^2 = 2 \end{aligned} が得られる。

条件より O\mathrm{O}Pn\mathrm{P}_nQn\mathrm{Q}_n は同一直線であるため,Qn\mathrm{Q}_nznz_n 実数倍です。

これに加えて最初の条件 OPnPn+1=90\angle \mathrm{O}\mathrm{P}_n \mathrm{P}_{n+1}= 90^{\circ}QnPnPn+1=90\angle \mathrm{Q}_n \mathrm{P}_n \mathrm{P}_{n+1} = 90^{\circ} と解釈し直すことで答えへの道が開けます。

第4問 (3)

Qn\mathrm{Q}_n を表す複素数を wnw_n とおく。

O\mathrm{O}Pn\mathrm{P}_nQn\mathrm{Q}_n は同一直線状にあるため,実数 lnl_n を用いて wn=lnznw_n = l_n z_n と表される。

(2) より znwn=2|z_n| \cdot |w_n| = 2 である。こうして lnzn2=2l_n |z_n|^2 = 2 となり wn=2znzn2 w_n = \dfrac{2z_n}{|z_n|^2} が得られる。

QnPnPn+1=90\angle \mathrm{Q}_n \mathrm{P}_n \mathrm{P}_{n+1} = 90^{\circ} であり,3点は同一円周上にある。円周角の定理より QnPn+1\mathrm{Q}_n \mathrm{P}_{n+1}CC の直径である。

こうして wnw_nzn+1z_{n+1} の中点は C\mathrm{C} すなわち 22 である。よって zn+1+wn2=2\dfrac{z_{n+1} + w_n}{2} = 2 である。式を変形することで zn+1=4wn=42znzn2\begin{aligned} z_{n+1} &= 4-w_n\\ &= 4 - \dfrac{2 z_n}{|z_n|^2} \end{aligned} が得られる。

この問題を数式的な処理で解いてみましょう。

第4問 (3) 別解

OPnPn+1=90\angle \mathrm{O} \mathrm{P}_n \mathrm{P}_{n+1} = 90^{\circ} という条件から argzn+1znzn=π2\arg \dfrac{z_{n+1} - z_n}{z_{n}} = \dfrac{\pi}{2} である。これより実数 knk_{n} を用いて zn+1znzn=kni \dfrac{z_{n+1} - z_n}{z_n} = k_n i と表すことができる。zn+1z_{n+1} について解くことで zn+1=(1+kni)zn z_{n+1} = (1+k_n i)z_n が得られる。

Pn+1\mathrm{P}_{n+1} は円 CC 上の点であるため zn+12=2 |z_{n+1} - 2| = \sqrt{2} となる。zn+1=(1+kni)znz_{n+1} = (1+k_n i)z_n を代入することで (1+kni)zn2=2 |(1+k_n i)z_n - 2| = \sqrt{2} が得られる。 (1+kni)zn22={(1+kni)zn2}{(1+kni)zn2}=1+kni2zn22(1+kni)zn2(1kni)zn+4=zn2+kn2zn22zn2zn+42kn(znzn)i=(zn22zn2zn+4)+kn2zn22kn(znzn)i=zn22+kn2zn22kn(znzn)i=kn2zn22kn(znzn)i+2\begin{aligned} &|(1+k_n i)z_n - 2|^2\\ &= \{(1+k_n i)z_n - 2\} \overline{\{(1+k_n i)z_n - 2\}}\\ &= |1+k_n i|^2 |z_n|^2 -2 (1+k_n i)z_n -2 (1-k_n i)\overline{z_n} +4\\ &= |z_n|^2 +k_n^2 |z_n|^2 -2z_n -2\overline{z_n} + 4 -2k_n (z_n - \overline{z_n})i\\ &= (|z_n|^2 -2z_n -2\overline{z_n} + 4) +k_n^2 |z_n|^2 -2k_n (z_n - \overline{z_n})i\\ &= |z_n - 2|^2 +k_n^2 |z_n|^2 -2k_n (z_n - \overline{z_n})i\\ &= k_n^2 |z_n|^2 -2k_n (z_n - \overline{z_n})i + 2 \end{aligned}

