正弦定理の意味と6通りの証明・頻出の応用例

更新日時 2022/02/23
正弦定理(簡単バージョン)

正弦定理とは,三角形において,

asinA=bsinB=csinC\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}

が成立するという定理。ただし,

  • A,B,CA,B,C は3つの内角の大きさ。
  • a=BC,b=CA,c=ABa=BC,b=CA,c=AB は3辺の長さ。

正弦定理とは

この記事では,正弦定理についてわかりやすく解説します。

  • 前半では,正弦定理を使う基本問題と6通りの証明
  • 後半では,正弦定理を活用するための意識・難しい応用例
目次
  • 正弦定理を使う基本的な問題

  • 正弦定理と外接円の半径

  • 正弦定理の証明

  • 正弦定理の頻出応用例

  • 正弦定理を活用するための意識

正弦定理を使う基本的な問題

例題1

三角形 ABCABC について,A=45,B=60,a=4A=45^{\circ},B=60^{\circ},a=4 であるとき,bb を計算せよ。 正弦定理の例題1

解答

正弦定理: asinA=bsinB\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B} に条件を代入すると, 4sin45=bsin60\dfrac{4}{\sin 45^{\circ}}=\dfrac{b}{\sin 60^{\circ}}

ここで,sin45=12\sin 45^{\circ}=\dfrac{1}{\sqrt{2}}sin60=32\sin 60^{\circ}=\dfrac{\sqrt{3}}{2} を使うと,

42=23b4\sqrt{2}=\dfrac{2}{\sqrt{3}}b

よって,b=42×32=26b=4\sqrt{2}\times\dfrac{\sqrt{3}}{2}=2\sqrt{6}

正弦定理を使うこのような問題を解くためのポイントは,以下の2つです。

  • sin\sin の値を覚えておく or 素早く計算できるようになっておく
  • 「2つの角と1辺の長さが与えられたら,正弦定理で残りの辺の長さも計算できる」と意識しておく

正弦定理と外接円の半径

正弦定理に現れる比 asinA\dfrac{a}{\sin A} の値は,実は 2R2R と一致します。ただし,RR は外接円の半径です。つまり,以下が成立します:

正弦定理(完全バージョン)

asinA=bsinB=csinC=2R\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}=2R 正弦定理とは

正弦定理を使うと,外接円の半径を計算できます。

例題2

さきほどの三角形,つまり A=45,B=60,a=4A=45^{\circ},B=60^{\circ},a=4 であるとき,外接円の半径 RR を計算せよ。

解答

正弦定理より,asinA=2R\dfrac{a}{\sin A}=2R

よって,4sin45=2R\dfrac{4}{\sin 45^{\circ}}=2R

R=12×4÷12=22R=\dfrac{1}{2}\times 4\div\dfrac{1}{\sqrt{2}}=2\sqrt{2}

正弦定理の証明

正弦定理の証明を6つ紹介します。

まずは,正弦定理の簡単バージョン: asinA=bsinB=csinC\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}= \dfrac{c}{\sin{C}}

の証明を3つ紹介します。

証明1:垂線の長さに注目する方法

証明

鋭角三角形における場合を示す。

CC から ABAB に引いた垂線の足を HH とおく。 正弦定理の証明1 sin\sin の定義より,

  • sinA=CHb\sin A=\dfrac{CH}{b}
  • sinB=CHa\sin B=\dfrac{CH}{a}

よって,CHCH を2通りで表すと,bsinA=CH=asinBb\sin A=CH=a\sin B

両辺を sinAsinB\sin A\sin B で割ると asinA=bsinB\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}

同様に,AA から BCBC に引いた垂線の長さを考えることで,

bsinB=csinC\dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C}

も導ける。

三角形 ABCABC が直角,鈍角三角形である場合にも,(図は多少変わりますが)ほとんど同じように証明できます。

証明2:余弦定理を用いる方法

asinA=bsinB=csinC\dfrac{a}{\sin{A}} = \dfrac{b}{\sin{B}} = \dfrac{c}{\sin{C}}

を証明します。

余弦定理を用いて変形します(余弦定理について,詳しくは ベクトルの内積を用いた余弦定理の証明 をご覧ください)。

証明

a2sin2A=a21cos2A=a21(b2+c2a22bc)2=4a2b2c24b2c2(b2+c2a2)2=4a2b2c2(a+b+c)(a+bc)(ab+c)(a+b+c)\dfrac{a^2}{\sin^2{A}} = \dfrac{a^2}{1-\cos^2{A}} \\ = \dfrac{a^2}{1-\left(\frac{b^2 + c^2 -a^2}{2bc}\right)^{2}}\\ =\dfrac{4a^2b^2c^2}{4b^2c^2-\left(b^2+c^2 - a^2 \right)^{2}} \\ = \dfrac{4a^2b^2c^2}{(a+b+c)(a+b-c)(a-b+c)(-a+b+c)}

