等号成立条件の確認が必要な場合・不要な場合

等号成立条件(不等式において,どのような場合に等号が成立するか?)について,以下の2つの話題です。

  1. 等号成立条件を確認しないといけない問題・確認しなくてもよい問題
  2. 等号成立条件のパターン

等号成立条件の確認が不要な場合

以下のような不等式の証明問題では,等号成立条件を確認する必要はありません。

例題1

x>0x>0 の範囲で x+1x2x+\dfrac{1}{x}\geq 2 という不等式が成立することを証明せよ。

解答

両辺は 00 以上であり,証明すべき不等式の両辺を二乗すると,

(x+1x)24\left(x+\dfrac{1}{x}\right)^2\geq 4

これを整理すると,

x2+2+1x24x^2+2+\dfrac{1}{x^2}\geq 4
x22+1x20x^2-2+\dfrac{1}{x^2}\geq 0

左辺を因数分解すると, (x1x)20\left(x-\dfrac{1}{x}\right)^2\geq 0

最後の不等式は成立するので,元の不等式も成立する。

  • 等号成立条件は「x1x=0x-\dfrac{1}{x}=0 の場合」つまり「x=1x=1 の場合」とわかります。
  • ですが,問題では等号が成立する場合について問われていないので,等号成立条件を書く必要はありません。
  • 等号成立条件を書いてもよいですが,「等号成立条件を書かないと減点」というのはおかしいです。
  • もちろん,問題文に「等号が成立するのはどのようなときか?」など書かれている場合は確認が必要です。

等号成立条件の確認が必要な場合

以下のような「不等式を使って関数の最大値・最小値を求める問題」では等号成立条件の確認が必要です。

例題2

x>0x>0 の範囲で x+1xx+\dfrac{1}{x} の最小値を求めよ。

解答

例題1で見たように,

  • x+1x2x+\dfrac{1}{x}\geq 2 となる。
  • そして,x=1x=1 のときに等号が成立する。

よって,x+1xx+\dfrac{1}{x} の最小値は 22

  • 「2以上」だけでは「最小値が2」とは言えません。
  • 「2以上」と「2になる場合がある」の両方がわかってはじめて「最小値が2」と言えます。
  • そして「2になる場合がある」を主張するために等号成立条件の確認が必要です。

等号が成立しない不等式もある

以下のように「等号が成立する場合は無いが正しい不等式」もあります。

  • x+1x10000(x>0)x+\dfrac{1}{x}\geq -10000\:(x>0)
  • 212\geq 1
  • x21x^2\geq -1

\geq は「等しいまたは大きい」という意味であり,等しい場合が無くてもよいわけです。

等号が成立する場合がないので,「ギリギリを攻めていない弱い不等式」と言えますが,不等式としては完全に正しいです。

等号成立条件のいろいろなパターン

等号成立条件は「複数の変数の値が同じ場合」ということが多いです。特に多変数の対称な不等式ではこのパターンが多いです。例えば,

また,マクローリン展開・テイラー展開が背景にある不等式では,展開する点において等号が成立します。例えば,

他にも,比が一定のとき等号成立というパターンもあります。例えば,

※これらのパターンを覚える必要は無いです。

確認が必要な場面で確認しないのは「絶対ダメ」です。確認が不要な場面で確認するのは「絶対ダメ」ではないですが冗長です。