線分の長さにまつわる頻出の形

図形問題における頻出の構図を2つ紹介します。いずれも線分の長さを最小化する問題です。

そのまま出題されることもありますし,証明問題の途中で現れる場合もあります。

頻出の形1:線分の積の最小化

2007年日本数学オリンピック予選の第3問です。

問題

平面上に長さ 77 の線分 ABAB があり,点 PP と直線 ABAB の距離は 33 である。AP×BPAP\times BP のとりうる最小の値を求めよ。

解答

三角形 APBAPB の面積 SS を二通りで表す:

12PA×PB×sinAPB=723\dfrac{1}{2}PA\times PB\times \sin\angle APB=\dfrac{7}{2}\cdot 3

よって,PA×PBPA\times PB が最小となるのは sinAPB\sin\angle APB が最大となるとき。

本問では APB\angle APB が直角になるような点 PP を取ることができる(ABAB の中点を通り半径 72\dfrac{7}{2} の円を考えればよい)。

よって,求める最小値は 2121

この問題は簡単に一般化できます。2通りの場合があることが確認できます。

線分の積の最小化

線分 ABAB の長さを aaABABPP の距離を hh とおくと,PA×PBPA\times PB が最小となるのは以下の場合です:

  • a2ha\geq 2h のとき,上記と同様に APB\angle APB が直角となる場合
  • a<2ha <2h のとき,PA=PBPA=PB となる場合
    a<2ha <2h のとき,APB\angle APB が最大になるのが PA=PBPA=PB の場合であることは簡単に証明できます)

頻出の形2:垂線の足を結ぶ構図

問題

三角形 ABCABC において,辺 BCBC 上の点 PP から他の2辺に下ろした垂線の足を D,ED, E とおく。点 PPBCBC 上を動くと線分 DEDE の長さが最小となるのはどのような場合か?

解答

線分の最小化

直角が2つあるので,A,D,P,EA, D, P, E は同一円周上にある。そしてその円の直径は APAP である。

よって,正弦定理により DEsinA=AP\dfrac{DE}{\sin A}=AP

DEDE が最小となるのは APAP が最小となるとき,つまり APAPBCBC が垂直な場合。

議論はシンプルですが,とても美しい結果です。

より複雑な図形を扱っている場合でも,直角2つ発見したらすぐに円を思い浮かべましょう!

ちなみに,線分の和を最小化する問題については,三角形のフェルマー点の3通りの証明も参照してください。

私は2つ目の構図がかなり好きです。議論はとても短いのに結果が非自明だからです。