ガウス関数と極限の融合問題~京大特色2025第1問

京大特色2025 第1問

nn を自然数とする。実数 xx に対し,xx を超えない最大の整数を [x][x] とし,f(x)=x[x]f(x) = x - [x] と定める。このとき,11 よりも大きく,かつ整数でないような実数 xx のうちで, limnf(1nf(xn))=12 \lim_{n \to \infty} f \left( \dfrac{1}{nf(\sqrt[n]{x})} \right) = \dfrac{1}{2} を満たすものをすべて求めよ。

この記事では京大特色2025の第1問を解説します。ガウス記号が絡んだ極限の問題です。様々な要素が組み合わさった難問です。

解答

頭に入れておきたいアイデア

  • 小難しいものは分割する!→ f(xn)f(\sqrt[n]{x}) から調べる
  • 一旦 1nf(xn)\dfrac{1}{nf(\sqrt[n]{x})}nn \to \infty してみる。
  • 必要条件と十分条件に分割して考える。
  • ガウス記号の難問が出たときは不等式を活用!: [x]x<[x]+1x1<[x]x\begin{aligned} [x] \leqq x& < [x]+1\\ x-1 < [x]& \leqq x \end{aligned} → 特に挟みうちの原理の形に持っていきやすい。
証明

limnxn=1\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{x} = 1 であるため,十分大きい nn に対して f(xn)=xn1f(\sqrt[n]{x}) = \sqrt[n]{x} - 1 となる。

よって,十分大きい nn に対して 1nf(xn)=1n0x1n1 \dfrac{1}{n f(\sqrt[n]{x})} = \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} である。

f(1nf(xn))=1n0x1n1[1n0x1n1]\begin{aligned} f \left( \dfrac{1}{nf(\sqrt[n]{x})} \right) &= \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} - \left[ \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} \right] \end{aligned}

g(t)=xtg(t) = x^{t} とおくと limn1n0x1n1={g(0)}1=1logx \lim_{n \to \infty} \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} = \{ g'( 0 ) \}^{-1} = \dfrac{1}{\log x} である。

解の必要条件

N=1logx12 N = \dfrac{1}{\log x} - \dfrac{1}{2} とおくと, limn[1n0x1n1]=N \lim_{n \to \infty} \left[ \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} \right] = N である。

[1n0x1n1]\left[ \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} \right] は整数であるため,NN も整数である。加えて x>1x > 1 としていることから N0N \geqq 0 である。

よって,xx が題意を満たすのであれば,非負整数 NN を用いて x=e22N+1x = e^{\frac{2}{2N+1}} と表される。(解の必要条件)

解の十分条件

十分性を示す。つまり,逆に x=e22N+1x = e^{\frac{2}{2N+1}} のとき,題意を満たすことを確認する。

このような xx において limn1n0x1n1=1logx=1loge22N+1=N+12\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} &= \dfrac{1}{\log x} \\ &= \dfrac{1}{\log e^{\frac{2}{2N+1}}}\\ &= N + \dfrac{1}{2} \end{aligned} である。

ガウス関数の性質より 1n0x1n11<[1n0x1n1]1n0x1n1 \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} - 1 < \left[ \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} \right] \leqq \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} である。各辺について nn \to \infty を考えると N12<limn[1n0x1n1]N+12 N - \dfrac{1}{2} < \lim_{n \to \infty} \left[ \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} \right] \leqq N + \dfrac{1}{2} となる。今,NN は整数であるため limn[1n0x1n1]=N \lim_{n \to \infty} \left[ \dfrac{\frac{1}{n} - 0}{x^{\frac{1}{n}}-1} \right] = N を得る。

したがって x=e22N+1x = e^{\frac{2}{2N+1}} は題意を満たす。

以上より求める答えは x=e22N+1 (n=0,1,2,)x = e^{\frac{2}{2N+1}} \ (n = 0,1,2,\cdots) である。

x=e22N+1x = e^{\frac{2}{2N+1}} が整数ではないこと

xx が整数であると仮定すると x2N+1=e2x^{2N+1} = e^2 であるため,e2e^2 も整数である。

よって e2e^2 が整数ではないことを示せば十分である。

2.7<e<2.8 2.7 < e < 2.8 より 7.29<e2<7.84 7.29 < e^2 < 7.84 より e2e^2 は整数ではない。よって示された。

少々手が付きにくい問題でした。