これにより (1+kni)zn22=22=2kn2zn22kn(znzn)i+2=2kn2zn22kn(znzn)i=0 |(1+k_n i)z_n - 2|^2 = \sqrt{2}^2 =2\\ k_n^2 |z_n|^2 -2k_n (z_n - \overline{z_n})i + 2 = 2\\ k_n^2 |z_n|^2 -2k_n (z_n - \overline{z_n})i =0 が得られる。こうして kn=0,2(znzn)zn2i k_n = 0, \dfrac{2(z_n - \overline{z_n})}{|z_n|^2} i となる。実際 znznz_n - \overline{z_n}znz_n は純虚数であるため,(znzn)i(z_n - \overline{z_n})i は実数となる。ゆえにこの2解は共に実数となる。

kn=0k_n = 0zn+1=znz_{n+1} = z_n を意味するため不適である。こうして kn=2(znzn)zn2ik_n = \dfrac{2(z_n - \overline{z_n})}{|z_n|^2} i であることが従う。

zn+1=(1+kni)znz_{n+1} = (1+k_n i)z_n に代入すると zn+1=(1+kni)zn=(12(znzn)zn2)zn=zn2(zn2zn2)zn2=zn+22zn2zn2\begin{aligned} z_{n+1} &= (1+k_n i)z_n\\ &= \left( 1-\dfrac{2(z_n - \overline{z_n})}{|z_n|^2} \right) z_n\\ &= z_n - \dfrac{2(z_n^2 - |z_n|^2)}{|z_n|^2}\\ &= z_n +2 - \dfrac{2 z_n^2}{|z_n|^2} \end{aligned} が得られる。

結果は異なるものの,2つの結果は本質的に同じ意味を持ちます。またこれら両方とも自然な計算によって求められるため,両者とも正答としました。意欲がある人は片方をもう片方に変形してみてください。

最後の問題は znz_n の極限を求める問題だといえます。

まずは実験をしてみましょう。 z3=175+15iz4=9929129iz5=577169+1169i z_3 = \dfrac{17}{5} + \dfrac{1}{5} i\\ z_4 = \dfrac{99}{29} - \dfrac{1}{29}i\\ z_5 = \dfrac{577}{169} + \dfrac{1}{169}i

yny_n はどんどん小さくなっています。図を描くと次のようになります。

pic01

ここから znz_n は円の端 2+22+\sqrt{2} に収束すると予想できますね。

それでは (3) で求めた漸化式を実部・虚部に分解して計算をしましょう。

第4問 (4)

znz_n は実数 xn,ynx_n,y_n により zn=xn+iynz_n = x_n + i y_n と表される。 xn+1+iyn+1=zn+1=42zn2zn=42(xn+iyn)xn2+yn2=42xnxn2+yn2i2ynxn2+yn2\begin{aligned} x_{n+1} + i y_{n+1} &= z_{n+1}\\ &= 4- \dfrac{2}{|z_n|^2} z_n\\ &= 4- \dfrac{2(x_n+iy_n)}{x_n^2+y_n^2}\\ &= 4-\dfrac{2x_n}{x_n^2+y_n^2} - i \dfrac{2y_n}{x_n^2+y_n^2} \end{aligned} であるため, {xn+1=42xnxn2+yn2yn+1=2ynxn2+yn2\begin{aligned}\begin{cases} x_{n+1} = 4 - \dfrac{2x_n}{x_n^2+y_n^2}\\ y_{n+1} = - \dfrac{2y_n}{x_n^2+y_n^2} \end{cases}\end{aligned} となる。

