ヤングの不等式の3通りの証明

更新日時 2022/04/08
ヤングの不等式(Young's inequality)

a,b>0,p,q>1,1p+1q=1a, b > 0,\:\:p,q > 1,\:\:\dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q}=1 のとき,

app+bqqab\dfrac{a^p}{p}+\dfrac{b^q}{q}\geq ab

目次
  • ヤングの不等式

  • 1:積分を用いて図形的に証明する方法

  • 2:イェンゼンの不等式を用いる方法

  • 3:重み付き相加相乗平均の不等式を用いる方法

ヤングの不等式

  • ヤングの不等式 app+bqqab\dfrac{a^p}{p}+\dfrac{b^q}{q}\geq ab は,シンプルで美しい不等式です。ヘルダーの不等式など,他の不等式の証明に使うこともあります。→ミンコフスキーの不等式とその証明

  • ヤングの不等式の証明は,少なくとも3通りあります。

  1. 積分を用いて図形的に証明する方法
  2. イェンゼンの不等式を用いる方法
  3. 重み付き相加相乗平均の不等式を用いる方法
  • ヤングの不等式にまつわる入試問題は頻出(特に以下で述べる証明1)です。

1:積分を用いて図形的に証明する方法

方針

以下の,より一般的な不等式を示します:

単調増加な連続関数 f(x)f(x) とその逆関数 g(x)g(x) において,f(0)=0f(0)=0 のとき, 0af(t)dt+0bg(t)dtab\displaystyle\int_0^af(t)dt+\int_0^bg(t)dt\geq ab であり,この式に f(x)=xp1f(x)=x^{p-1} を用いればヤングの不等式が得られます。なお,この式を「積分形のヤングの不等式」ということもあります。

証明

ヤングの不等式

積分形のヤングの不等式の左辺第一項は赤い部分の面積。左辺第二項は青い部分の面積。右辺は紫の長方形の面積。

よって不等式は成立。

ここで,f(x)=xp1f(x)=x^{p-1} とおくと,1p1=q1\dfrac{1}{p-1}=q-1 より逆関数は g(x)=xq1g(x)=x^{q-1} となる。

よって,0af(t)dt=app\displaystyle\int_0^af(t)dt=\dfrac{a^p}{p} などにより,積分形のヤングの不等式から「もとのヤングの不等式」が得られる。

なお,逆関数の求め方については逆関数の3つの定義と使い分けを参照してください。

2:イェンゼンの不等式を用いる方法

方針

係数の和が 11 なのでイェンゼンの不等式が使えそうな形です。

証明

f(x)=exf(x)=e^x とおくと,f(x)=ex>0f''(x)=e^x>0 より f(x)f(x) は凸関数である。よってイェンゼンの不等式より,

f(x)p+f(y)qf(xp+yq) \dfrac{f(x)}{p}+\dfrac{f(y)}{q}\geq f\left(\dfrac{x}{p}+\dfrac{y}{q}\right)

つまり,exp+eyqexpeyq\dfrac{e^x}{p}+\dfrac{e^y}{q}\geq e^{\tfrac{x}{p}}e^{\tfrac{y}{q}} である。

ここで,x=ploga,y=qlogbx=p\log a,y=q\log b とおくとヤングの不等式を得る。

3:重み付き相加相乗平均の不等式を用いる方法

方針

係数の和が 11 なので重み付き相加相乗平均の不等式も使えそうです。

証明

重み付き相加相乗平均の不等式: w1a1+w2a2a1w1a2w2w_1a_1+w_2a_2\geq a_1^{w_1}a_2^{w_2} において,

w1=1p,w2=1qw_1=\dfrac{1}{p},w_2=\dfrac{1}{q}a1=ap,a2=bqa_1=a^p, a_2=b^q とおくとヤングの不等式になる。

つまり, ヤングの不等式は重み付き相加相乗平均の不等式の特殊形とみることもできます。

積分を用いた導出はなかなか美しいです。