累乗根の定義と具体例

aa に対して,nn 乗して aa になるような数aann 乗根という。

なお,特定の nn を意識しない場合はまとめて累乗根とも言います。累乗根・nn 乗根について詳しく解説します。

正の実数の範囲での累乗根

正の実数 aa11 以上の整数 nn に対し,nn 乗して aa になるような正の実数ちょうどひとつあります。

根号(ルート)を用いて an\sqrt[n]{a} あるいは a1na^{\frac{1}{n}} と書きます。

特に2乗根を平方根,3乗根を立方根といいます。

  • 252=5\sqrt[2]{25} = 5 である。なぜなら,5522 乗すると 2525 になるから。
  • 643=4\sqrt[3]{64} = 4 である。なぜなら,4433 乗すると 6464 になるから。
  • 102410=2\sqrt[10]{1024} = 2 である。なぜなら,221010 乗すると 10241024 になるから

なお,n=2n=2 のときの a2\sqrt[2]{a} は,単に a\sqrt{a} とも書きます。正の平方根のことです。

では,nn 乗して aa になる正の実数がちょうどひとつあることを証明しておきましょう。

ちょうどひとつあることの証明

関数 f(x)=xnf(x) = x^nx>0x > 0 の範囲で狭義単調増加である。

よって xn=ax^n = a となるような x>0x > 0 は高々ひとつである。

また十分大きい c>0c > 0 に対して 0<a<f(c)=cn0 < a < f(c) = c^n だから,中間値の定理より 00cc の間に xn=ax^n = a を満たす xx が少なくともひとつ存在する。

よって xn=ax^n = a を満たす x>0x > 0 はちょうどひとつ存在する。

このように正の実数に対しては,その nn 乗根が正の実数の範囲にちょうどひとつ存在します。

しかし範囲を広げて考えると,累乗根は複数存在する場合があります。例えば,2,2\sqrt{2}, -\sqrt{2} は両方とも 22 の2乗根です。

以下では複素数の範囲で累乗根について考えます。

複素数の範囲での累乗根

複素数の範囲では累乗根は一般に複数個存在します。

11nn 乗根

まずは 11nn 乗根から調べていきましょう。

11 の2乗根は ±1\pm 1 の2つでした。

11 の3乗根は 11 自身の他に ω=1+3i2,ω2=13i2\omega = \dfrac{-1 + \sqrt{3}i}{2}, \omega^2 = \dfrac{-1 - \sqrt{3}i}{2} があります。

一般に次の事実が成立します。

定理

nn は正の整数とする。

11nn 乗根は,複素数の範囲でちょうど nn 個存在し,

e2kπni=cos2kπn+isin2kπn(k=0,1,,n1) e^{\frac{2 k\pi}{n}i} = \cos \dfrac{2 k\pi}{n} + i \sin \dfrac{2 k\pi}{n} \quad (k = 0,1, \cdots, n-1)

で過不足なく表される。

複素平面上に図示すると次のようになります。

pic01

オイラーの公式 により e2kπni=cos2kπn+isin2kπne^{\frac{2k \pi}{n}i} = \cos \dfrac{2k \pi}{n} + i \sin \dfrac{2k \pi}{n} であることに注意しましょう。三角関数で表されることは「補足」の証明で用います。

証明

11nn 乗根は,xn=1x^n = 1 の解である。

ゆえに xn=1x^n=1 の解が,e2kπni  (k=0,1,,n1)e^{\frac{2k \pi}{n}i} \; (k=0,1,\cdots ,n-1) で過不足なく表されることを示せばよい。

  1. e2kπnie^{\frac{2k \pi}{n}i} はそれぞれ相異なる xn=1x^n=1 の解であること

解であることは (e2kπni)n=e2kπi=1(e^{\frac{2k \pi}{n}i})^n = e^{2k \pi i} = 1 より従う。

相異なることを示す。

0p<qn10 \leqq p < q \leqq n-1 のとき e2pπni=e2qπnie^{\frac{2 p\pi}{n} i} = e^{\frac{2 q\pi}{n} i} と仮定する。

  • 辺々を e2qπnie^{\frac{2 q\pi}{n} i} で割ることで e2(pq)πni=1e^{\frac{2 (p-q)\pi}{n} i} = 1 である。

  • 0<pq<n0 < p-q < n であることから e2(pq)πni1e^{\frac{2 (p-q)\pi}{n}i} \neq 1 である。(→補足を参照)