数学的帰納法により n2n \geqq 2zn>3|z_n| >3 を示す。

n=2n=2 のとき z2=1+3i=10>3|z_2|= |1+3i|=\sqrt{10}>3 である。

n=mn=m のときの成立を仮定する。zm>3|\overline{z_m}|>3 より 2zm<23<1\left| \dfrac{2}{\overline{z_m}} \right| <\dfrac{2}{3} < 1 である。よって zm+1+2zmzm+1+2zm<zm+1+1\begin{aligned} \left| z_{m+1} + \dfrac{2}{\overline{z_m}} \right| &\leqq |z_{m+1}| + \left| \dfrac{2}{\overline{z_m}} \right|\\ &< |z_{m+1}| + 1 \end{aligned} であるため,zm+1+1>4|z_{m+1}|+1>4 であり,zm+1>3|z_{m+1}|>3 である。こうして示された。これより xn2+yn2=zn2>9x_n^2+y_n^2 = |z_n|^2 >9 である。

yn+1=2znyn=2znyn<23yn\begin{aligned} |y_{n+1}| &= \left| \dfrac{2}{|z_n|} y_n \right|\\ &= \dfrac{2}{|z_n|} |y_{n}|\\ &< \dfrac{2}{3} |y_n|\\ \end{aligned} であることから,0<yn<(23)n0 < |y_n| < \left( \dfrac{2}{3} \right)^n が得られる。limn(23)n=0\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left( \dfrac{2}{3} \right)^n = 0 とはさみうちの原理より limnyn=0\displaystyle \lim_{n \to \infty} y_n = 0 である。

z22=2|z_2 - 2| = \sqrt{2} であることから (xn2)2+yn2=2(x_n - 2)^2 + y_n^2 = 2 が成立する。

n2n \geqq 2 とすると, xn=42xn1xn12+yn1242(xn12+yn12)xn12+yn12=2\begin{aligned} x_n &= 4 - \dfrac{2 x_{n-1}}{x_{n-1}^2 + y_{n-1}^2}\\ &\geqq 4 - \dfrac{2 (x_{n-1}^2 + y_{n-1}^2)}{x_{n-1}^2 + y_{n-1}^2} = 2 \end{aligned} である。よって n2n \geqq 2xn=2+2ynx_n = 2 + \sqrt{2 - y_n} である。

ゆえに limnxn=limn(2+2yn)=2+2\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} x_n &= \lim_{n \to \infty} (2 + \sqrt{2 - y_n})\\ &= 2 + \sqrt{2} \end{aligned} が得られる。

もちろん limnxn\displaystyle \lim_{n \to \infty} x_nyny_n 同様にはさみうちの原理により計算することもできますが,yn0y_n \to 0 と円の方程式から計算するほうが簡単です。

(3) の別解で得られた漸化式から同様に計算することができます。

第4問 (4) 別解

znz_n は実数 xn,ynx_n,y_n により zn=xn+iynz_n = x_n + i y_n と表される。 xn+1+iyn+1=zn+1=zn+2zn2zn2=xn+iyn+22(xn2yn2)+4xnynixn2+yn2=xn+4yn2xn2+yn2+i(yn4xnynxn2+yn2)\begin{aligned} x_{n+1} + i y_{n+1} &= z_{n+1}\\ &= z_n +2 - \dfrac{z_n^2}{|z_n|^2}\\ &= x_n + i y_n + 2 - \dfrac{2(x_n^2 - y_n^2) + 4x_n y_n i}{x_n^2+y_n^2}\\ &= x_n + \dfrac{4y_n^2}{x_n^2+y_n^2} + i \left( y_n - \dfrac{4x_n y_n}{x_n^2+y_n^2} \right) \end{aligned} であるため, {xn+1=xn+4yn2xn2+yn2yn+1=yn4xnynxn2+yn2\begin{aligned}\begin{cases} x_{n+1} = x_n + \dfrac{4y_n^2}{x_n^2+y_n^2}\\ y_{n+1} = y_n - \dfrac{4x_n y_n}{x_n^2+y_n^2} \end{cases}\end{aligned} となる。

yn+1=yn(14xnxn2+yn2) y_{n+1} = y_n \left( 1 - \dfrac{4x_n}{x_n^2+y_n^2} \right)

