ベルヌーイの不等式

ベルヌーイの不等式

任意の正の整数 nn と −1-1 より大きい実数 xx に対して, (1+x)n≥1+nx(1+x)^n\geq 1+nx が成立する。

ベルヌーイの不等式のいろいろなタイプ

いずれもベルヌーイの不等式と呼ばれます。

x たちが異なるバージョン

任意の正の整数 nn と,−1-1 より大きく全て符号が等しい実数 x1, x2,⋯ , xnx_1,\:x_2,\cdots,\:x_n に対して,

∏i=1n(1+xi)≥1+∑i=1nxi \prod_{i=1}^n(1+x_i)\geq 1+\sum_{i=1}^nx_i

この式で x1=x2=⋯=xn=xx_1=x_2=\cdots =x_n=x とすると冒頭のベルヌーイの不等式になります。

n を実数に拡張したバージョン

実数 α\alpha と −1-1 より大きい実数 xx に対して,

  • (1+x)α≥1+αx  (α≤0, 1≤α)(1+x)^{\alpha}\geq 1+\alpha x\:\:(\alpha\leq 0,\:1\leq \alpha)
  • (1+x)α≤1+αx  (0≤α≤1)(1+x)^{\alpha}\leq 1+\alpha x\:\:(0\leq \alpha \leq 1)

高校物理でよく登場する近似式 (1+x)α≒1+αx(1+x)^{\alpha}\fallingdotseq 1+\alpha x に似ています。覚えるならこのバージョンがオススメです。

ベルヌーイの不等式の証明1

まずは,べルヌーイの不等式の xx たちが異なるバージョン

∏i=1n(1+xi)≥1+∑i=1nxi \prod_{i=1}^n(1+x_i)\geq 1+\sum_{i=1}^nx_i

を証明します。数学的帰納法で証明できます。

証明

n=1n=1 のとき,両辺共に 1+xi1+x_i となるので成立。

n=k−1n=k-1 のとき,

∏i=1k−1(1+xi)≥1+∑i=1k−1xi \prod_{i=1}^{k-1}(1+x_i)\geq 1+\sum_{i=1}^{k-1}x_i

と仮定すると,両辺に (1+xk)(1+x_k) をかけることにより,

∏i=1k(1+xi)≥(1+∑i=1k−1xi)(1+xk)=1+∑i=1kxi+xk(∑i=1k−1xi)≥1+∑i=1kxi\begin{aligned} \prod_{i=1}^{k} (1+x_i) &\geq \left( 1+\sum_{i=1}^{k-1}x_i \right)(1+x_k)\\ &=1+\sum_{i=1}^{k}x_i+x_k \left(\sum_{i=1}^{k-1}x_i \right)\\ &\geq 1+ \sum_{i=1}^{k}x_i \end{aligned}

(ただし,最後の不等号は xix_i たちが全て同符号であることによる)

となり n=kn=k のときも成立する。

ベルヌーイの不等式の証明2

ベルヌーイの不等式の「nn を実数に拡張したバージョン」は微分で証明できます。

2の証明

f(x)=(1+x)α−(1+αx)f(x)=(1+x)^{\alpha}-(1+\alpha x) とおく。

ここで,f′(x)=α{(1+x)α−1−1}f'(x)=\alpha\{(1+x)^{\alpha-1}-1\},f(0)=0f(0)=0 に注意して f′(x)f'(x) の符号を考える。

例えば α≥1\alpha \geq 1 のとき, (1+x)α−1−1(1+x)^{\alpha-1} - 1 の符号は, x>0x > 0 のとき正,x<0x < 0 のとき負となるので,f(x)≥0f(x)\geq 0 が分かる。

他の場合も同様である。

ベルヌーイの不等式の応用例

ベルヌーイの不等式を用いる IMO Shortlist 2006 の問題です。かなりの難問です。

問題

a, b, ca,\:b,\:c が三角形の3辺の長さであるとき,以下の不等式を証明せよ:

∑cycb+c−ab+c−a≤3 \sum_{\mathrm{cyc}}\dfrac{\sqrt{b+c-a}}{\sqrt{b}+\sqrt{c}-\sqrt{a}}\leq 3

ただし,∑cycf(a,b,c)=f(a,b,c)+f(b,c,a)+f(c,a,b)\displaystyle\sum_{\mathrm{cyc}}f(a,b,c)=f(a,b,c)+f(b,c,a)+f(c,a,b) です。

方針

「分母が邪魔なので変数変換」→「ベルヌーイの不等式」→「Schur の不等式」という三連発です。

解答

分母を払うために,

  • b+c−a=x\sqrt{b}+\sqrt{c}-\sqrt{a}=x
  • c+a−b=y\sqrt{c}+\sqrt{a}-\sqrt{b}=y
  • a+b−c=z\sqrt{a}+\sqrt{b}-\sqrt{c}=z

と変数変換する。

逆変換は a=(y+z2)2a=\left(\dfrac{y+z}{2}\right)^2 などとなり,これを用いて頑張って計算すると,

b+c−ab+c−a=x2+xy+zx−yz2x2 \dfrac{\sqrt{b+c-a}}{\sqrt{b}+\sqrt{c}-\sqrt{a}}=\sqrt{\dfrac{x^2+xy+zx-yz}{2x^2}}

ルートを外したいので α=12\alpha=\dfrac{1}{2} のベルヌーイの不等式を用いる。そのためにルートの中身を (1+X)(1+X) という形にする:

x2+xy+zx−yz2x2=1−(x−y)(x−z)2x2≤1−(x−y)(x−z)4x2\begin{aligned} \sqrt{\dfrac{x^2+xy+zx-yz}{2x^2}} &=\sqrt{1-\dfrac{(x-y)(x-z)}{2x^2}}\\ &\leq 1-\dfrac{(x-y)(x-z)}{4x^2} \end{aligned}

これを用いて左辺を整理すると,r=−2r=-2 の場合のSchurの不等式となる。

∑cyc(x−y)(x−z)x2≥0 \sum_{\mathrm{cyc}}\dfrac{(x-y)(x-z)}{x^2}\geq 0

久しぶりの新しい不等式です!

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