これは,a,b,ca,b,c に関して対称であるので(あるいは同様に計算すると),

b2sin2B\dfrac{b^2}{\sin^2 B}c2sin2C\dfrac{c^2}{\sin^2C}

と等しいことがわかる。

証明3 三角形の面積を用いる方法

三角形の面積の公式を認めれば,そこから正弦定理を示すこともできます。

証明

三角形 ABCABC の面積 SS は,

S=12bcsinA=12casinB=12absinCS = \dfrac{1}{2} bc \sin{A} = \dfrac{1}{2} ca \sin{B} = \dfrac{1}{2} ab \sin{C}

である。(左辺)=(中辺)より,

bsinB=asinA\dfrac{b}{\sin{B}} = \dfrac{a}{\sin{A}}

また(中辺)=(右辺)より,

csinC=bsinB\dfrac{c}{\sin{C}} = \dfrac{b}{\sin{B}}

これより,

asinA=bsinB=csinC\dfrac{a}{\sin{A}} = \dfrac{b}{\sin{B}} = \dfrac{c}{\sin{C}}

を得る。

証明4:円周角を用いる方法

ここからは,asinA=bsinB=csinC=2R\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B} = \dfrac{c}{\sin C} =2R

を示す証明を3つ与えます。

一つ目は,外接円の半径との関係も含めて証明する方法です。 asinA=2R\dfrac{a}{\sin A}=2R を証明します。bsinB=2R,csinC=2R\dfrac{b}{\sin B}=2R,\dfrac{c}{\sin C}=2R も全く同様に証明できます。

証明
  • A<90A<90^{\circ} の場合

BABA' が外接円の直径となるような AA' を取る。 正弦定理の証明2

円周角の定理より,BAC=BAC\angle BAC=\angle BA'C なので,sinA=sinA=a2R\sin A=\sin A'=\dfrac{a} {2R} となる。つまり asinA=2R\dfrac{a}{\sin A}=2R

  • A=90A=90^{\circ} の場合 直角三角形

sinA=1\sin A=1 である。また,BCBC は外接円の直径なので a=2Ra=2R となる。つまり,asinA=2R\dfrac{a}{\sin A}=2R

  • A>90A>90^{\circ} の場合 鈍角三角形

BABA' が外接円の直径となるような AA' を取る。円に内接する四角形の性質より,BAC=180BAC\angle BAC=180^{\circ}-\angle BA'C なので,sinA=sinA=a2R\sin A=\sin A'=\dfrac{a} {2R} となる。つまり asinA=2R\dfrac{a}{\sin A}=2R

証明5:中心角を使う方法

中心角に着目して asinA=2R\dfrac{a}{\sin A}=2R を証明します。鋭角三角形の場合のみ証明します。

証明

正弦定理の証明

円周角の定理より,

A=12BOC=MOC\angle A=\dfrac{1}{2}\angle BOC=\angle MOC

よって,

sinA=sinMOC=MCCO\sin A=\sin\angle MOC=\dfrac{MC}{CO}

ここで,CO=RCO=R(外接円の半径),MC=a2MC=\dfrac{a}{2}MMBCBC の中点)なので,

sinA=a2R\sin A=\dfrac{a}{2R}

よって,asinA=2R\dfrac{a}{\sin A}=2R

証明6:座標を用いる方法

最後は座標を使って正弦定理を解析的に証明します。このように座標を使うときでも、幾何学的考察は欠かさないようにするのがポイントです。

2通りの座標の取り方を紹介します。

証明

方針1:外接円の中心を原点にとる

A\angle{A} が鋭角の場合のみ示す。下図のようにxy座標系を取る。三角形 ABCABC の外接円の中心が原点である。また,点 B(R,0)B(R,0) としても一般性を失わない。

外接円の座標

BCBC の長さについて,

a2=R2(1cos2A)2+R2sin22A=R2(22cos2A)=2R2(1cos2A)=4R2sin2Aa^2 = R^2(1-\cos{2A})^2 + R^2 \sin^2{2A} \\ = R^2 (2-2\cos{2A}) \\ = 2R^2(1-\cos{2A}) \\ = 4R^2 \sin^2{A}