n2n \geqq 2 のとき,前の解答に述べたとおり 2xn2+29xn2+yn2(2+2)2 2 \leqq x_n \leqq 2 + \sqrt{2}\\ 9 \leqq x_n^2 + y_n^2 \leqq (2 + \sqrt{2})^2 である。ゆえに 142+2914xnxn2+yn2142(2+2)2 1 - 4 \cdot \dfrac{2 + \sqrt{2}}{9} \leqq 1 - \dfrac{4x_n}{x_n^2+y_n^2} \leqq 1 - 4 \cdot \dfrac{2}{(2 + \sqrt{2})^2} である。 ここで 142(2+2)2=12(642)=8211142+29=19492>1989\begin{aligned} 1 - 4 \cdot \dfrac{2}{(2 + \sqrt{2})^2} &= 1 - 2 (6-4\sqrt{2})\\ &= 8\sqrt{2} - 11\\ 1 - 4 \cdot \dfrac{2 + \sqrt{2}}{9} &= \dfrac{1}{9} - \dfrac{4}{9} \sqrt{2}\\ &> \dfrac{1}{9} - \dfrac{8}{9} \end{aligned} となる。 また 342<341.42=48.28<49682<9872299<4218211<492198211<19492<79\begin{aligned} 34 \sqrt{2} &< 34 \cdot 1.42\\ &= 48.28\\ &< 49\\ 68 \sqrt{2} &< 98\\ 72 \sqrt{2} - 99 &< 4 \sqrt{2} - 1\\ 8\sqrt{2} - 11 &< \dfrac{4}{9} \sqrt{2} - \dfrac{1}{9}\\ |8\sqrt{2} - 11| &< \left|\dfrac{1}{9} - \dfrac{4}{9} \sqrt{2}\right| < \dfrac{7}{9} \end{aligned} より 0<14xnxn2+yn2<79 0 < \left| 1 - \dfrac{4x_n}{x_n^2+y_n^2} \right| < \dfrac{7}{9} である。

こうして yn+1=14xnxn2+yn2yn<79yn\begin{aligned} |y_{n+1}| &= \left| 1 - \dfrac{4x_n}{x_n^2+y_n^2} \right| |y_n|\\ &< \dfrac{7}{9}|y_n| \end{aligned} となり 0<yn<(79)n1 0 < |y_n| < \left( \dfrac{7}{9} \right)^{n-1} が従う。 limn(79)n1=0 \lim_{n \to \infty} \left( \dfrac{7}{9} \right)^{n-1} = 0 とはさみうちの原理より limnyn=0\displaystyle \lim_{n \to \infty} y_n = 0 が従う。

前の解答同様に limnxn=limn(2+2yn)=2+2\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} x_n &= \lim_{n \to \infty} (2 + \sqrt{2 - y_n})\\ &= 2 + \sqrt{2} \end{aligned} が得られる。

znz_n の極限を直接計算する方法もあります。

第4問 (4) 別解 2

zn+1(2+2)=222zn=(22)zn2zn=(22)zn{zn(2+2)}=(22)znzn(2+2)<223zn(2+2)\begin{aligned} |z_{n+1} - (2+\sqrt{2})| &= \left| 2-\sqrt{2} - \dfrac{2}{\overline{z_n}} \right|\\ &= \left| \dfrac{(2-\sqrt{2}) \overline{z_n} - 2}{\overline{z_n}} \right|\\ &= \left| \dfrac{(2-\sqrt{2})}{\overline{z_n}} \{\overline{z_n} - (2+\sqrt{2})\} \right|\\ &= \left| \dfrac{(2-\sqrt{2})}{\overline{z_n}} \right| |z_n - (2+\sqrt{2})|\\ &< \dfrac{2-\sqrt{2}}{3} |z_n - (2+\sqrt{2})| \end{aligned} である。こうして 0<zn(2+2)<(223)n1 0 < |z_n - (2+\sqrt{2})| < \left( \dfrac{2-\sqrt{2}}{3} \right)^{n-1} である。

limn(223)n1=0\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left( \dfrac{2-\sqrt{2}}{3} \right)^{n-1} = 0 と,はさみうちの原理から limnzn(2+2)=0\displaystyle \lim_{n \to \infty} |z_n - (2+\sqrt{2})| =0 が得られる。よって limnzn=2+2\displaystyle\lim_{n \to \infty} z_n = 2+\sqrt{2} である。

