素因数の数の評価~京大特色2024
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以上の自然数 に対して, を割り切る素数の個数を とする。例えば のとき, を割り切る素数は と と なので, である。不等式 を満たす 以上の自然数 をすべて求めよ。
京大の特色入試の問題を解説します。
素因数の数を評価していきます。
方針
方針
まず,具体例でいろいろ実験しましょう。
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が素数の場合, であるため を満たす は か です。
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のとき となりうまくいきます。
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素因数の数が増えると, よりも の方が大きくなって厳しそうです。例えば, のとき, であり, です。そして, の素因数の数が であれば, より です。よって,素因数の数が つあるとダメです。
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つ以上でもダメそうですね。 つ以下ならしらみつぶしに調べられそうです。
解答
解答
ステップ1: が大きいとダメ
とおく。 のとき,条件を満たす が存在しないことを示す。
のとき ,変形して であることを示せばよい。
番目の素数を とおくと, となる。
となる。よって という不等式を示すには すなわち が成立することを示せばよい。
これを数学的帰納法で証明する。
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のとき である。
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で不等式が成立すると仮定する。
のとき こうして で不等式が成立すると仮定した場合, で不等式が成立することが従う。
よって,数学的帰納法から の自然数に対して不等式 が成立することが分かる。
以上より のとき,条件を満たす は存在しない。
ステップ1について,よりテクニカルでおもしろい変形も紹介します。
は 番目の奇数以上になるため,, となる。
よって である。
よって のとき となる。
としているため,必ず となり,少なくとも であることが分かります。
また 番目の素数は 番目の奇数以上であることは覚えておきましょう。今回は使いませんでしたが, であれば,真に大きくなります。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
番目の素数 | 2 | 3 | 5 | 7 | 11 | 13 | 17 |
番目の奇数 | 1 | 3 | 5 | 7 | 9 | 11 | 13 |
ステップ2: が3以下のときを調べる
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のとき
のみだが,このとき条件は満たされない。 -
のとき
に を代入すると,,つまり を得る。
このうち素因数が1つであるものは である。 -
のとき
に を代入して変形すると, を得る。
このうち素因数が2つであるものは である。 -
のとき
に を代入して変形すると, を得る。
このうち素因数が3つであるものは だけである。
のときに とおきたくなりますが,正しくは となります。
ここでミスをしまうと, のときに , のときに が条件を満たすことをスルーしてしまう可能性があります。
以上をまとめると,求める は である。
全体を通したコメント
全体を通したコメント
見慣れない関数が登場して戸惑うかもしれませんが,実はそんなに難しい関数ではありませんね。
整数問題の基本「「具体例で実験する」「不等式で解の範囲を絞る」に則れば簡単に解けます。
ただし,絞るアプローチが からというのは気付きにくいかもしれませんね。
もう少し深い話
もう少し深い話
ハーディとラマヌジャンによって次の定理が証明されています。
と は正の実数とする。このとき,ほとんどの自然数 で となる。
※ 厳密に主張を書くと,やや大変なので若干誤魔化した表現をしています。ご了承ください。
ここで , とすると,ほとんどすべての で が成立することが分かります。
の増加ペースは と比べてかなり遅いので,だいたいの で となることが予想できますね。
因みにこの「ハーディ」と「ラマヌジャン」はタクシー数のエピソードで有名なハーディとラマヌジャンです。
最初は という不等式から帰納法を使おうとしましたが,この場合 , となってしまいました。