これらは矛盾する。

よって 0p<qn10 \leqq p < q \leqq n-1 のとき e2pπnie2qπnie^{\frac{2 p\pi}{n} i} \neq e^{\frac{2 q\pi}{n} i} である。

すなわち {e2kπnik=0,1,,n1}\{ e^{\frac{2k \pi}{n} i} \mid k = 0,1, \cdots ,n-1 \} は相異なる。

  1. 逆に xn=1x^n=1 の解が e2kπnie^{\frac{2k \pi}{n}i} でつくされること

代数学の基本定理より,xn1=0x^n - 1 = 0 は複素数の範囲で(重複度を含めて)nn 個の解を持つ。よって 11nn 乗根は高々 nn 個存在する。

前半より {e2kπnik=0,1,,n1}\{ e^{\frac{2k \pi}{n} i} \mid k = 0,1, \cdots ,n-1 \} は相異なる nn 個の集合 である。

よって e2kπnie^{\frac{2k \pi}{n} i} の他に xn=1x^n=1 の解は存在しない。

補足

0<k<n0 < k < n のとき e2kπni1e^{\frac{2k \pi}{n} i} \neq 1 であることを示します。

0<k<n0 < k < n より 0<2kπni<2π0 < \dfrac{2k \pi}{n} i < 2\pi となります。

このとき cos2kπn1\cos \dfrac{2k \pi}{n} \neq 1 です。

e2kπni=cos2kπn+isin2kπne^{\frac{2k \pi}{n}i} = \cos \dfrac{2k \pi}{n} + i \sin \dfrac{2k \pi}{n} であったため,e2kπnie^{\frac{2k \pi}{n}i} の実部が 11 にならないことが従います。

こうして e2kπni1e^{\frac{2k \pi}{n}i} \neq 1 であることが従います。

因数定理をうまく使うことで,簡単な計算により解が相異なることを示すことができます。

相異なるn個の解を持つことの別証明

f(x)=xn1f(x) = x^n - 1 とおく

xn=1x^n=1 の解は,f(x)=0f(x) = 0 の解と解釈することができる。

f(x)=nxn1f'(x) = nx^{n-1} である。この解は x=0x=0 であるが,f(0)=10f(0) = 1 \neq 0 である。

こうして f(x)=0f(x) = 0f(x)=0f'(x) = 0 は共通解を持たない。

よって因数定理の重解バージョンより f(x)=0f(x) = 0 は重解を持たないから,その解は相異なる。

複素数の nn 乗根

22 の2乗根は 2,2\sqrt{2}, - \sqrt{2} でした。これは 2(±1)2 \cdot (\pm 1) と理解できます。

このように一般の nn 乗根は,11nn 乗根を用いて表すことができます。

定理

aa00 でない複素数,nn11 以上の整数とする。

aann 乗根は複素数の範囲でちょうど nn 個存在し, r1nei(θ+2kπ)n  (k=0,1,2,,n1) r^{\frac{1}{n}}e^{\frac{i(\theta+2k\pi)}{n}}\;(k=0,1,2,\dots,n-1) と表される。

ただし,r=a,θ=argar = |a|, \theta = \arg{a} である。

定理の中の r1/nr^{1/n} は正の実数の場合における r>0r > 0nn 乗根のことです。

r1neiθne2kπnir^{\frac{1}{n}} e^{\frac{i\theta}{n}} e^{\frac{2k \pi}{n}i} と考えてもよいです。r1neiθnr^{\frac{1}{n}} e^{\frac{i\theta}{n}}aann 乗根の1つであり,それを 11nn 乗根で「ズラしていく」と考えることもできます。

  • 2525 の2乗根は 5,55, -5 の2個
  • 6464 の3乗根は ω=1+3i2\omega = \dfrac{-1 + \sqrt{3}i}{2} として 4,4ω,4ω24, 4\omega, 4\omega^2 の3個
  • 3-3 の2乗根は 3i,3i\sqrt{3}i, -\sqrt{3}i の2個
証明

{r1/nei(θ+2kπ)/n}\{ r^{1/n} e^{i(\theta + 2k \pi )/n} \}xn=ax^n = a の解を与える。実際 (r1/nei(θ+2kπ)/n)n=rei(θ+2kπ)=reiθ=a \begin{aligned} &\left( r^{1/n} e^{i(\theta + 2k \pi )/n} \right)^n \\ &= r e^{i(\theta + 2k \pi )} \\ &=r e^{i \theta} \\ &=a \end{aligned} と計算される。