ゆえに limnxn=2+2limnyn=0 \lim_{n \to \infty} x_n = 2+\sqrt{2}\\ \lim_{n \to \infty} y_n = 0 となる。

こちらのほうが簡潔に済みますね。数列 {an}\{ a_n \} の収束先を α\alpha と予想し anα|a_n - \alpha|00 に収束するという論法は非常に有用なので覚えておきましょう。

なお複素数列の収束については学習指導要領に明記されていないため,実部と虚部それぞれの収束として出題しました。

余談

znz_n をもう少しよく見てみましょう。 z1=1+iz2=3iz3=175+15iz4=9929129iz5=577169+1169i z_1 = 1+ i\\ z_2 = 3 - i\\ z_3 = \dfrac{17}{5} + \dfrac{1}{5} i\\ z_4 = \dfrac{99}{29} - \dfrac{1}{29}i\\ z_5 = \dfrac{577}{169} + \dfrac{1}{169}i

整数論に親しく勘が良い人ならすぐにある共通点に気付くでしょう。

yny_n の分子が 11 である?いえ,それ以上のものが眠っています。

xnx_n の分子と分母の差を順番に見ていきましょう。0,2,12,70,4080,2,12,70,408 ですね。

12202=132222=11722122=19922702=1577224082=1 1^2 - 2 \cdot 0^2 = 1\\ 3^2 - 2 \cdot 2^2 = 1\\ 17^2 - 2 \cdot 12^2 = 1\\ 99^2 - 2 \cdot 70^2 = 1\\ 577^2 - 2 \cdot 408^2 = 1

このように X22Y2=1X^2 - 2 Y^2 = 1 の解なっています。これは ペル方程式 と呼ばれます。ペル方程式は整数論において重要な方程式となります。このような複素数の問題と結びつくのはおもしろいですね。

X22Y2=1X^2 - 2 Y^2 = 1 の解は (3+22)n1=an+bn2(3+2\sqrt{2})^{n-1} = a_n + b_n \sqrt{2} により得られる数の組 (an,bn)(a_n , b_n) でつくされます。(なお,n1n-1 としてあるのは次に記す関係式の見栄えのためで,基本的には nn とすることが多いです。)この数列を用いると, {xn=ananbnyn=(1)n1anbn\begin{cases} x_n = \dfrac{a_n}{a_n - b_n}\\ y_n = \dfrac{(-1)^{n-1}}{a_n - b_n} \end{cases} となります。

帰納法により示してみましょう。

まず (3+22)n=(3+22)(an+bn2)=(3an+4bn)+(2an+3bn)2\begin{aligned} (3+2\sqrt{2})^n &= (3+2\sqrt{2}) (a_n + b_n \sqrt{2})\\ &= (3a_n + 4 b_n) + (2 a_n + 3b_n)\sqrt{2} \end{aligned} より {an+1=3an+4bnbn+1=2an+3bn\begin{cases} a_{n+1} = 3a_n + 4 b_n\\ b_{n+1} = 2 a_n + 3b_n \end{cases} となります。これにより an+1an+1bn+1=3an+4bn(3an+4bn)(2an+3bn)=3an+4bnan+bn\begin{aligned} &\dfrac{a_{n+1}}{a_{n+1} - b_{n+1}}\\ &= \dfrac{3a_n + 4b_n}{(3a_n + 4b_n) - (2a_n + 3 b_n)}\\ &= \dfrac{3a_n+4b_n}{a_n+b_n} \end{aligned} となります。