よって,

asinA=2R\dfrac{a}{\sin{A}} = 2R

また,三角形の1点を原点とする座標でも証明できます。

証明2

方針2:三角形の1点を原点にとる

A\angle{A} が鋭角の場合のみ示す。下図のように,三角形 ABCABC の点 AA を原点としたxy座標を考える。

三角形の1点を原点

三角形 ABCABC の外接円の中心 OO の座標を求める。

線分 ACAC の傾きは tanA\tan{A} であり,中点 DD の座標は (12bcosA,12csinA)(\dfrac{1}{2}b\cos{A},\dfrac{1}{2}c\sin{A}) である。

直線 DODO は,線分 ACAC の垂直二等分線であるから,傾きは 1tanA-\dfrac{1}{\tan{A}} であり,点 DD を通る。ゆえに直線 DODO の式は

y=1tanA(x12bcosA)+12csinAy = -\dfrac{1}{\tan{A}} (x-\dfrac{1}{2}b\cos{A}) + \dfrac{1}{2}c\sin{A}

OO は直線 x=c2x=\dfrac{c}{2} 上にあるから,y座標は

y=1tanA(c212bcosA)+12csinA=c21tanA+b2cosAtanA+12bsinA=bccosA2sin2Ay = -\dfrac{1}{\tan{A}} (\dfrac{c}{2}-\dfrac{1}{2}b\cos{A}) + \dfrac{1}{2}c\sin{A}\\ = -\dfrac{c}{2} \dfrac{1}{\tan{A}} + \dfrac{b}{2} \dfrac{\cos{A}}{\tan{A}} + \dfrac{1}{2} b\sin{A} \\ = \dfrac{b-c\cos{A}}{2\sin^2{A}}

線分 AOAO の長さは RR であるから,

R2=c24+(bccosA)24sin2A=b2+c22bccosA4sin2AR^2 = \dfrac{c^2}{4} + \dfrac{(b-c\cos{A})^2}{4\sin^2{A}}\\ = \dfrac{b^2 + c^2 - 2bc\cos{A}}{4\sin^2{A}}

ここで,余弦定理より

a2=b2+c22bccosAa^2 = b^2 + c^2 -2bc\cos{A}

であったから,

R2=a24sin2AR^2 =\dfrac{a^2}{4\sin^2{A}}

ゆえに

asinA=2R\dfrac{a}{\sin{A}} = 2R

が得られる。

正弦定理の頻出応用例

正弦定理の応用例

直角を2つ持つ図のような四角形において,

BDsinBAD=AC\dfrac{BD}{\sin\angle BAD}=AC

が成立します。

証明

向かい合う角の和が 180180^{\circ} なので,四角形 ABCDABCD は円に内接する。また,B=90\angle B=90^{\circ} なので ACAC がその円の直径 2R2R となる。よって,正弦定理より, BDsinBAD=2R=AC\dfrac{BD}{\sin \angle BAD}=2R=AC

この構図は三角形の垂心が絡んだ問題など,しばしば利用されます。覚えておくと良いでしょう。数学オリンピックでも頻出です。 →線分の長さにまつわる頻出の形

正弦定理を活用するための意識

円が絡む問題

正弦定理の証明2,3では円周角の定理を用いています。つまり,正弦定理を用いるということは円周角の定理を暗に用いることとも言えます。よって,三角形の形状決定問題はもちろんのこと,円が絡む問題で正弦定理が活躍することが多いです。

角度の情報を辺の情報に変換

正弦定理を用いれば,角度の情報を辺の情報と外接円の半径に変換できます。一般的に, 辺の情報のほうが角度の情報より扱いやすいので正弦定理は角度の情報を消去するために使われることが多いです。

三角形の面積の公式 S=12absinCS=\dfrac{1}{2}ab\sin C において角度の情報を消すと有用な公式 S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R} が得られる。→外接円の半径と三角形の面積の関係

また,正弦定理により導かれた上記の公式と,ヘロンの公式を用いることで,外接円の半径を辺の情報だけで表すこともできます。このテクニックは図形の性質の証明で役立ちます(例:外接円の半径と三角形の面積の関係の中のオイラーの不等式の証明)。

正弦定理を使うことで 角度の情報や外接円の半径は辺の情報で表すことができると覚えておきましょう(余弦定理でも角度の情報を辺の情報に変換できます,場面に応じて使い分けましょう)。

角度が邪魔なら正弦定理,直角2つで正弦定理

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