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ベルヌーイの不等式

更新日時 2021/03/07

ベルヌーイの不等式:

任意の正の整数 nn1-1 より大きい実数 xx に対して,

(1+x)n1+nx(1+x)^n\geq 1+nx

目次
  • ベルヌーイの不等式のいろいろなタイプ

  • ベルヌーイの不等式1の証明

  • ベルヌーイの不等式2の証明

  • ベルヌーイの不等式の応用例

ベルヌーイの不等式のいろいろなタイプ

いずれもベルヌーイの不等式と呼ばれます。

1: xx たちが異なるバージョン

任意の正の整数 nn1-1 より大きく 全て符号が等しい実数 x1,x2,,xnx_1,\:x_2,\cdots,x_n に対して,

i=1n(1+xi)1+i=1nxi\displaystyle\prod_{i=1}^n(1+x_i)\geq 1+\sum_{i=1}^nx_i

この式で x1=x2==xn=xx_1=x_2=\cdots =x_n=x とすると冒頭のベルヌーイの不等式になります。

2: nn を実数 α\alpha に拡張したバージョン

実数 α\alpha1-1 より大きい実数 xx に対して,

(1+x)α1+αx(α0,1α)(1+x)^{\alpha}\geq 1+\alpha x\:\:(\alpha\leq 0,\:1\leq \alpha)

(1+x)α1+αx(0α1)(1+x)^{\alpha}\leq 1+\alpha x\:\:(0\leq \alpha \leq 1)

高校物理でよく登場する近似式 (1+x)α1+αx(1+x)^{\alpha}\simeq 1+\alpha x に似ています。

覚えるならこのバージョンがオススメです。

ベルヌーイの不等式1の証明

ベルヌーイの不等式バージョン1は数学的帰納法で証明できます。

1の証明

n=1n=1 のとき両辺共に 1+xi1+x_i となるので成立。

n=k1n=k-1 のとき,

i=1k1(1+xi)1+i=1k1xi\displaystyle\prod_{i=1}^{k-1}(1+x_i)\geq 1+\sum_{i=1}^{k-1}x_i

と仮定すると,両辺に (1+xk)(1+x_k) をかけることにより,i=1k(1+xi)(1+i=1k1xi)(1+xk)=1+i=1kxi+xk(i=1k1xi)1+i=1kxi\displaystyle\prod_{i=1}^{k}(1+x_i)\geq (1+\sum_{i=1}^{k-1}x_i)(1+x_k)\\ =\displaystyle 1+\sum_{i=1}^{k}x_i+x_k(\sum_{i=1}^{k-1}x_i)\\ \geq 1+\displaystyle\sum_{i=1}^{k}x_i

(ただし,最後の不等号は xix_i たちが全て同符号であることによる)

となり n=kn=k のときも成立する。

ベルヌーイの不等式2の証明

ベルヌーイの不等式バージョン2は微分で証明できます。

2の証明

f(x)=(1+x)α(1+αx)f(x)=(1+x)^{\alpha}-(1+\alpha x)

とおく。

ここで,f(x)=α((1+x)α11)f'(x)=\alpha((1+x)^{\alpha-1}-1)

f(0)=0f(0)=0 に注意して f(x)f'(x) の符号を考える。

例えば α1\alpha \geq 1 のとき,

(1+x)α11(1+x)^{\alpha-1} - 1 の符号は,

x>0x > 0 のとき正,x<0x <0 のとき負となるので,f(x)0f(x)\geq 0 が分かる。

他の場合も同様。

ベルヌーイの不等式の応用例

ベルヌーイの不等式を用いるIMO Shortlist 2006の問題です。かなりの難問です。

問題

a,b,ca,\:b,\:c が三角形の三辺の長さであるとき以下の不等式を証明せよ:

cycb+cab+ca3\displaystyle\sum_{\mathrm{cyc}}\dfrac{\sqrt{b+c-a}}{\sqrt{b}+\sqrt{c}-\sqrt{a}}\leq 3

ただし,cycf(a,b,c)=f(a,b,c)+f(b,c,a)+f(c,a,b)\displaystyle\sum_{\mathrm{cyc}}f(a,b,c)=f(a,b,c)+f(b,c,a)+f(c,a,b) です。

方針:分母が邪魔なので変数変換→ベルヌーイの不等式→Schurの不等式,という三連発です。

解答

分母を払うために,

b+ca=x,c+ab=y,a+bc=z\sqrt{b}+\sqrt{c}-\sqrt{a}=x,\:\sqrt{c}+\sqrt{a}-\sqrt{b}=y,\:\sqrt{a}+\sqrt{b}-\sqrt{c}=z と変数変換する。

逆変換は a=(y+z2)2a=(\dfrac{y+z}{2})^2 などとなり,これを用いて頑張って計算すると,

b+cab+ca=x2+xy+zxyz2x2\dfrac{\sqrt{b+c-a}}{\sqrt{b}+\sqrt{c}-\sqrt{a}}=\sqrt{\dfrac{x^2+xy+zx-yz}{2x^2}}

ルートを外したいので α=12\alpha=\dfrac{1}{2} のベルヌーイの不等式を用いる。そのためにルートの中身を (1+X)(1+X) という形にする:

x2+xy+zxyz2x2=1(xy)(xz)2x21(xy)(xz)4x2\sqrt{\dfrac{x^2+xy+zx-yz}{2x^2}}=\sqrt{1-\dfrac{(x-y)(x-z)}{2x^2}}\\\leq 1-\dfrac{(x-y)(x-z)}{4x^2}

これを用いて左辺を整理すると,r=2r=-2 の場合の(一般化された)Schurの不等式となる:

cyc(xy)(xz)x20\displaystyle\sum_{\mathrm{cyc}}\dfrac{(x-y)(x-z)}{x^2}\geq 0

久しぶりの新しい不等式です!

Tag:各地の数オリの過去問

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