等号成立条件の確認が必要な場合・不要な場合
等号成立条件(不等式において,どのような場合に等号が成立するか?)について,以下の2つの話題です。
- 等号成立条件を確認しないといけない問題・確認しなくてもよい問題
- 等号成立条件のパターン
等号成立条件の確認が不要な場合
等号成立条件の確認が不要な場合
以下のような不等式の証明問題では,等号成立条件を確認する必要はありません。
の範囲で という不等式が成立することを証明せよ。
両辺は 以上であり,証明すべき不等式の両辺を二乗すると,
これを整理すると,
左辺を因数分解すると,
最後の不等式は成立するので,元の不等式も成立する。
- 等号成立条件は「 の場合」つまり「 の場合」とわかります。
- ですが,問題では等号が成立する場合について問われていないので,等号成立条件を書く必要はありません。
- 等号成立条件を書いてもよいですが,「等号成立条件を書かないと減点」というのはおかしいです。
- もちろん,問題文に「等号が成立するのはどのようなときか?」など書かれている場合は確認が必要です。
等号成立条件の確認が必要な場合
等号成立条件の確認が必要な場合
以下のような「不等式を使って関数の最大値・最小値を求める問題」では等号成立条件の確認が必要です。
の範囲で の最小値を求めよ。
例題1で見たように,
- となる。
- そして, のときに等号が成立する。
よって, の最小値は
- 「2以上」だけでは「最小値が2」とは言えません。
- 「2以上」と「2になる場合がある」の両方がわかってはじめて「最小値が2」と言えます。
- そして「2になる場合がある」を主張するために等号成立条件の確認が必要です。
等号が成立しない不等式もある
等号が成立しない不等式もある
以下のように「等号が成立する場合は無いが正しい不等式」もあります。
は「等しいまたは大きい」という意味であり,等しい場合が無くてもよいわけです。
等号が成立する場合がないので,「ギリギリを攻めていない弱い不等式」と言えますが,不等式としては完全に正しいです。
等号成立条件のいろいろなパターン
等号成立条件のいろいろなパターン
等号成立条件は「複数の変数の値が同じ場合」ということが多いです。特に多変数の対称な不等式ではこのパターンが多いです。例えば,
- の等号成立条件は
→相加相乗平均の不等式:意味:例題:おもしろい証明 - の等号成立条件は
→有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+caのいろいろな証明 - 周の長さが一定である長方形の中で,面積が最大のものは正方形。
→等周問題に関連する高校数学の問題
また,マクローリン展開・テイラー展開が背景にある不等式では,展開する点において等号が成立します。例えば,
- の等号成立条件は
→有名不等式logx≦x-1の証明と入試問題 - の等号成立条件は
他にも,比が一定のとき等号成立というパターンもあります。例えば,
※これらのパターンを覚える必要は無いです。
確認が必要な場面で確認しないのは「絶対ダメ」です。確認が不要な場面で確認するのは「絶対ダメ」ではないですが冗長です。