sinxの微分公式の3通りの証明

サインの微分公式

(sinx)=cosx(\sin x)'=\cos x sinの微分

教科書にも載っているとても重要な公式です。3通りの方法で証明します。関連する問題も解説します。

証明1:加法定理を用いる

まずは,多くの教科書で採用されている定番の証明方法です。

証明

sinx\sin x の導関数は,微分の定義より,limh0sin(x+h)sinxh\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{\sin (x+h)-\sin x}{h}

加法定理を用いて分子を計算する:
limh0sinx(cosh1)+cosxsinhh=limh0(sinxcosh1h+cosxsinhh)\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{\sin x(\cos h-1)+\cos x\sin h}{h}\\ =\displaystyle\lim_{h\to 0}\left(\sin x\cdot\dfrac{\cos h-1}{h}+\cos x\cdot\dfrac{\sin h}{h}\right)

ここで,

  • 第一項は limh0cosh1h=0\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{\cos h-1}{h}=0(→補足) なので 00 である。
  • 第二項は limh0sinhh=1\displaystyle\lim_{h\to 0}\dfrac{\sin h}{h}=1 (→証明) なので cosx\cos x に収束する。

よって,導関数は 0+cosx=cosx0+\cos x=\cos x となる。

補足:cosh1h22\cos h\fallingdotseq 1-\dfrac{h^2}{2} を知っていればすぐに分かります。→三角関数の不定形極限の計算
知らない場合は,以下のように計算できます。 cosh1h=(cosh1)(cosh+1)h(cosh+1)=sin2hh211+coshh0(h0)\begin{aligned} \dfrac{\cos h-1}{h}&=\dfrac{(\cos h-1)(\cos h+1)}{h(\cos h+1)}\\ &=-\dfrac{\sin^2 h}{h^2}\cdot\dfrac{1}{1+\cos h}\cdot h\\ &\to 0 \quad(h \to 0) \end{aligned}

証明2:和積公式を用いる

極限計算の際に和積公式を用いてもOKです。

証明

分子に和積公式を用いて計算する。

limh0sin(x+h)sinxh=limh02sinh2cos(x+h2)h=limh0sinh2h2cos(x+h2)=cosx\begin{aligned} &\lim_{h\to 0}\dfrac{\sin (x+h)-\sin x}{h}\\ &=\lim_{h\to 0}\dfrac{2\sin\frac{h}{2}\cos(x+\frac{h}{2})}{h}\\ &=\lim_{h\to 0}\dfrac{\sin \frac{h}{2}}{\frac{h}{2}}\cdot\cos\left(x+\frac{h}{2}\right)\\ &=\cos x \end{aligned}

証明3:図形的に解釈する

図形的に解釈することもできます。三角関数を微分すると位相が90度進む ことが図形的に納得できます。

証明

A(cosθ,sinθ),B(cos(θ+h),sin(θ+h))\mathrm{A} (\cos \theta,\sin \theta), \mathrm{B} (\cos (\theta+h),\sin(\theta+h)) とおく。

サインの微分

上図から sin(θ+h)sinθh=ABsinαh \dfrac{\sin (\theta+h)-\sin \theta}{h}=\dfrac{\mathrm{AB}\sin\alpha}{h} を得る。

三角形 OAB\mathrm{OAB} に余弦定理を用いることで AB2=OA2+OB22  OAOBcosAOB=1+12cosh=2(1cosh)AB=2(1cosh)\begin{aligned} \mathrm{AB}^2 &= \mathrm{OA}^2 + \mathrm{OB}^2 - 2 \; \mathrm{OA} \cdot \mathrm{OB} \cdot \cos \angle \mathrm{AOB}\\ &= 1 + 1 -2 \cos h\\ &=2 (1-\cos h)\\ \mathrm{AB} &= \sqrt{2(1-\cos h)} \end{aligned} を得る。こうして AB\mathrm{AB}hh によって表された。

また,hh00 に近いとき,AB\mathrm{AB}A\mathrm{A} における単位円の接線に近づくので,limh0α=θ+π2\displaystyle \lim_{h \to 0} \alpha = \theta + \dfrac{\pi}{2} を得る。

よって, limh0sin(θ+h)sinθh=limh0ABsinαh=limh02(1cosh)hsinα=limh02(1cosh)h2sinα=sin(θ+π2)=cosθ\begin{aligned} &\lim_{h \to 0} \dfrac{\sin (\theta+h)-\sin \theta}{h} \\&= \lim_{h \to 0} \dfrac{\mathrm{AB}\sin\alpha}{h}\\ &= \lim_{h \to 0} \dfrac{\sqrt{2(1-\cos h)}}{h} \sin \alpha\\ &= \lim_{h \to 0} \sqrt{\dfrac{2(1-\cos h)}{h^2}} \sin \alpha\\ &= \sin \left( \theta+\dfrac{\pi}{2} \right)\\ &= \cos \theta \end{aligned} を得る。

なお,cos\cos の微分の証明も少し違った楽しさがあって楽しいです。→cosxの微分公式のいろいろな証明

練習問題

問題

以下の関数を微分せよ。

(1) sin2x\sin 2x
(2) xsinxx\sin x
(3) 1sinx\dfrac{1}{\sin x}

証明

いずれも,sin の微分公式に加えて別の公式をもう1つ使う。

(1) 合成関数の微分公式より,
(sin2x)=2cos2x(\sin 2x)'=2\cos 2x

(2) 積の微分公式より,
(xsinx)=sinx+xcosx(x\sin x)'=\sin x+x\cos x

(3) 商の微分公式より,
(1sinx)=cosxsin2x\left(\dfrac{1}{\sin x}\right)'=\dfrac{-\cos x}{\sin^2x}

最近の趣味は「非常に基本的な公式を複数の方法で証明すること」です。

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