一方 xn+1=42xnxn2+yn2=42ananbnan2(anbn)2+1(anbn)2=42ananbn(anbn)2an2+1=42(an2anbn)an2+1=4an2+42an2+2anbnan2+1=2an2+2anbn+4(an22bn2)an2+an22bn2=6an2+2anbn8bn22an22bn2=2(3an+4bn)(anbn)2(an+bn)(anbn)=3an+4bnan+bn=an+1an+1bn+1\begin{aligned} x_{n+1} &= 4 - \dfrac{2x_n}{x_n^2+ y_n^2}\\ &= 4 - \dfrac{2\frac{a_n}{a_n-b_n}}{\frac{a_n^2}{(a_n-b_n)^2} + \frac{1}{(a_n- b_n)^2}}\\ &= 4- \dfrac{2 a_n}{a_n-b_n} \dfrac{(a_n-b_n)^2}{a_n^2 + 1}\\ &= 4 - \dfrac{2(a_n^2-a_nb_n)}{a_n^2+1}\\ &= \dfrac{4a_n^2 + 4 - 2a_n^2 + 2a_n b_n}{a_n^2+1}\\ &= \dfrac{2a_n^2 + 2a_n b_n + 4 (a_n^2 - 2b_n^2)}{a_n^2 + a_n^2 - 2b_n^2}\\ &= \dfrac{6a_n^2 + 2a_n b_n - 8 b_n^2}{2a_n^2 - 2 b_n^2}\\ &= \dfrac{2(3a_n + 4b_n)(a_n - b_n)}{2(a_n + b_n)(a_n - b_n)}\\ &= \dfrac{3a_n + 4b_n}{a_n + b_n} = \dfrac{a_{n+1}}{a_{n+1} - b_{n+1}} \end{aligned} と計算されます。

また yn+1=2ynxn2+yn2=2(1)n1anbn(anbn)2an2+1=2(1)n(anbn)an2+1=2(1)n(anbn)2(an2bn2)=(1)nan+bn=(1)nan+1bn+1\begin{aligned} y_{n+1} &= - \dfrac{2y_n}{x_n^2+y_n^2}\\ &= - \dfrac{2(-1)^{n-1}}{a_n - b_n} \dfrac{(a_n-b_n)^2}{a_n^2+1}\\ &= \dfrac{2(-1)^n (a_n-b_n)}{a_n^2+1}\\ &= \dfrac{2(-1)^n (a_n - b_n)}{2 (a_n^2- b_n^2)}\\ &= \dfrac{(-1)^n}{a_n + b_n}\\ &= \dfrac{(-1)^n}{a_{n+1} - b_{n+1}} \end{aligned} と計算されます。

さて an=12{(3+22)n1+(322)n1}bn=122{(3+22)n1(322)n1}\begin{aligned} a_n &= \dfrac{1}{2} \{ (3+2\sqrt{2})^{n-1} + (3-2\sqrt{2})^{n-1} \}\\ b_n &= \dfrac{1}{2\sqrt{2}} \{ (3+2\sqrt{2})^{n-1} - (3-2\sqrt{2})^{n-1} \} \end{aligned} となるので limnanbn=limn(3+22)n1+(322)n1(3+22)n1(322)n12=limn1+(3223+22)n11(3223+22)n12=2\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_n}{b_n} &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{(3+2\sqrt{2})^{n-1} + (3-2\sqrt{2})^{n-1}}{(3+2\sqrt{2})^{n-1} - (3-2\sqrt{2})^{n-1}} \sqrt{2}\\ &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{1 + \left( \frac{3-2\sqrt{2}}{3 + 2\sqrt{2}} \right)^{n-1}}{1 - \left( \frac{3-2\sqrt{2}}{3 + 2\sqrt{2}} \right)^{n-1}} \sqrt{2} = \sqrt{2} \end{aligned} となります。

また limnan=\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \infty と合わせて limnxn=limnananbn=limnanbnanbn1=221=2+2limnyn=limn(1)n1anbn=limn(1)n1an(1bnan)=0\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} x_n &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_n}{a_n - b_n}\\ &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{\frac{a_n}{b_n}}{\frac{a_n}{b_n} - 1}\\ &= \dfrac{\sqrt{2}}{\sqrt{2} - 1}\\ &= 2 + \sqrt{2}\\ \lim_{n \to \infty} y_n &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{(-1)^{n-1}}{a_n- b_n}\\ &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{(-1)^{n-1}}{a_n \left( 1 - \frac{b_n}{a_n} \right)}\\ &= 0 \end{aligned} となります。