これらが相異なることは,11nn 乗根における議論で示されている。

代数学の基本定理より xn=ax^n = ann 個の解を持つことと合わせることで,{r1/nei(θ+2kπ)/n}\{ r^{1/n} e^{i(\theta + 2k \pi )/n} \}aann 乗根を与えることが示される。

補足と例題

しばしば e2πin=ζne^{\frac{2\pi i}{n}} = \zeta_n と書くことがあります。

  • aa が正の実数のとき,複素数の範囲の aann 乗根は a1/n,a1/nζn,,a1/nζnn1 a^{1/n}, a^{1/n} \zeta_n , \dots , a^{1/n} \zeta_n^{n-1}nn 個となります。

  • 複素数の積を扱う時は極形式を考えて「絶対値は積,偏角は和」になることを使うと見通しがよくなることが多いです。→複素数平面における極形式と回転

例題

例題
  1. ζn=e2πin\zeta_n = e^{\frac{2\pi i}{n}} とおく。ζn+ζn2++ζnn1\zeta_n + \zeta_n^2 + \cdots + \zeta_n^{n-1} を求めよ。
  2. cos2πn+cos4πn++cos2(n1)πn\cos \dfrac{2\pi}{n} + \cos \dfrac{4 \pi}{n} + \cdots + \cos \dfrac{2 (n-1) \pi}{n} を求めよ。
  3. sin2πn+sin4πn++sin2(n1)πn\sin \dfrac{2\pi}{n} + \sin \dfrac{4 \pi}{n} + \cdots + \sin \dfrac{2 (n-1) \pi}{n} を求めよ。

ζnk\zeta_n^kxn1=0x^n-1=0 の解であることを利用をして解いてみましょう。

  1. 1,ζn,ζn2,,ζnn11, \zeta_n, \zeta_n^2 , \cdots , \zeta_n^{n-1} は それぞれ相異なる 11nn 乗根である。すなわち相異なる nn 個の xn1x^n - 1 の解である。
    n次方程式の解と係数の関係 より ζn+ζn2++ζnn1\zeta_n + \zeta_n^2 + \cdots + \zeta_n^{n-1}xn1x^{n-1} の係数と一致する。よって 1+ζn+ζn2++ζnn1=0 1 + \zeta_n + \zeta_n^2 + \cdots + \zeta_n^{n-1} = 0 である。
    11 を移項して ζn+ζn2++ζnn1=1 \zeta_n + \zeta_n^2 + \cdots + \zeta_n^{n-1} = -1 を得る。

  2. ζn=cos2πn+isin2πn\zeta_n = \cos \dfrac{2\pi}{n} + i \sin \dfrac{2\pi}{n} であるため,ζn+ζn2++ζnn1\zeta_n + \zeta_n^2 + \cdots + \zeta_n^{n-1} の実部を見ることで cos2πn+cos4πn++cos2(n1)πn=1 \cos \dfrac{2\pi}{n} + \cos \dfrac{4 \pi}{n} + \cdots + \cos \dfrac{2 (n-1) \pi}{n} = -1 を得る。

  3. 2 同様にして sin2πn+sin4πn++sin2(n1)πn=0 \sin \dfrac{2\pi}{n} + \sin \dfrac{4 \pi}{n} + \cdots + \sin \dfrac{2 (n-1) \pi}{n} = 0 である。

一方で ζn+ζn2++ζnn1\zeta_n + \zeta_n^2 + \cdots + \zeta_n^{n-1} が等比数列であることを用いて計算をすることができます。

別解
  1. 等比数列の和の公式を用いることで ζn+ζn2++ζnn1=ζn1ζnn11ζn=ζnζnn1ζn=ζn11ζn=1\begin{aligned} &\zeta_n + \zeta_n^2 + \cdots + \zeta_n^{n-1}\\ &= \zeta_n \cdot \dfrac{1-\zeta_n^{n-1}}{1-\zeta_n}\\ &= \dfrac{\zeta_n - \zeta_n^n}{1-\zeta_n}\\ &= \dfrac{\zeta_n - 1}{1-\zeta_n}\\ &= -1 \end{aligned} となる。

  2. 同様

  3. 同様

他に 11nn 乗根を活用する問題として

入試数学コンテスト第5回第6問解答解説

も是非見てください。

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正の実数でなくても an\sqrt[n]{a} という記法を使うことはあります(3=3i\sqrt{-3} = \sqrt{3}i など)。

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